幾田花

新しい非母語者文学の世界を開拓したいです。皆さんによろしくお願い申し上げます。 →ha…

幾田花

新しい非母語者文学の世界を開拓したいです。皆さんによろしくお願い申し上げます。 →hana○ikuta.email

マガジン

  • この半年の振り返し

    私は二十一歳の人生の初めに、大学に入学しました。しかし、憧れの大学に通えることに夢のような気持ちを感じるどころか、むしろ世間から隔絶された疎外感を抱いていました。本作は、アスペルガーの私が社会に挑戦する真実の記録です。 #本作はフィクションではありません。実在の人物や団体などとは関係がありますが、特定できる文言が入っておりません。もし「それは私かなー」と思ったら、そのままに思ってください。

最近の記事

その夏の夢

 私はその夏の夢をした。柔らかな風が吹き抜ける田舎の家、澄んだ空と緑の野原が広がるその場所で、母と私は毎日ピアノに向かって座っていた。母の指先から流れるメロディーは、まるで風に乗って舞う蝶のようだった。  母はやさしく私にピアノを教えてくれた。最初はぎこちない指の動きに苦戦したが、母は温かい手を私の手の上に重なり、心地よい旋律の流れに自然と引き込んでくれた。母の声は柔らかく、私はその音に心を委ねた。  レッスンが終わると、私は庭に出て、花を摘んだり、風に揺れる木々の下で本

    • この半年の振り返し その一

       四月、私は二十一歳の人生の初めに、大学に入学しました。毎日、憧れの大学に通えることに夢のような気持ちを感じるどころか、むしろ世間から隔絶された疎外感を抱いていました。この半年を一言で表すなら、恐らく「恐怖」です。  八日、初めてのガイダンスの日、地下二階の教室に大勢の学生が集まりました。私は一番後ろの席に座りました。隣には同じ学科の二人の学生が座っていました。まもなく、学科の先生の演説が始まり、教室は静かになりました。私は教壇の後ろに立つ先生を見つめていると、目の前がどんど

      • 野郎猫

         最初にあなたに出会った時、私は道端の一匹の小さな野良猫だった。たぶん、私の姿があまりにも哀れだったので、あなたは私に少しご飯をくれた。その優しさに私は覚えた。私にはあなたが運命の人だと感じた。  ある日、私はあなたが他の野良猫に餌を与えているのを見かけた。その猫は私ほど哀れではなかったので、悲しくなった。私はにゃんにゃんと甘えてみたが、あなたは無視した。きっと、あなたには私はただの一匹の野良猫に過ぎないのだろうか。

        • 窓の外の雪

           窓の外は白い雪がまた降っていた。そして、雪が庭に落ちた。野口は白い雪らは一つ一つの、人間の魂だろうかと思った。もしそうであれば、雪は死んだ者なのか、それとももうすぐ生まれるものなのか。もしみんな死んだ者なら、寂し過ぎないだろうか。白い美しい雪原の上には、きれいな雪花が溢れているように見えたが、全部は死者の怨霊である。春になると、雪は消えた。そして来年の冬になって、白い雪はもう一度舞いて戻った。このように寂しく繰り返していて、世間はこのような哀愁の輪廻である、と思った。

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