「好きなことで人と繋がり、混ざりあう」新時代の飲食店6curryから学ぶ・コミュニティマネージメント
みなさん、“6curry”をご存じでしょうか?
「スパイスカレーやさん」なのですが、住所非公開で、会員さんの紹介でないとお店にたどり着くことはできないお店です。しかし、魅力的な発信をされている方のプロフィール欄には「あの人も、この方も!」と驚くほどに“6curry”の文字。そして「#6curry」とSNS検索すると楽しそうな様子が多く載っています。
さらに、コミュニティ文脈の方もそうでない方もすでに認知度が高く、様々なメディアでも取り上げられています。
私はというと、上記のように興味津々なのですが、これまでどこか空想土地のようなつかめない感じがありました。
そんな時、NPO法人greenzの『コミュニティの学校』第4期・第2回において、6curryのCommunity Creator 廣瀬 彩さんからお話していただける、ということで、ここにレポートさせていただきます。🍛
廣瀬 彩 (Hirose Aya)
新卒で投資銀行に入社し、国内外のM&Aや資金調達に携わる。その後ベンチャーへ転職し、経営企画と人事を兼任。社長/副社長の直下で、中期経営計画の策定やデータ分析、資金調達、新卒・中途採用を担当。
2017年8月にNEWPEACEにコーポレートスタッフとして入社。「カレー好き?」と聞かれて「はい!」と答えたところから、6curryの担当に。
現在は、6curryのコミュニティ担当で6curryKITCHENでの体験作り、オペレーション、6curryKITCHEN内外でのコラボレーションの企画/運営を行なう。料理と旅と本が好き。
余談ですが、私を含め受講生約30人中20人ほどが気合を入れて晩御飯にカレー(カレーパン含む)を食べてきたという報告から始まるカレーだけにhotなスタートになりました(笑)
実際はカレーの話はそこそこに、6curryのコミュニティに関して余すところなく話してくださり、コミュニティ運営をしている受講生の皆さんと共に熱気だつ時間でした🍛🔥
学びのエッセンスを少しでも共有できればと思います!
1.6curryとは?
まずはサポートのあぼちゃんから6curryの概要や体験価値、実際に行われているワークショップなどについてシェア。
『EXPERIENCE THE MIX!』を掲げ、
世界に誇る日本食の一つである「カレー」を軸に、新しいコミュニティを生み出していくブランド。
コンセプトは、様々な具材やスパイスを混ぜて作るカレーのように、多くの人やアイディアを混ぜ合わせること。オリジナルメニュー開発、会員限定で開放しているセントラルキッチン内では週次でイベントを開催。500人超規模のイベントケータリングや企業内のコミュニケーション提案など、食を起点として生まれるコミュニケーションのデザイン・プロデュースを行っています。
(魅力的なHPとインスタグラムで引き付けられました!)
特に印象的だったのが6curry会員であることの価値は「毎日無料のカレー」ではなく、「カレーをツールに880人とツナガル・混ざり放題」という体験であるというお話。
実際に6curryを通した繋がりで変わっていた、ご自身の人生ストーリーから、6curryが “好きなもので繋がれる 新しい生き方を選んだ人たちのサードプレイスである”ということを愛をもって感じることができました。
6curryについて丁寧な引き込まれるプレゼンを頂いたところで、、、サプライズ!実はあぼちゃんも6curryの会員さんでした!、に一同驚愕しました(笑)
2.“6curry”コミュニティとしての3つのキーワード
今回、あぼちゃんのプレゼンはあやさんが推薦してくださって、特に内容の指定はなかったと。
6curryでは日々、こういったお店の説明を会員さんにしてもらっていて、
「常連さんがいる飲食店はあるだろうけど、コンセプトや歴史、体験価値などまでお客さんがこんなに話せるお店はないと思います。」と。
ここからは、「6curry がどうやってこのようなコミュニティになっていったのか?」
(1)越境 (2)融解 (3)共創
3つのキーワードを軸に話していただきましたので、お伝えします。
(1)越境
◆カウンターの中に入れる空間設計
「6curryにはお客さんがいません、全員が仲間なんです。」
どういうことかというと、会員さんがビールを運ぶし、皿を洗っている。「どの人がスタッフですか?」と聞かれたら、「だれに声をかけても大丈夫ですよ」と答えていらっしゃるそうです。
普通の飲食店のように、提供される人とするを分けていない。それが、「6curryにはお客さんがいない」ということ。
「人と人との関係性って向かい合うと出来る」
登壇者と受講生のように『対面』すると“お客さん”と“お店の人”に分けられてしまうけど、その対面を作らないようにカウンターの中立ち入りを歓迎しているとのことでした。
「場所の設計」をする際にも、どこからがキッチンでどこからが席かをあいまいな構造になるようにしたそうです。
(U字の席)
U字型に作ったカウンターは、みんなでキッチンを囲むような形になっています。会員さんも入りやすい構造。
◆1日店長で気軽に中の人になれる
他にも、“混ざる”ための仕組みがたくさんあります。その一つが、「1日店長」です。
気軽に“中の人”になる仕組みで、自主的にやりたいテーマをもってやるのですが、その機会に会員さんが「どうやったら、会員さんが喜んでくれるだろうか?」と6curryの運営側の思考で考えてくれるそうです。
「傍観者より、作る側のほうが楽しい。それに、中に入ったほうが、もっと仲良くなれるから。」
上記の理由から、「(1日店長を)やりたい!」と興味ある人には出来るだけ直ぐにやってもらうそうです。
そうやって、みんなに「やりたいこと、好きなこと」をやってもらう場を作ることを6curryでは『ステージにあがる』と言っているそうです。その共通言語が浸透し、あらゆるところで文化が根付いているように感じました。
(1日店長)
自分でコンセプトや企画を考えてもいいし、カウンターの中にただ立ってお話するシンプルな形でもいい。店長になって、会員さんに6curryKITCHENを一緒に混ぜてもらう。
(こんな感じで毎月一日店長イベントが企画されています)
(会員さんの1日店長イベントを別の会員さんが、ストーリーで告知していることも◎)
(2)融解
◆お客さんではなく仲間
「忙しい時は会員さんに、「ちょっと手伝って!とってきて!運んで!」と図々しくお願いする」
「融解」とは、会員さんとスタッフがわからないように溶けていくということ。いい意味でお客さんとして見ておらず、一緒にお店をつくっていく「仲間」と思っていらっしゃるそうです。
上記の少しびっくりするような発言、普通の飲食店では見られない風景があるのもその一例です。
ですが、そうやって、何かを頼まれることも、嫌な顔をされることはないそうです。あやさんは「役割がある・カウンターの中にはいる言い訳になるから」ということをおっしゃっていましたが、それに加え「仲間」という意識が本当に皆さんに浸透しているんだと感じました。
また、コミュニティマネージャーとして「気軽に頼めること、手軽に出来ること」から“役割”があるようすることを気を付けられているとのことでした。
◆簡単に提供側に回れる仕組み
「それぞれがやりたいことを『セレブレイトする』」
さらに、Mix staffというエプロンや、OSUSOWAKE(おすそわけ)といって会員さんが持ち込み歓迎の制度のような、それぞれが「好きなこと・やりたいこと」を通して、簡単に提供側に回れて、それを『セレブレイトする』(祝福する)文化があるのも特徴の一つです。
OSUSOWAKEとは:自分で作った料理や趣味でやっていること、飲み切れない良いお酒やふるさと納税の返礼品など「みんなに提供したい!」「みんなでシェアしたほうが楽しい!」などの持ち込みを歓迎している制度。
チャイを作るのが趣味だから『みんなに提供したい!』と素敵なチャイを提供してくれている方は「彼がいると美味しいチャイが飲めるぞ!!」と会員さんも楽しみにされているそうです。
そうやって、待つほうも、待たれるほうも嬉しい循環ができているのも素敵。
6curryで「好きなこと・やりたいこと」を提供できる場があり、温かく、安心して挑戦できる環境の中で経験を積み、スキルも更に上がっていって、双方がよりハッピーになるというのが心から素晴らしく、魅力的なコミュニティの在り方だと感じました。
(3)共創
◆キッチンを一緒につくる
「《一日店長》などしていなくても、小さくても、自分で語れるポイントを作るようにしています。」
「みんなでブレンドして美味しいワインを投票で決める」「メニュー投票をする」などみんなが参加できる企画もあるとのこと。
それは、会員さんが「これに投票したんだ」とか、「僕はこれを推してたんだけどね(笑)」と自分が語れるポイントを作れるように。
そうやって、ストーリーの過程にもかかわってもらえるポイントをつくることも大事だそうです。確かにそこでの「発言権」を得ることで、そこが「居場所」として感じられるように思います。
ちなみに、年末大掃除にも、手伝いにやってきてくれる会員さんもいたほど。様々な所で自主的に関わってくださっているそうです。
◆運営を一緒にする:MIX LAB
「実は約880人の会員さん抱え沢山のことを仕掛けるプロジェクトでありながら、社員4人なんです。リソースが足りるはずがない」
《共創》と言いながら、一緒につくる機会が足りなかったということで、最近、MIX LABを始められたそうです。“プロデュースグッズ作成”や、『巻き込み方が分からなくて…』という“問いをつくる”ところも会員さんと一緒にやっているそうです。
(6curry全体構造)
(会員さんの関わっている部署)
ここで大事にしているのは、『問いを共有し、一緒に考え、一緒にうみだしていく。』ということ。
「具体的な“やること”を運営側が考えて依頼すると、それはタスクになるんですよね。」
仕事ではなくて、会員さんが『楽しい!』と思うことをみんなでやっていきたい。その思いから、『何をやろう』『何が問題かな』という、『問いの共有』から始めているそうです。
そして、もし会員さんがやりたいことがあれば、『必ず実現するよ』ということを約束とされている、ということも印象的でした。
※
「仲間とのクリエーションこそが最高の消費」
《「モノ消費」から「コト消費」の時代へ》、と言いますが、「コト消費」(イベント参加など)の体験価値って一時的なもの。
それよりも、学生のときの文化祭が最高に楽しかったように、「クリエーション消費」、「トキ消費」が一番楽しい。というのが6curryの仮説。
6curryでは、仲間と共に、それが手軽に、継続的に提供出来きる環境を整えていらっしゃるそうです。
お話を聞いていて、6curryさんの仰る『共創』には“大人の文化祭”のような『クリエーション消費』のわくわく感・高揚感があるように感じました。
(一言一言が本質的で額縁に入れておきたい言葉ばかりでした🔥🍛🔥)
3.質問タイム
講義の後には3,4人ずつで感想シェアをし、更に聞きたいことについて、質問をさせていただきました。
(感想シェア)
(既にコミュニティ運営している皆さんだからこそ、鋭い質問が沢山)
全て紹介したいところですが、その中で特に印象的だったテーマを2つ。
①対価に関して
「みんながやりたいことをやりたいカタチでやってもらう場として、6curryを使ってもらえたらという感覚です。」
「対価」は仕事に対して払われるものですが、発想として6curryでは「仕事」は頼まないとのこと。講義でもあったように、それぞれの「やりたい」を叶える環境を提供していらっしゃるという印象です。
その代わりに、6curryでは“対価は楽しいで返す!”ことや、“できるサポートを全力でやる”ことは気を付けていらっしゃるのこと。
逆に会員さんに、「◯日までに仕上げてほしい」等、仕事でやってもらいたいことであれば、お金を出してやってもらうこともあるとのことでした。
「一方で『6curryのアウトプットはシッカリしたもの』ということを裏切らないことは大事にしています。」
アウトプットというのは、カレーはもちろん、ブランドロゴやデザインなど。「6curry」を愛し、信頼していただけるようにアウトプットに心を込めていらっしゃる。
例えば、「融解」のところで会員さんに手伝ってもらうこともある、と書きましたが、カレーを作ったり、盛り付けまでは、スタッフがして、「持っていく」ところで関わっていただく形をとっているということでした。
②会員さん内でのギャップはないのか?
「6curryでは常連さんが中の人の思考をしています。」
まず、6curryでは常連さんが新規のお客さんにマウントを取ることもなければ、逆に会員さんが「いかに6curryが続くかどうか」を本当に願っていらっしゃるとのこと。
具体的には、会員さんが客単価心配してくれたり、会員費が上がる話をした時も「値上げが必要だと思ってた」と言ってくれたり。にわかには信じれないくらいの感覚を持っていらっしゃいます。笑
お店やコミュニティにおいても、「消費」しに行っていると、縄張り意識が出てくるかもしれませんが、6curryではここまででも書いたように、「仲間」として「クリエーション」していることがカギになっているようです。
そのために「直ぐにもてなす側に回れる」ようにしています。例えば、新規の方が来たら隣に座っている会員さんに6curryについて説明してもらうこと。そのことで、自然と来た人に楽しんでほしくなり、もてなす側に回っている。
また、下記も印象的でした。
「6curryにおいて、いろんな関り方が肯定されるようにしています。」
頻繁に来訪してくださる会員さんもたまにしか来ない会員さんもいるけれど、みんなの在り方を平らかにしようとしない文化は大事だということ。
そして「辞められる」コミュニティであること。「やめても戻ってこれるのがいいし、ギブになりすぎるとしんどい。忙しい人に『なんでやれないの?』は苦しいし、そういう人がいると空気は伝染する。」とおっしゃっていたことが印象的でした。
(会社でもそれ以前の高校大学の「部活動」や「ゼミ」などでも言えることで、上記経験がない方のほうが少ないのではと思うような内容。。)
濃淡あることを一様にせず、濃淡あることをみんなで良しとしよう!という文化が6curryの居心地の良さや安心の居場所に繋がっているのかもしれません。🔥🔥🍛🔥🔥
4.さいごに
ここまで読んで下さってありがとうございました!
どうでしたか?
私は、6curryという場の価値を愛をもって最大限に作られているからこそ、会員さんも自然と語りたくなったり、そこからコミュニケーションやプロジェクトが生まれるんだと実感しました。
更にコミュニティ運営においても、「仕組み」「マインド」の両面で、一言一言が学びになる時間でした。勿論、今の6curryの在り方が一朝一夕に完成されるものではないと思いますが、胸に刻んでいきたいと思います。
最後に、特に印象に残っている彩さんの言葉で締めます。
“何者”未満で『これ必要としてる人いるかな?やりたいけど仕事にはならないかな』と思ってる人が、失敗してもいいから6curryで挑戦する場を持ってくれたらいいなぁと思っています。
好きなことで人が自分を『主役』にする場を一緒につくっていきたい。
あやさん、あぼちゃん、皆さん、本当にありがとうございました!!!
おまけ
「#コミュニティの教室」受講生の感想も飛び交っていて、気づきが多かったのでここにていくつかシェアさせてください。
(↑今回話してくださったあぼちゃん)
最後まで、お付き合いありがとうございました!!🔥🔥🔥🍛🔥🔥🔥
次回の講義は、IKEUCHI ORGANICの牟田口さん。
またまた、楽しみです!!!!
~2020年4月追記~
コミュニティの教室、第5期の募集をしています!
今期は、全編オンラインで開催し、オンラインコミュニティの育み方にも着目していきます。
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