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SPACとVCは共存できるか?

2020年末の時点で、実に260件ものSPACが上場しており、SPACバブルとも言える年になりました。

上場したSPACは、2年以内に優良な未公開会社を見つけ、合併を通じて対象の未公開会社を上場させることが求められます。これら250ものSPACが、積極的に上場前の優良スタートアップにアプローチし、合併交渉に入っていくことになります。

しかし、このようにSPACの活動が積極的になると、従来スタートアップの資金供給元であったVC、特にレイターステージをターゲットにしたVCと喰い合ってしまうのではないか、という懸念があります。

SPACはその投資ビークルの仕組み上、上場後に一定の期間(多くは2年間)のうちに合併先を見つけなければいけません。2年のうちに合併できなければ、そのSPACは精算され集めた資金は出資者に返金しなければなりません。

ですので、SPAC運用者にとっては限られた期間の中でいち早く最良のディールを見つけ、合併交渉にはいることが求められます。そのため2020年に資金調達を終えた大量のSPACが、現状優良案件との合併を競って探索しているのが現状です。

SPACはVCよりも魅力的なオプション

では、SPACはスタートアップ側からは、どのように見られているのでしょうか?シリーズD、シリーズEなどで資金調達を考えているスタートアップにとっては、SPACは魅力的な選択肢と捉えられているようです。

まず、1点目はSPAC合併を通じてIPOよりも早くExitの道が開ける可能性もあること。VCからのラウンドを重ねてIPOやM&Aを目指すよりも、SPAC合併は早期にExitを目指すスタートアップにとって、魅力的な選択肢となり得ます。

2点目はシリーズDレベルの資金調達よりも、調達できる金額が大きい可能性が高いこと。SPAC Insiderによると、2020年に上場したSPACの平均の調達規模は334百万ドルです。シリーズDで300億円以上調達できるスタートアップというのはそうそうありませんので、規模の大きな調達を目指しているスタートアップとしてはSPACはオプションになり得ます。

競争か共存か?

2021年に入り、1月末時点で60件のSPACが新規上場し、さらに17億ドルを調達しているということで、SPACの合併案件の探索競争はさらに激化しそうです。

今後、SPACの台頭は続くのでしょうか?SPACがどれだけ成果の残すかは、まだ冷静に見る必要がありそうです。260ものSPACのうち、2020年に合併を実現したのはたった17件です。2021年にはいり、83件が合併を果たしているのですが、これらの合併後のSPACが投資家に順調にリターンを提供できるかどうか、まだ判断できるのは先になりそうです。

SPAC同士で競争が高まると、質の悪い企業に手を出してしまったり、合併を成立させたいがために高いバリュエーションの提示や買収条件の緩和などが起こります。

このような中で現在と同様のリターンを出せるSPACは減ってきますし、大きな損失を被るケースも増えてくるだろうと思います。

リターンが下がった場合、SPACが現在と同じ水準で資金調達ができる可能性は保証できません。そうなると、一時的には劣勢を被っていたVCがまた市場で力を伸ばす可能性はあるでしょう。

また、上場をすると、四半期報告や内部統制といった上場企業に必要な膨大な管理コストの負担が待っています。そのような管理に時間とエネルギーをかけるより、ビジネスやプロダクトの開発に力を注いでいきたい、という会社は未公開会社としてVCの資金調達を選ぶと思います。

最終的には、SPACもVCもそれぞれ役割があり、競争しあいながらも共生していくものと思います。VCがSPACを設立するケースも多くみられていますので、レイターフォーカスのVCは、SPACとVCをうまく使い分けながら成長していくかもしれません。



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