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イノベーション・マネジメントの要諦

本投稿は、過去に配信されたi.lab NEWS LETTER のvol.14-16において連載した記事をまとめたものです。

1.企業内でイノベーションを生み出すための組織体制

本号から全3回の連載企画として「イノベーション・マネジメント」における3つの要諦についてご紹介したいと思います。第一回は「組織体制」についてです。

まず、既存事業と事業開発はまったくの別物で、異なる観念や方法論でマネジメントする必要があります。さらに、どちらかが無くなると企業としての持続性も無くなるという、お互いの相補性を理解しリスペクトする体制を作らなくてはなりません。既存事業の人たちは、次世代を考えてくれている人たちが他にいるから自分達は安心して今のことに集中できます。一方で事業開発の人たちは、安定した収益を上げてくれている人たちが他にいるから、リスクのある挑戦を許容してもらえるわけです。また、事業開発を行い新しい製品・サービスができた時に使うものは、既存事業の人たちが作り上げてきたブランドや流通チャネルとなります。

既存事業の構造は階層化したピラミッド

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既存事業ではトップマネジメント、ミドルマネジメント、現場の社員がわかりやすく階層化されたピラミッド構造になっており、トップダウン/ボトムアップなどの言葉でプロジェクトを表現し、かつゴールは明確です。また、繰り返し行なわれてきた業務であり、マネジメント層にとっても過去の自身の経験になぞらえて把握・評価が容易です。


一方で事業開発のモーメンタムは...

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一方で事業開発は、右向きのモーメンタム(=質量×速度の物理量)として表すことができます。ゴールは本質的に不明瞭であり、マネジメント層も体験していないことを行っているため、把握・評価が難しいものです。プロジェクトを前に進めることだけでなく、後ろに重たい組織(質量)があることを意識し、どうマネジメントするかが重要で、コツとしては中間領域の人を設け、その人たちとしっかりコミュニケーションを取ることが挙げられます。


事業開発におけるマネジメント層の理想的な立ち位置は...

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最後に、マネジメント層の立ち位置として、事業開発においては上下のマネジメントではなく、横向きの動きのあるものを少し後ろから見ていて、引いた立場でのサポートが効果的です。最前線に立つプロジェクトリーダーの現場判断に対するリスペクトを持ち、不確実性が高いからこそ、次世代のエースに任せた方が上手くいくと考えています。


2.企業内でイノベーションを生み出すための業務プロセス
 

前号から全3回の連載企画として「イノベーション・マネジメント」における3つの要諦についてご紹介しております。第2回は「業務プロセス」についてです。


イノベーションのステージ

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まず、何らかの情報があった時にそれらを繋ぎ合わせることでアイデアが生まれます。これを0から1と言います。その1のアイデアを世の中に製品、サービス、事業としてローンチする、そこを10だとします。世の中に普及したらそれを100と呼びます。1から10のリアライジングのフェーズであれば、MOTや工学教育、リーダーシップ教育が当てはまり、10から100のマーケティングのフェーズであれば、ビジネススクールが強いでしょう。一方で、この0から1のクリエイティングのフェーズが、現在イノベーション業界において注目が集まっているところです。


「0→1」プロセスの4つの種類

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0から1のプロセスというのは、News Letter vol.4 & 6でも紹介しました通り、世の中には4種類のプロセスがあると考えています。それぞれの課題認識として、①技術起点は成功打率が低くなりがち、②市場起点はアイデアがあるようで実は無い、③社会起点は個別の社会貢献活動やニッチに収まりがち、④人間起点は自社がやる必然性と事業性が見えづらい、などがあげられます。これらを踏まえ、i.labでは統一理論はないという前提でプロジェクトごとに柔軟性を持ってプロセスを設計しています。各方法論を分解・統合したハイブリッドなアプローチと言えるかもしれません。


3. 企業内でイノベーションを生み出すための人材

全3回の連載企画として「イノベーション・マネジメント」における3つの要諦についてご紹介しております。最終回は「人材」についてです。


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イノベーションにまつわるマネジメントでよく起こることとして、「よくわからない」ので「意思決定をしない」、もしくは「前に進めさせないという意思決定を暗黙的に行う」、ということがあります。これは、トップマネジメントとして経験的に期待値を計算した結果と思われ、ある意味真っ当であり、一番楽な選択肢でもあります。これには、トップマネジメント層でも判断がつかないことは、誰にも判断がつかないという暗黙的な認識に基づいているのではないかと考えられます。


イノベーターのスキルセット

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ここに、イノベーターと呼ばれるような人たちと企業のホワイトカラーのスキルセットに関するアンケート調査結果があります。価値発見力はニーズを発見したりアイデアを作る0→1の力と言い換えられ、価値実現力はそれを実現し社会に出す1→10の力だと言い換えられます。価値実現力の偏差値は、イノベーターとホワイトカラーの差はそれ程ありませんでしたが、価値発見力に関して、大きな差があることがわかりました。さらに、価値発見力に関して、イノベーターの能力は、トップマネジメント層のそれをも大きく上回っていることがわかりました。

そうすると、イノベーターが見出したユーザーに対する潜在的価値をトップマネジメント層が評価・判断することは実は出来ないのかもしれません。しかしながら、イノベーション創出が事業活動において必須とされる現代において、その事実、状況を現実として受け止め、それでもなおマネジメントする覚悟が、トップマネジメント層には必要になると言えます。


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