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識学 安藤広大「『仕事ができる人』に共通する、たった1つの思考法 数値化の鬼」

読みながら、前に一緒に仕事をした後輩のことを思い出していました。興味深い数字を見つけるとすぐに電卓を叩きながら、考えたことを話してきます。
私はつい感覚でものを考えがちなのですが、その人は、ものごとを数字で測る習慣があったんだと思います。感覚的にどうかな、と感じることについては、自分なりに数字を示してみたりもしました。その後の議論がどうなったかまでは覚えていませんが、数字で示された内容に対して、感覚で返しても意味がないと感じたので、苦手なりにやってみたのです。そのまま話してもただの空想、でも数字を示しながら話せば仮説にもなりうるし、数字の信頼性が高ければ説得力のある提案になるのだ、ということを学びました。

もう一つ考えたこと。今の仕事になって、アンケート調査をする機会がありました。基本的には経年変化を見ることを目的としたので、前回の調査を踏襲した設問にしたのですが、その中で一つ、新たに加えた選択肢がありました。というのは、ニーズがAとBのどちらなのか、分からなかったものがあったからです。ずっと感覚的な意見が交わされてきたのですが、びっくりするくらい明確にAという答えが出てきて、驚きました。
それ以降、この件に関して、Bではないかという人が全くいなくなりました。数字というのは、ものすごく説得力があるのだと実感した経験です。

この本の中で書かれているのは、アンケートやマーケティングの話ではありません。PDCAの話も出てきますが、もっと細かく要素に分けられた話です。成長するために、組織のメンバーを成長させるために、数値化が必要となるという話です。もっと突き詰めていえば、評価の話になります。

そもそもこの本は、識学という生産性が高い組織運営を実現するためのマネジメント理論を提唱した安藤氏が連作で書いた本の2冊目になります。1冊目は先月読みました。

数字の説得力の強さ、というのは、電卓を片手に話す後輩の話、アンケート調査での体験で、理解していたつもりです。とはいっても、評価において、数字を使うことの難しさを感じていました。
個々人が持っている資質の違い、同じような業務をみんながやっているわけではないので、そのバランスをどうとるか。また、チームが数年続いたあとの目標設定ならまだしも、メンバーは入れ替わり、職位で見た構成も変わる中で、何を基準にするのか、ものさしが決められたとしても、どのあたりが妥当な目標なのか、というのを考えるのは非常に難しいものです。

ですが、数字から逃げてはだめだ、と安藤氏はいいます。

「数字のことを考えさせないほうが、のびのびと働けるのでは?」
という意見です。これも大きな勘違いです。
 不適切な数字の目標を掲げ、「なんでこんなこともできないんだ!」と怒鳴ったりするからプレッシャーになるのです。つまり、「感情」を絡めることが問題なのであって、数字そのものがプレッシャーを与えるわけではありません。

難しいから、分からないから、と逃げていると、数値化の持つ力を使わないことになってしまいます。特にこの部分は、私のような人間のために書かれているのではないか、と思われるくらい、刺さりました。

数値化は、感情を横に置いてラクにしてくれるツールでもあります。
たとえば、好き嫌いの悩みも同じことが言えます。
職場にどうしても嫌いな人がいるとしましょう。
「あの人は苦手だ」とつねに思っていると、疲れてしまいます。
しかし、「ムカつくことを『3回』言われた」と数値化してみてください。(中略)
「嫌い」という主幹が、「回数」という客観的事実に置き換わります。
すると、一歩引いて自分を見ることができ、スーッと生きやすくなるでしょう。
それくらい数字は発明なのです。
もやもやする気持ちから、あなた自身を引き離してくれます。
感情ではなく、理論で冷静に判断するためのツールなのです。

数値化について、具体的にどう進めていけばよいか、ということが、5つのステップに分けて書かれています。

ステップ1「行動量」を増やす→自分の行動の数を正確に数えること

日々の業務の中でやらなければいけないことを、何回やったのか、一日に何時間できたのか、ということに集中します。ダラダラやっても意味がないので、時間というフレームの中で考えなければいけないと言います。

ステップ2「確率」のワナに気をつける→割り算による「安心感」のワナに気をつけること

成長するためには、確率を上げていくことが大事だと思われがちですが、そうではありません。成長するにつれ、当たるかどうかが見えてくるから、これは見逃した方がいいと考えて行動を減らしたり、平均を超えているから大丈夫と安心したりする、これがワナだといいます。

ステップ3「変数」を見つける→仕事の中で何に集中するかを考えること

「変えられるもの」と「変えられないもの」を見分ける必要があります。「考えてもムダなこと」はしてはいけないのです。試行錯誤して変えたらうまくいった部分が「変数」ということになります。けれどこの「変数」は自分で見つけなければ意味がありません。その理由についても提示されています。

ステップ4「真の変数」に絞る→ムダな変数を削り、さらに重要な変数に絞り込むこと

ステップ3をマスターすると、次々と「変数」が見つかるようになります。この全てに取り組んでいたら、全てが大事だ、ということになり、大変な時間がかかってしまいます。KPIが多過ぎることは、余計なことを考える時間が増えることになります。このため「真の変数」を一つ決めなければいけません。とりあえず一つ決め、それが間違っていないかどうかのチェックはC,Aのプロセスでやればよいと安藤氏は言います。

ステップ5「長い期間」から逆算する→短期的と長期的、2つの軸で物事を見ること

短期的な視点で見れば損だけれど、長期的には得になることもあります。まず短期的なことを考え、次に長期的な視点で考える。そして、必ず「長期」から「短期」の逆算をすることで、短期的な取り組みが長期的なことに向かう「つながり」が見えてきます。

最後に安藤氏は、ここまで見えるようになった上ではじめて、「数字だけが全てではない」ということが言えるようになるといいます。ここまでできないのに言うのは、ただ数字から逃げているだけだと。

自分の仕事にどう落とし込むか、考えてみたいと思います。
また1か月後くらいに、3つ目の本「とにかく仕組み化」を読んでみたいと思います。


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