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ひろゆき「1%の努力」

著者自身の子どもの頃からの「7つのエピソード」を読んでいるうちにふわふわと、「49の思考ツール」がどんどんインストールされている、そんな感じの本でした。
2ちゃんねるにせよ、ニコニコ動画にせよ、かなり多くの人が、のぞいたことがあるのではないかと思います。私も2ちゃんねるで、世の中の人の本音はどんな感じなんだろうと、何度か検索したこともあります。ご本人もおっしゃっているのですが、ひろゆきさんが提供したのは場であり、コンテンツは様々な人たちが自主的に発信していき、それをまた見るたくさんの人が訪れたということになります。それだけの仕組みを構築できる人が、どんなことを考えながら生きてきたのか、その思考の全体像を知ることができます。

この本のすごいところは、本の中で他の部分について参照する際に、〇〇〇ページに書いた、という感じでどこを見れば示されていて、ウェブでリンクしてる感じでとても親切です。色んなエピソードが並べられているようでいて、教科書的な側面も持ち合わせているのです。
そしてさらに驚いたのが、巻末には、「ひろゆき・全思考まとめ」として、大事な部分、つまり7つのエピソードと49の思考ツールの一覧が掲載されているのです。「一瞬一瞬の判断が、その後の人生を左右する。その判断軸になるように、ぜひ思い出せるようにしてほしい」という言葉が添えられています。

手を動かしたくなって、このまとめを全部ノートに書き写しました。2時間以上かかりました。
書きながらどんなエピソードだったか思い出せないところは、本文のページが記載されているので、そこを参照したりしながら、振り返りました。

さらに、これ、必要な時に思い出すじゃなく、今、自分で考えなければいけないな、と思いました。

ただ書いているだけでは意味がないのです。この判断軸でどうすべきかなーぼんやりと思うだけじゃなくて、早速考えなければいけないな、と思いました。というか、書き写しているうちに、なぜか自然といろいろ考えたくなったのです。

ここでは7つのエピソードだけ紹介します。それぞれのエピソードに、思考の場と表現すればよいのでしょうか、考えるための視点が対応づけられています。

エピソード1 団地の働かない大人たち―前提条件


ひろゆきさんが子どもの頃過ごした団地には、働かない大人やひきこもりがたくさんいました。噂になったりはするものの、そういうものだ、と、なんとなくみんな理解していたそうです。育った環境によってはそう思えない人もいるかもしれませんが、それは全て前提条件がどうか、という問題です。他の人と前提条件が違うのは当たり前ですし、では自分自身はどの状態よりひどい状態になったらヤバいと感じるのか、ということを考えてみるとよいと言います。それは本を読んだり映画を見たり、旅行に出かけることで体験できます。

エピソード2 壺に何を入れるか―優先順位


こんな話があります。大きな壺を教授が持ってきて、その中に岩を詰めていきました。教授が「これでいっぱいか?」と尋ねると学生は「いっぱいです」と答えます。ですが、教授はそこに砂利を流し込みます。砂利を流し込んで再度尋ねると、今度は「いっぱいではないです」と答えます。その後、砂を入れ、水を入れることができるのです。
人に与えられた時間は限られています。思考も心もキャパがある。だから、何を大事にするか、そして何を捨てるかを常に考えられなければいけません。

エピソード3 なくなったら困るもの―ニーズと価値


好きなことを仕事にするのは悪くないですが、そうすると、ニーズを見誤ってしまいます。仕事にするためには、ニーズがあり、価値があるものでなければなりません。他方、新しいことが起きたときに、その問題に関しての解像度を上げて、どこかが悪かったのを見極めなければ全部悪いとなってしまいます。

エピソード4 どこにいるかが重要―ポジション


場所が用意されていれば人は動き出します。2ちゃんねるにたくさんの人が書き込んだように。なので、自分自身もどこにいるべきか、ということをしっかり考えなければいけないし、みんなと同じ場所に立つのがよいことでもなく、人と違うところは何か、ということを意識した方がよいという話です。

エピソード5 最後にトクをする人―努力


タイトルにもなっている1%の努力。頑張ればうまくいく、みたいな風潮があるけれど、環境だったり運だったりもあるわけで、それを全部自分の力だと思うのも危険だし、努力するということもできる人とできない人がいます。だとしたら、1%の努力で状況を変えられるのはどういうことだろうか、という視点で、ものごとを見るのが大事だといいます。


エピソード6 明日やれることは、今日やるなーパターン化


正直なところ、この辺りの章が私にとっては理解しにくかったのだけれど、この世にはロジックが通じる人とロジックが通じない人がいて、ロジックが通じない人にどう対応するか、そのための方法はパターン化であるといいます。パターン化することで対応できて、実績が積むことができれば、新たな予測可能な領域に関しても、楽しく挑戦できるといいます。自己分析も重要で、自分ができること、できないことを明確にしなければいけません。明日やれることは今日やるな、というのは、先延ばしにするという意味よりは、今日しかできないことをやれ、ということのようです。

エピソード7 働かないアリであれー余生


働きアリのタイプと働かないアリのタイプがいます。右肩上がりのバイアスがなくなった今、ずっと「ダラダラした日々が続いていく」と思えば、努力が報われなくても生きていけないか、というのがひろゆきさんの提案です。
「働かないアリ」でいるのに必要な素質は2つあります。「ダラダラすることに罪悪感がない」、そして「自分の興味のあることに没頭できる」ということです。特に2つ目、興味が出たものは徹底的に調べる、それによって、知らないで損をするということがないことに繋がっていきます。


思考ツールとは?


それぞれのエピソードには、7つずつの思考ツールがぶらさがっていて、全部で49になります。思考ツールというのは、発想のトリガーになるような言葉のようでもあります。例えば、最初の思考ツールは「エッグスタンドなんて、いらなくない?」という言葉。エッグスタンドは、卵を立てるためだけの器であり、それだけの器が本当に必要かどうか、つまり、「人生において、すべてのモノがあなたにとって必要とは限らない」ということの象徴として使われています。
もちろん朝食に必ず半熟卵を食べるのが何よりも大好きだから、エッグスタンドを使いたい、という人もいるわけで、あくまでも例えなのですが、こんな感じで、何かを考える時に思い出すと頭が整理できるような、そんな言葉たちが用意されています。


とある読者の思考体験


読者の一人として私が考えてみたのは、仕事において、チームでどう動くかということです。
チームには自分と違う世代もいるので、まず持っている前提条件が違います。仕事に関してのスタンスも様々です。これを理解した上で、進めていかなければいけません。
次に優先順位についてですが、私が所属している自治体の職場においては、意外と優先順位が明確でなくて、あれもこれも、になっている側面があるような気がします。その辺りを本来ならば整理していかなければいけないのかな、と思います。
そして、なくなったら困るもの、これはチームにおいては、心と体の健康、そして、仕事へのモチベーションではないかなと考えました。
ポジションは、それぞれの立ち位置を理解しつつ、全体として、動きが出るような場づくりをしなければいけないと思います。
努力に関しては、このご時世、昔はこれだけやった、みたいなものが通用するわけではないですから、いわずもがな、になると思います。ですが、努力と認識しないようなこと、本人が好きで興味を持てるようなことがあれば、そこに取り組んでもらうとか、そういうことができたらいいなと思います。
パターン化に関しては、チームのメンバーがどういうタイプかをよく認識し、行動を予測する、また上席がどんなことを意識しているか、ということもよく理解して、進めるのが大事なのかなと考えました。
余生に関しても、働かない、というのは困るわけですが、がむしゃらに動くのではなく、調べることで、一番楽なルートを探す、ということはとても大切なことだと思います。また、キリギリスのように、誰かに助けを求めることも、生き延びるために大切なことなのだと思います。何しろ、身体や心を壊してしまってはどうにもなりませんから。

とりあえず一つのテーマで考えてみたのですが、他のことについてにも、こんな感じでいろいろ考えてみたいなと思いました。

ひろゆきさんは、2ちゃんねるやニコニコ動画と同じように、この本でも読む人に場を与えてくれたのではないでしょうか。だから私も、自分自身の今考えたいことについて、考えよう、と感じたのかなと思います。
そしてもう一つ、右肩上がりのバイアスの空気感の中にいてもやもやしている右肩上がりを実感できない私たち、つまり、ひろゆきさんと同じ世代や若い世代に向けて、考えるための場所を提供してくれたのかな、とも考えたりしました。

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