【特別支援教育】愛着障がいのあるみいちゃん
みいちゃんは15歳。高等支援学校という、卒業したらすぐに就職することをめざす生徒たちが通う学校の1年生。軽度の知的障害があります。生まれてすぐに乳児院に預けられ、ずっと施設で育ってきました。
みいちゃんは、担任のあやこ先生が近づくと、「どっか行け!お前は嫌いじゃ!」と言って逃げていきます。先生になって2年目の、優しいあやこ先生は、そんな時いつも「待って!みいちゃん、待って!授業が始まるよ~」と言って、一生懸命に追いかけます。みいちゃんは、振り向いてアッカンベーをして、ますます逃げます。
副担任のかよこ先生が近づくと、みいちゃんはかよこ先生に駆け寄って、「かよこせんせー、一緒に遊ぼ!」と言って甘えます。あやこ先生は、「かよこ先生のところには甘えに行くのに、どうして私をこんなに嫌うんだろう。私の何がいけないんだろう。」と、げっそり。
困ったあやこ先生は、みいちゃんが暮らす施設の担当の先生に電話で相談してみました。
あやこ先生:みいちゃんが、私を嫌うんです。言うことを聞いてくれないどころか、私がいるだけで逃げてしまうんです。
施設の先生:え!私もです。私がみいちゃんの担当なんですが、他の先生には懐くのに、私には全然。暴言吐かれっぱなしです。全く同じです!
みいちゃんは、「自分にとって一番必要な人、自分を愛してほしい人」に対して、アッカンベーをして逃げたり、暴言を吐いたりしていたようです。自分がどれだけ悪い子でも好きでいてくれるのか、を試さずにはいられなかったのでした。
乳児院の時から施設にいると、「担当の人」がころころと変わっていきます。「お母さん」のような役割をしてくれる人が変わっていくのです。好きになって信頼しても、しばらくするといなくなってしまう、そういう経験を積み重ねてきたのでした。
ですから学校でも、一番愛して欲しいあやこ先生に対して、暴言を吐き、逃げるという行動を取ってしまっていたのでした。
あやこ先生はその後、みいちゃんがあっかんべーをして逃げていくと、「みいちゃん、大丈夫だよ。ここで待ってるからね。。ずっと待ってるからね。」と声をかけて待っていることにしました。危険がないように、他の先生が隠れて見守って。
すると、だんだんと帰ってくるまでの時間が短くなり、そのうち逃げずに、みんなといっしょに勉強できるようになっていきました。翌年になると、みいちゃんはあやこ先生に甘えに行くようになりました。みいちゃんはみいちゃんなりに、人との関わり方を身につけたのでしょう。卒業したら社会に出て生きていかなければならないみいちゃんです。甘えられる人や場所とできるだけたくさん繋がって、卒業してほしい。
さて、児童や生徒が先生の言うことを聞かないと、「先生の指導力がないからだ」、とか「甘すぎるからだ」などという人がいますが、それは大きな間違いです。「大切な人だからこそ言うことを聞かない」という場合も多々あります。
もし、「私には指導力がないのか」とか「甘やかしすぎなのか、もっと叱らなければいけないのか」などと悩んでいる先生がそばにいらっしゃったら、「違うよ。あなたは一番必要とされているんだよ」と教えてあげてくださいね!
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