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ACE COMBAT 04 から学んだ人生の大切なこと

はじめに

先日 人生の大切なことをゲームから学ぶ展 に行ってきました。

自分はどんなゲームからどんなことを学んだんだろうと考えるきっかけになったので、この記事ではエッセイ的にその結果をまとめます。

この展示自体とても良かったので、いつか感想記事を書きたいと思っています。一番のお気に入りは「めざせカンフーマスター」でした。最後の残機でゴールに辿り着くことができて、脳汁がすごい出ました。

ACE COMBAT 04

『エースコンバット 04 シャッタードスカイ』は言わずと知れた PS2 時代の傑作フライトシューティングゲームだ。

このゲームとの出会いは小学生の頃だった。トイザらスで父親に買ってもらったのを覚えている。出会いから 15 年以上経ったが、未だに私の一番のお気に入りのゲームだ。そして、このゲームからは多くの「人生の大切なこと」を学んだと思う。

「ゲームから学ぶ展」のアンケート結果では、人々がどんな大切なことを学んだのかについて「困難は克服できるということ」が最も多くの票を占めていた。私が 04 から学んだことも、大枠ではこのカテゴリに属すると思う。

では、私はどんな困難に遭遇し、それを克服できることを知ったのか。記憶を掘り起こして、その経験を振り返ろう。記憶している限りでは、私はこのゲームで プレイを中断せざるを得ない 3 つの困難を経験している。

第一の困難: M05: LIFELINE

(記憶にある限り)EASY モード、ノービス操作でこのゲームを始めた私を最初に待ち構えていたのは、全 18 ミッション中 5 番目の「LIFELINE」だった。

ここで得た「人生の大切なこと」は何か。それは、目的を達成するには一つの方法に囚われず、他の選択肢を検討してみるべしということだ。

このミッションは、ゲームで最初のスコアアタック式ミッションだ。敵の施設や戦闘機を破壊しまくり、時間内に規定のスコアを獲得できればクリア、さもなくば失敗というシステムになっている。

これまでは指定されたターゲットを破壊すればそれでよかったが、このミッションでは自分で計画を立てて実行しなければならない。そして、それが大きな困難になった。何度やっても規定のスコアを獲得できないのだ。

マップを示しておこう。白い三角が開始地点だ。攻撃目標は西側沿岸の備蓄施設と、東側の洋上プラットフォームの 2 箇所に分かれている。南側には破線で示される帰還ラインがあり、ここを通過することでダメージの回復と兵装の補充が行える。

初めてのスコアアタック型ミッションなので、難易度はそれほど高くないはずだ。事実、どちらか片側の拠点を殲滅するだけでも、クリア目標は達成できる。

にも関わらず、なぜクリアできなかったのか。結論から言うと、「先に洋上プラットフォームを攻撃していた」のが原因だった。

洋上プラットフォームの攻撃は難しい。デカいクレーンや鉄塔が攻撃目標を取り囲んでいるので、進入コースに気を使わなければミサイルが命中しない。場合によっては、クレーンに激突してしまうかもしれない。

その事に気づかず、洋上プラットフォームからちまちまと非効率的な攻撃を行い、時間切れに陥っていた。それがクリアできない原因だった。

一方で、沿岸の備蓄施設は平坦な土地に位置しているので、楽に攻撃できる。密度も高く、この時点で利用できる最新の対地用特殊兵装であるナパーム弾も刺さりやすい。沿岸から攻撃したところ、あっさりと目標達成することができた。

私は、洋上プラットフォームという非効率的な方法に囚われていて、もっと簡単な方法があることに気づかなかった。私はただのアホだったというわけだ。

…本当にそうなのだろうか?

そもそも、なぜ私は洋上から攻撃していたのだろう。開始地点の目の前やや東寄りには、120 点の TANKER が存在する。反撃してこない上にかなりの高価値目標だから、無視することはあり得ない。まずはこれを攻撃することになる。

少し右へ方向転換し、ミサイルなり機銃なりで TANKER を破壊する。

そうすると、20 秒後には以下のような状況になる。

さて、時間に追われている中、この状況から東西どちらの拠点に向かうだろうか。きっと多くの人が、より近く、方向転換せずに済む東に向かうだろう。そうして、難易度の高い対地攻撃を強いられ、クレーンに激突するか、時間切れによるゲームオーバーを迎えることになる。もっと楽な方法があることに気づかないままに。

私には、これが開発者の仕込んだ罠であるように思えてならない。ゲームデザインの妙というべきか、多くの人が私と同じようにこの困難に直面し、私と同じように解決することを期待していたんじゃないだろうか。

ほんの小さな、たった一個の目標の配置が、このミッション全体に新たな困難と教訓を与えてしまったのだ。

だとしたら恐ろしい話だ。

第二の困難: M08: Shatterd Skies

言わずと知れたシリーズ最高傑作ミッション「ソラノカケラ」。私はここでも挫折を経験することになった。

ここで得た学びは、距離の近さは必ずしも実現のしやすさと一致しないということだ。前節とほぼ同じではあるのだが、違うシステムが教えてくれた苦い教訓だ。

前節の教訓が戦略レベルの問題だとすれば、この節で取り上げるのは戦術レベルの問題だった。

このミッションは複数の段階に分かれている。第一段階では、7 分以内に 800 点 (およそ敵機 13 機の撃墜) が求められる。第二段階では、西方からの爆撃機を宇宙基地に到達する前に撃墜することが求められる。

私が詰んだのは第一段階だ。何度やっても、規定スコアを獲得することができない。

何が原因だったのか。シンプルに言えば、空戦が下手くそだったということになる。

複雑に説明しようとすると、文章だけでは困難なので、図を使って説明しよう。

さて、このゲームでは、ロック中の敵の方向を表示するロケータが画面上に表示される。これを追えば、大抵の場合、いつかは敵を真正面に捉えることができる。

以下の図で、自機とその視野 (ロックオン可能範囲) は青、目標は赤、ロケータは緑で示している。

以下のように目標が静止していれば…

素直にロケータに従って旋回すれば良い。

しかし目標が回避軌道を取れば…

ロケータに従っていても、敵機を捉えることができない。特に、旋回性能が相手より劣っていたら、絶対に追いつくことはできない。

ではどうすればよいのか。一つの目標にこだわらず、臨機応変にターゲットを切り替えれば良い。距離が遠くとも、より相対関係が適切な目標がいるかもしれない。

基本中の基本なのだが、当時の自分はこれに気づくまでに長い時間を要した。

いつまで経っても追いつけない敵を追いかけ、無駄に時間を浪費していた。それでは、時間内に目標スコアを達成できないのは当然だ。

今思えば実に簡単な話なのだが、当時小学生だった自分にとって、これは簡単なことではない。レーダーを見て、周囲を見回して、三次元空間内での数秒後の自機と敵機の位置を予測しなければ、どれが最も良い目標なのか判別することはできない。そこまでの能力は、私には備わっていなかった。

とはいえ、「20 秒追いかけて無理だったら目標を切り替える」戦略は十分に強力であり、なんとか目標スコアを達成することができた。

第三の、そして最悪の困難: M13: SAFE RETURN

13 番目のミッションで、私は過去最悪の挫折を経験することになった。

SAFE RETURN は極めて特殊なミッションだ。

プレイヤーは、7 分以内に 13 個の静止した飛行船を破壊する必要がある。ただし、ロックオンができない上、レーダーもあてにならない。濃い霧の中、目視で飛行船を発見し、自機の真正面に捉えて追尾しないミサイルか機銃で破壊する必要がある。

説明だけ聞けば簡単に思えるかもしれない。だが、実際やってみるととてつもなく難しいミッションだ。

例えば、以下の画像には、何個の飛行船が映っているだろうか?

正解は少なくとも 3 つ。

RCA 端子で接続したブラウン管テレビで、ゴマ粒のような黒い点を探すことの困難さが想像できるだろうか。きっと多くの少年少女が、ブラウン管に食いつき、親に怒られたことだろう。

では、私はどうやってこのミッションをクリアしたのか。

残念ながら、当時の自分にはクリアできなかった。私はこのゲームを諦め、少なくとも半年近く、プレイすることはなかった。

しばらく経った後、私は再びこのゲームを手に取った。ノービス操作からノーマル操作に切り替え、一からやり直すことにした。

不思議なことに、全てのミッションが以前よりも簡単に感じられた。そしてこのミッションも、あっさり突破できた。きっと、身体的な成長のおかげだろう。努力や工夫は一切必要なかった。

では、この経験から得た人生の大切なこととは何だったのだろう。色々考えたが、一番しっくりくるのは、何をしていたとしても、自分は成長し続けているということだ。

困難にぶつかっても、必ずしも今すぐそれを乗り越える必要はない。一旦問題から目を背けてしまっても、若ければ肉体が、若くなくても知識は成長し続ける。一見関係のない経験でも、全てが自分の血肉になり、気づかぬ間に自分を助けてくれる。それを待ってから元の課題に帰ってくれば良い。

教訓と呼ぶには、ちょっと投げやりな響きを持っているかもしれない。だが、この教訓はやっぱり、自分の中で強い存在感を今でも持っている。

おわりに

こうして振り返ってみると、私はこのゲームから、「努力して勝利する」というよりは、「最小限の努力で勝利する」ことの大切さを学んだようだ。

  • 距離の近さは必ずしも実現のしやすさと一致しない。

  • 目的を達成するには一つの方法に囚われず、他の選択肢を検討してみるべし。

  • 何をしていたとしても、自分は成長し続けている。

そしてこれらの教訓は、現在座右の銘としている以下の引用にも通じるものがあるように思える。

We shall not cease from exploration 
And the end of all our exploring
Will be to arrive where we started
And know the place for the first time.

(T.S.エリオット 「四つの四重奏」)

(我々は探求をやめてはならない。全ての探求の終わりとは、我々の始まりの地に辿り着くこと。そしてその場所を初めて知ることだ。)

今回は困難とその克服を中心に取り上げたが、エースコンバット 04 からは他にも膨大な影響を受けている。

例えば、04 をきっかけにシリーズ作品をプレイすることになり、5 をプレイしている中で初めてゲーム音楽の耳コピに挑戦し、それがきっかけで DTM を始め、その中で音楽理論を学び、好きなものを理論立てて分析する喜びを知った。現在持っている、物語の構造を理解したいという動機は、実は 04 をプレイしていなかったら生じていないかもしれない。

もっと実用的な側面で言っても、もしかしたら、空戦で培った空間把握能力が受験数学で役立ったかもしれないし、英語の無線をずっと聞いていたおかげで、リスニング力が大きく成長したのかもしれない。

この記事はちょっと前から書き始めたものだが、巷では「子供にゲームを禁止する」ことの可否について盛り上がっているようで、投下するのにちょうど時宜を得た感じになってしまった。

個人的な経験から言えば、ゲームを禁止するなんて実に馬鹿げていると思う。一見遠回りに見えるようでも、経験のすべてが後の困難を克服する糧になる。そして、ゲームは日常生活では体験できない多種多様な困難を与えてくれる稀有なメディアだ。

可愛い子にはゲームをさせよう。


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