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第一歩と第二缶

 とうとう、その日が来た。息子がつたい歩きに成功したのだ。ソファにつかまり立ちをして、横に2〜3歩。あの小さな足が、勇敢にも新しい世界へ踏み出した。そして僕は思う、これは一体何のための歩みなのだろうか?目的地はどこなのか。

 とにかく、息子は横に何か取りたいものがあったようだ。おそらく、そこには何か壮大な冒険の始まりがある。もしくは、単に遊びたいものがそこにあったのかもしれない。どちらにせよ、これは人生でとてつもなく重要な第一歩。

 でも、こうなると次に考えるのは、もしかしたらこのハイハイという可愛らしい瞬間が、もうすぐ終わってしまうのではないかということ。それは少しだけ寂しい。ハイハイは、まるで人生のジャズみたいなもの。即興であり、自由で、何が起こるかわからない。

 とはいえ、進化は止まらない。息子が自由に歩き出す日も、そう遠くはない。今度は何につかまり立ちをするのか、それともつかまらずに自由に歩くのか。どちらにしても、その歩みには新たな冒険が待っている。

 そして僕も、その冒険を横目で見ながら、もしかすると自分自身の「つたい歩き」を見つけるかもしれない。あるいは、新しいビールの銘柄を見つけるか、新しいレコードを聴くか。だって、僕たち大人も、いつでも何か新しい第一歩を踏み出すことができるのだから。

 何はともあれ、つたい歩きの成功を祝して、今夜は特別にビールを一本多く開けよう。息子にとっての小さな一歩が、僕にとっては大きな一歩。それが人生というものだろう。そして、その人生には常に新しい「第一歩」が用意されている。それが何であれ、踏み出す勇気が一番大事なのだ。それとビール。ビールも大事。特に今夜は。

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