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正気と狂気

茅葺きに関わっていると、(と言うかくさかんむりには)よく鬱々とした若者が流れ着きます。
どうやら僕にはそう言う人たちを惹きつける何らかのフェロモンかバイブスが出ている様なのと、有難いことに他薦もいただいている様で、自動的にくさかんむりに悩める若者が送り込まれてくるというシステムが、外部に出来上がっている模様。

そんな事なので、たくさんの悩み多き若者と話す機会があるのですが、
そのほとんどのケースは頭だけで考えすぎていて、身体を置き去りに思考している事が原因で、脳からの指令で身体を自縛してしまって、身動きが取れなくなってしまっている。

そう言う若者には決まって「汗かきやー」とご期待に添えない言葉を贈るのですが、これが結構マジメなアドバイスでもあって、
みなさんもちょっとランニングしたり筋トレしたりしてスッキリする事があると思いますが、我々職人仕事は、当たり前ですが毎日身体を使って物をつくっています。
茅葺きなんかは頭の上に空しかない高いところで、陽を浴びながら、雨に遊ばれ、風に撫でられ、仲間と息を合わせて汗をかいて1日が終わります。
そんな毎日を過ごしていると、些末な悩み事は汗と一緒に流れ出て、
夜にお風呂に入って流してしまえば綺麗さっぱり。
心身が毎日すっきりカラッとするので、鬱々としようがない。

現代はデスクワークも多く、コロナ禍でリモートワークも増えて、
ますます身体を使う機会が減ってきている事と思います。
特に多感な若者は、可能な限り身体を使って汗をかいたり息を切らしたりした方がいい。

何かを考える時に机に座ってうんうんと考えるんじゃなくて、
散歩でもランニングでも何でもいいのだけれど、出来れば自然の多い環境で身体を使いながら考えて、ひとしきり汗をかいて息を切らした後に浮かんでくる思考の方が正気なんだと思う。
僕の中ではそれ以外は狂気だと思っているので、
基本的に思いついても実行しないのと、その思いつきは信用はしません。
ただ、物事のある場面や村の祝祭など、限定的に狂気は必要なので狂気がダメということではないですが、狂気が日常になってしまうと、きっと人は苦しいのだと思う。

世の中には僕みたいな人間からから見たら、狂気じみた発言や行動をしている人が思いの外多いので驚きますが、そちらから見ればこんな時代に茅葺きをやってる事自体が狂気の沙汰なんでしょうが。

話は戻りますが、なんやかんやで鬱々とした若者達は、
屋根の上で汗をかいているうちに元気(正気)を取り戻します。
とか言うとまた鬱々とした若者が送り込まれてくるのでこのあたりで。

相良育弥

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