【横浜FC 2023】第12節A神戸戦:中村拓海のプレーは今の横浜FCのそのものの課題だと思った話。

 開幕から苦節11試合でつかんだ初勝利。
 選手にも、首脳陣にも葛藤はあったと思われる中ではあるけれども、昨年のJ2でのホーム新潟戦を思い出すような気迫の守りとカウンターでウノゼロで勝利をつかみました。

 明けて第12節。相手は首位・神戸。スタメンは右SBが中村拓海に代わったものの、その他の10人は連戦にもかかわらず同じメンバー。相手は変われども、一旦は初勝利をつかんだやり方を継続する意思が見て取れました。

1.試合の内容を振り返って

 前半しっかり守って0-0でゲームを進めたものの、不運な形ではありましたが、前半終了直前にPKを与えてしまいました。一瞬ルヴァンカップのホーム名古屋戦のブローダーセンの姿を思い出し、一縷の望みを抱いたものの相手は百戦錬磨の大迫勇也です。完全にコースを逆につかれる形でPKを決められて先制を許し、0-1で前半を折り返しました。

 大事な大事な後半立ち上がりでしたが、苦しい内容ながら先制して前半を折り返した神戸が少しメンタル的に優位に立ったこともあったでしょう。キックオフから流れを握られました。しかし、後半6分~7分にかけて、山下諒也が猛烈なプレッシングでマイボールにしたところ、和田拓也がミスパス。このミスパスをきっかけにショートカウンターを喰らい、汰木康也が放った強烈なシュートを一度はブローダーセンがセーブをしたものの、こぼれ球を大迫勇也に決められて0-2。更にその2分後、大迫から左サイドに出たスルーパスを処理しかけた中村拓海が足を滑らせてたところを汰木康也にかっさらわれ、佐々木大樹に決められて0-3。結局、後半開始から10分も立たない間に2点を失い、ここでゲームとしては終わってしまったと言っても過言ではないでしょう。

 前半、粘ってスコアレスでゲームを進めたものの、前半の終了間際に失点をし、更に後半開始から反撃する間もなく失点をし、そこから立て続けに失点をする。多少の時間帯の違いはあれど、今シーズン何度見た光景でしょうか。終わってみれば、3-0での敗戦です。

 「結局、戦術を変えても結果は同じじゃないか!」
そう思ったサポーターの皆様も多いのではないでしょうか。結果だけ見れば、そうだと思います。しかし、個人的には10節までの内容に比べたら、そこまで絶望的な気分にはなりませんでした。

 もちろん、後半開始10分までに喫した2失点は言語道断です。しかし、前半はもちろんピンチもありましたが、結果吉野恭平がイエローカードを貰いながら止めたり、ブローダーセンのビックセーブがあったりときちんと耐えられていましたし、「やりたいことを好き放題やられながら、ギリギリのところで持ちこたえている」という印象ではありませんでした。バランス的にやや後ろが重たくなったことで、攻撃面での苦労は感じられましたが、恐らく神戸サイドもストレスを感じてプレーをしていたことと思います。

 小さすぎる進歩かもしれませんが、0‐3になってからも得点を奪いに行く姿勢を見せながら、それ以上の失点を許しませんでした。だから何だ!と思う方もいらっしゃると思いますが、ゲームの大勢が決した後、チームが集中を切らすことなく、ゴールを目指しながらも失点を喫しなかったことは、札幌戦以前のゲームに比べると一つの進歩だと思います。

 おおよそ、チームの方向性としてやることは定まった。残り20試合以上あるこのタイミングで定まったことは、ポジティブなことだと思います。ただ、ここからきちんと結果に繋げるためには、細かい部分をもっとしっかり詰めていく必要があるということも同時に感じたゲームでした。

2.「そのミス」は「ただのミス」なのか

 この試合を通じて感じたことは、「やるべきこと」だけでなく、「やるべきではないこと」にもっとフォーカスをすべきではないかということです。

 よく言われるように、サッカーは「ミス」が付きもののスポーツです。
手ではなく、足を使ってボールを動かすこのスポーツにおいて、両チームのプレイヤー全員がミスなくプレーすることは不可能だと言っても過言ではないでしょう。しかし、「ミス」と一言に言っても、いろいろな「ミス」があります。

 例えば、私が料理をしていたとしましょう。
 調理の過程で入れるべき塩を入れ忘れてしまうことも「ミス」ですし、皿に盛り付けるタイミングで手を滑らせてフライパンを引っくり返して全て床にこぼしてしまうことも「ミス」です。同じ「ミス」と言っても、前者は遅れてでも塩を加えれば完ぺきとはいかないまでも挽回が可能ですが、後者のミスは取り返しがつきません。最初から作り直しです。

 それは、サッカーでも同じことです。「ミス」と一言で括り勝ちですが、「ミス」で済まされる「ミス」と、取り返しのつかない「ミス」があります。また、サッカーの中では技術的には「ミス」をしていなくても、ボールの受け手や相手との関係性の中で結果として「ミス」となってしまうことも起こり得るでしょう。そういった「ミス」を極力なくすためのルールが戦術だと思うのです。

 戦術というと、どうしても「やりたいこと」や「やるべきこと」にどうしてもフォーカスされがちですが、「やってはいけないこと」を徹底することも大事なことだと思います。例えば、2失点目に繋がった和田拓也のミスパス。和田拓也を糾弾するのは容易いですが、問題なのは、チームとしてどのように後半ゲームを進めようとしていたのかということです。

 押し込まれていた時間帯、山下諒也の必死のプレッシングで勝ち取ったマイボール。大事にしたいという気持ちもわかります。もちろん、改めて見直すとボールを出そうとした先は山下諒也だと思いますが、どうみても相手が狙ってプレスに来ています。そこに出した和田拓也のミスであることは事実だと思いますし、私は今のプレッシングに軸足を置いた守備をしてくる神戸に対して、あの時間帯そもそも自陣で「繋ぐ」べきではなかったと思います。では、チームとしてどう考えていたのでしょうか。後半が開始して、すぐの時間帯です。ハーフタイムに出した指示が、しっかりと生きている時間帯です。しかし、受け手であるはずの山下諒也も受けに来ているようには見えませんでした。出し手と受け手の意思の疎通が取れていなかったと言えるでしょう。

 振り返ると、今シーズンの横浜FCはそういった場面が多々見られます。ボールを裏に出した先に選手がいない、クロスの先に選手がいない。単純な選手の技術的な問題もあるでしょうが、チームとしての連携の問題もあるでしょう。ただでさえ、20人近い選手が新加入しているチームということを考えれば致し方がない部分もあるのでしょうが、あの場面、自陣で神戸がプレスに来ていたら、繋がずに蹴る。この1点が強調されていただけでも、かなりミスのリスクは減っていたのではないかと思うのです。

 特に、今シーズン「繋ぐ」ことにこだわって、キャンプからチーム作りをしていてきました。しかし、ビルトアップのミスからのミスで大量に失点をしているのも事実です。「繋げるなら繋ぎたい」と思っている選手も多いでしょうし、一方で「これだけミスをしているのだから、無理して繋ぐくらいなら蹴るべき」と思っている選手もいるでしょう。だからこそ、「繋ぐ」「繋がない」の判断の基準をもっとチーム側から強調して提示していかないと、こういうミスは減らないのではないかと思います。

 先程の料理の例えで言えば、盛り付けでフライパンをひっくり返さないために、おたまで掬いましょうね!とか、極論、ひっくり返すくらいならフライパンに箸を突っ込んでそのまま食べろ!!などと指示をすることだと思います。バカバカしいことは承知です。しかし、うまく行っていない状況だからこそ、状況判断を選手任せにしすぎないことは重要なのではないでしょうか。

3.中村拓海のミスは今の横浜FCを象徴している

 そして、3失点目の中村拓海のミスです。私は、中村拓海という選手に昨年から魅せられている横浜FCサポーターの一人です。飄々としていながら、よく走るし戦う。そして右足の魅力的なキックもあるし、エレガントなプレーも出来る。しかし、守備において絶望的に軽い対応が目立つ。

 一方で、そんな伸びしろを残しているからこそ、彼は横浜FCにいるのだと思います。世代別の代表に選ばれるような選手です。欠点がなければ、もっと大きなJ1クラブでレギュラーを張っているでしょう。一方で、守備が本業であるサイドバックを本職としている以上、守備の対応が改善されなければ、彼がこれ以上にステップアップするのも難しいでしょう。彼にとってもこの1年は正念場のはずです。

 いいプレーも多いけど、1つのやってはいけないミスで台無しにしてしまう。チームとしての横浜FCそのものにも共通している課題だと思います。

 仮に88分間良いプレーをしていても、2分間で複数絶望的なミスをしてしまえば負けてしまう。それがサッカーというスポーツです。得点が入りづらい性質故、失点に直結するプレーは重くのしかかります。

 結果はシビアです。
 良いプレーをしたからと言って、負けたら勝ち点はもらえないし、降格を免除してはもらえません。横浜FCは昇格チームです。昨年J2で2位ということを考えると、18位中、昨年は18番目です。ミスをせずに戦っても、失点をすることもあるでしょう。逆に完ぺきな攻撃をしたつもりが、相手のより素晴らしい守備で得点にならないこともあるでしょう。だからこそ、ミスに対してもっとシビアにならないと勝てない。カテゴリーが上がるということはそういうことです。

 今のチームが戦力的に、すぐに劇的に良くなることはありません。でも、やるべきことは見えてきていると思います。だからこそ、1つ1つの試合を、もっと丁寧に90分を戦う。そこにしか道はありません。

 神戸戦、ピッチに倒れるまで戦った小川航基を見て、連戦の中で鬼のようなプレッシング見せた山下諒也を見て、最後まで諦めず攻撃参加をしてミドルシュートを放つ吉野恭平を見て、そんな彼らの頑張りがなんとか結果につながって報われて欲しい。戦っていない選手はいない。だからこそ、試合を見ながらそう切に願った試合でした。

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