地域コミュニティのネットサービスの難しさ
ご近所SNSマチマチの六人部です
ご近所SNSマチマチというご近所さん限定のSNSを開発・運営しています。2015年10月に会社を設立し、約5年間、地域コミュニティにどっぷり浸かってきました。
この記事では、地域コミュニティ関連のコンシューマーインターネットサービス(以下、地域コミュニティのネットサービス)の難しさについて書きたいと思います。
前回、「地域コミュニティのネットサービスとその可能性」という記事で、過去の地域コミュニティのネットサービスとその可能性の大きさについて書きました。
今回は、地域コミュニティにおいて事業をつくっていく上で自分自身が経験したことや過去のサービスを観察する中できづいた「難しさ」についてまとめています。
1. 地域コミュニティのネットサービスとその可能性
2. 地域コミュニティのネットサービスの難しさ(本稿)
地域により分断されるネットワーク効果
画像引用元 The Network Effects Manual: 13 Different Network Effects (and counting)
難しさの1つ目は、強いネットワーク効果を獲得しにくいことです。
参入障壁の中で、最も強力なものはネットワーク効果です。
ネットワーク効果とは、同じサービスやプラットフォームを利用するユーザーが増えることにより、それ自体の効用や価値が高まることです。
地域コミュニティのネットサービスは、その事業性質上、ネットワーク効果が強くなるまで、時間がかかります。
なぜネットワーク効果が強くなるまで時間がかかるかというと、地域別にサービスを展開しているからです。
地域別にサービスを展開するため、地域が異なれば、ユーザー数やコンテンツ数などが分断されてしまいます。地域ごとにユーザーを集めていくため、時間もかかります。
(逆を言えば、地域コミュニティの領域で一度強いネットワーク効果を確立できれば、強力な参入障壁になります。)
地域コミュニティのネットサービスがネットワーク効果を得るにはどうすべきか?についてはまた別途まとめたいと思っています。
ビジネスモデル構築までの時間軸が長いこと
難しさの2つ目は、ビジネスモデル構築までの時間軸が長いことです。
大半の消費者向けのネットサービスと同様、十分なユーザー数を確保した上で、収益化を行っていくことになります。
そして、地域ごとにサービスを展開していくため、地域の関係ないサービスと比較すると、基本的にビジネスモデル構築までの時間は長くなりがちです。
この「ビジネスモデル構築までの時間軸」を各ステイクホルダーと合わせられるか、説得できるかが事業の成否に大きく影響を与えます。
投資家とは時間軸が合わなければ出資に至らないでしょう。
従業員にとっても、しっかり考えている人ほどこの視点は気にするはずです。
ビジネスモデルの構築までの時間が長いだけでは、誰も見向きはしません
長いけれども、巨大な可能性があることを説明すべきです。
スマホの有無
難しさの3つ目は、スマホが普及してない時代は地域コミュニティのネットサービスは成立しにくかったことです。
1995年頃から、地域コミュニティのインターネットサービスは生まれてきました。
パソコンがメインだった頃は地域の情報を投稿するにも、少しハードルが高かったでしょう。家に帰って、デスクトップをわざわざ開く人はそこまで多くありません。
2018年には、スマートフォンの普及率は全世帯の79%にも達しました。
2007年にiPhoneが登場し、その後、スマートフォンが普及していきました。地域にいるのは子供、女性、高齢者になります。
特に女性にスマートフォンが普及していったことは様々な業種に影響を与えました。子育てをしながら、日々忙しい中でもスマホがあればスキマ時間に、体験したことや疑問に思うことをかんたんに投稿できます。
スマートフォンの女性への普及が地域コミュニティのインターネットサービスが成り立つ上でとても重要な役割を果たしています。例えば、子育て中の女性が、地域で生活していく中で浮かんだ疑問や体験したことをさっと投稿できるのはスマートフォンのおかげです。
自分たちの価値を見誤りやすい構造
マチマチという事業をやっていく中で、多くの人に「善い取り組みですね。」「社会的に意義のある取り組みですね。」と好意的な言葉をかけていただくことが多いです。
ポジティブなフィードバックをもらうことは、嬉しい。
地域コミュニティに関連するサービスは、たとえ、そのサービスに価値がなかったとしても、「社会的意義がある」ということで、自分たちの価値を見誤りやすい構造あがります。
そのサービスの利用者や商品の消費者にとってはその思いは究極のところ関係ありません。社会的に意義のあるものだから利用したり、購入するのではないです。
そのサービスや商品が、自分の課題を解決してくれるから、利用や購入をするわけです。
事業としてやるのであれば、「社会的意義」と「ビジネスモデル」の両立を目指すべきです。本当にユーザーの課題を解決できる価値のあるものをつくることに注力しましょう。
「社会的意義」だけでは、飯も食えないし、社会的なインパクトもあたえられません。
最後に
地域コミュニティのネットサービスの難しさとして、ネットワーク効果、ビジネスモデル構築までの時間軸、スマホの有無、「善い」で満足しやすい構造の要素をあげてきました。
前回の記事で紹介したように収益化に成功しているサービスもあります。そのため、「難しさ」があるから、うまくいかないわけではありません。
私は、「難しさ」が他の事業領域より多いからこそ、チャンスにあふれていると考えています。
地域の課題を解決したい企業や自治体の皆様からのご連絡をお待ちしています
今回の新型コロナウイルス(COVID-19)をきっかけに、アナログが中心だった地域コミュニティの住民、企業、自治体の活動はますますオンラインへと移行していきます。
マチマチは、自社サービスを提供しながら、住民、地方自治体、企業の3者を巻き込んだ形で、地域の課題解決に取り組んでいます。
約5年の事業運営を通して、地域 x テクノロジーの領域において知見や経験が溜まってきており、広く役立てていきたいと考えています。
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* 弊社のマチマチのファイナンス・ストラテジー自体はニーズがあればどこかで書きたいと思います。
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