【2021年】私が選ぶ映画トップ10
みなさまあけましておめでとうございます。
ぼーっと生きてたら2021年が締まりましたので、例年どおり映画館で観賞した映画をnoteに記載します。
2020年は映画界にとってビジネス構造を見直す転換期ともなりましたが、2021年はその延長みたいなものでしたね。新型コロナウイルスによるパンデミックは夏頃にピークを迎え、デルタ株に続きオミクロン株の出現はあれど年末には落ち着いてきました。
一方で2020年のような大規模な映画館の自粛などは発生せず、多くの人が再び映画館へと足を運び始める年となりました。MCUシリーズを2年ぶりに劇場で観ることができ、日本のアニメ映画は大好調。
興行収入面だと煉獄さんは400億の男となり、『劇場版 呪術廻戦0』は公開3日間の興収26億円という大記録を打ち立てる結果に。
おかげさまで私自身も前年に引き続き、映画産業をサポートするにあたって #週1映画館運動 を個人的に継続。月3~4回を意識して映画館へ足繁く通う日々を送りました。
そんな私が選ぶ、映画館で観た映画トップ10。
Filmarksで高く評価した順で紹介します。
※劇場公開された作品のみ。4K修復版や復刻版、再上映などは除く。
1. Evangelion: 3.0+1.0 Thrice Upon a Time / シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
新劇場版エヴァンゲリオンとは僕の青春であり、人生であり、いっしょに成長してきた存在。
1995年 - 3才のぼくは兄や母がリアタイでTV版エヴァを観ているのを記憶している。
1997年 - 5才のぼくは旧劇場版エヴァを映画館で観たのを記憶している。
2007年 - 中学生のぼくは初代 iPod nanoで「Beautiful World」を聴いていた。
2009年 - 高校生のぼくは「破」をはじめて劇場で観た。
2012年 - 大学生のぼくは「Q」を劇場で3回観た。
そして2021年、「序」から14年の月日が流れ、碇シンジくんと同じく14才だったぼくはいつのまにかアスカや冬原トウジ、相田ケンスケとおなじく28歳になっていました。
シンジくんを等身大で観ていたぼくは成長してしまい、今はほかの大人キャラとおなじ目線で14才のシンジくんを観ている。そんな自分の成長を振り返るいい機会でした。そしてシンジくんの成長もいっしょに見守れてよかったです。
できればリアルタイムで25年間追いかけて子供がいるアラフォーやアラフィフの意見を聞いてみたい。90年代に碇シンジだった人はいま碇ゲンドウ目線で観てるはず。TV版を含めて追いかけてきた人にとっては感無量な最期じゃないでしょうか。
どこからどうみても完璧な155分のエヴァンゲリオン。
圧倒的な演出やアクション。もちろん意味不明な展開もあった。
だけどもうごちゃごちゃ言うのはやめようよ。
どんな終わり方でも終わりは終わり。
それでいいじゃない。
こんな貴重な体験をさせてくれてありがとう、庵野秀明さん。
おなじ山口県出身として誇らしいですし、なによりも最後の演出は元県民にとって光栄なことでした。
ありがとう、そしてさようなら、すべてのエヴァンゲリオン。
2. Godzilla vs. Kong / ゴジラvsコング
1962年『キングコング対ゴジラ』以来、実に60年ぶりのケンカはまさに祭り。2014年から続く『モンスター・バース』シリーズの最終作は世界を東西それぞれを代表する2大怪獣の激突。
『シン・ゴジラ』のようなリアル映画もいいけどこういう頭おかしい怪獣バトルもよい。ただ、ずっと「動」ばかりなのでジェットコースターに乗ってる感覚が2時間くらい続く。
2019年以来の3D映画体験で、戦闘シーンはすごい。というかほとんどアニメーション映画。実写の制約がないのでカメラワークなどがとても面白くて挑戦的。もはやゲームのような世界観。IMAXの音響効果もあり、ジア目線でコングの鼓動や音をさぐるシーンは全身で振動を感じることができます。その振動は恐怖心を助長させ、巨大怪獣のでかさを実感させます。
前作のKOMはゴジラ純度100%なので、ゴジラファンにはたまらない作品。おかげで4回も劇場で観ました。今作もいい映画ではあるのだけど、コングのドラマが中心だったので、ゴジラファンからすると肩透かし感があるのは否めない。
3. Sound of Metal / サウンド・オブ・メタル -聞こえるということ-
聾唖という特殊な状況を”健常者”と呼ばれる観客に体験させてくれる、とても強力な映画。
自分が聴覚障害を負ってしまったとき、どうやって生きていくのか?
障害への理解を深めると同時に、自分の生き方やコミニュケーション方法も見つめ直すきっかけとなる。
”音”が重要なので、odessaサウンドシステムを搭載した映画館で鑑賞。
あえてクリアな音をつかわず、ガンガンに鳴る低音は振動として常に観客に浴びせられ、とっても不快。その不快感を体感することで、聾唖者がもつ耳鳴りなどの不快感を共有することができる。
今作はそういった”音”や”振動”を巧みに扱うことで、主人公がもつ不快感や不安感を効果的に観客へと伝達する。
この映画を東京パラリンピック2020が開催された2021年に鑑賞ができて本当によかった。
4. Girls und Panzer / ガールズ&パンツァー 最終章 第3話
美少女?アニメ?そういった次元では語ることができない、完成された群像アクション劇が『ガルパン』なのだ。
毎回予想を超える演出や白熱するバトルに興奮を抑えきれない。
立川の極上爆音上映で鑑賞をすると砲撃音に体が痺れ、恐怖心とワクワク感で自然と涙が頬をつたい落ちる。
冒頭は知波単学園との密林夜戦。
音楽を使わないことでジャングル戦特有の緊張感を漂わせながら「静」を全面に押し出し、ここぞというところで音楽や砲撃によるオーケストラが奏でられ、「動」をフルスロットルに。
まるで映画『1917』のような、美しくも恐ろしい照明弾に照らされるジャングルにて展開される壮絶なゲリラ戦は、「戦車道」ではなく「戦争」なのだ。他にもアンツィオ vs. 聖グロリアーナ女学院の市街戦も、各校の特徴が全面に出されていて面白い。
2DとCGの融合だからこそ描ける、ダイナミックな映像美。しかし、ただ泥臭い戦闘シーンだけで構成されるわけではない。
戦闘中にも関わらず、随所で挟まれる女子高生たちの平和的なやりとりや他校の生徒たちによるウィットに富んだ解説はストーリー展開に奇妙なバランスをもたらす。
笑いやほんわかあってこその『ガルパン』なのだ。
たったの48分とは思えないほどのボリュームに、感服しかない。
5. Shang-Chi And the Legend of the 10 Rings / シャン・チー/テン・リングスの伝説
思わずMCU作品だと忘れてしまうほど、完成度が高すぎる、単体映画としても大変面白い本格的な香港カンフー映画。
これぞ僕たちが観たかったシン・ドラゴンボールエボリューションではないだろうか。
チャン・イーモウ監督の『HERO』を彷彿とさせる色鮮やかな色彩、風の描写、ガチの香港カンフーアクション。豪華なアジア系の俳優陣が起用され、特にトニー・レオンの存在感が他を圧倒している。そしてアメリカ映画にありがちな、外国人なのに不自然に英語を喋る形ではなく、冒頭からネイティブな中国語ナレーションで始めるのはとても良い演出だった。
白人から観たコテコテの中国/東洋の描き方ではなく、文化的な描写もアジア圏に受け入れられるような工夫が施されており、ハリウッドでは珍しくアジア文化にリスペクトをもって作られている。
そう、これはまるでアジア版の『ブラック・パンサー』。
これまでハリウッドでは不遇の扱いを受けていたアジア系の作品群。
しかし、ここ数年で状況はガラリと変わってきた。
『クレイジー・リッチ!』でアジア系俳優たちに光があたり、『パラサイト 半地下の家族』で非英語の作品がハリウッドで通用することが証明され、そしてアメコミヒーロー映画という白人の牙城にて生み出された『シャン・チー』。
こういう形でアメリカや映画文化に新しい風が吹くのを目にすると、歴史の移り変わりを体感します。
6. I Fell in Love Like A Flower Bouquet / 花束みたいな恋をした
どんなに美しい花束も、いずれ儚く枯れてしまう。
もはや僕たち20代後半世代の総集編。
ここちよいモノローグによって繰り広げられる平和なひとときにニヤニヤしつつも、その日常の崩壊によって脳が破壊されます。
平和な日常は続かない。いつまでも学生のままじゃいられない。そんな現実を突きつけられます。
今作のキーワードは「共感」。
サブカルやポップカルチャーを詰め込んだ非常にエモい感じが滲みでて、まるで私たち20代の心や生活を見透かしたような描写や言葉づかい、そして音楽文化の取り入れ方に驚きを隠せません。
そして麦くんの社会人生活によって、自分の新卒時代が鮮明に呼び起こされました。当時は本当に辛く、キツく、大学時代にあれだけ楽しんでいたアニメ/映画/ゲームを受け付けずにただひたすら仕事に追われていた日々。
麦くんはそんな自分の投影でした。
恐らく似たような経験を持ったひとが日本に多いからこそ、この映画が名作と呼ばれるゆえんかと。
・白いジャックパーセルの靴
・2017年に劇場上映されたクー嶺街少年殺人事件
・ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
・ストレンジャーシングス
・上野のミイラ展
などなど・・・
共感ポイントありまくりで終始「俺もこんな感じだった!」と映画館のなかで叫ぶのをこらえるのが大変な作品でした。自分の周りでも「心が複雑骨折」「脳が破壊」「全治二週間」といった意見が散見され、多くの人たちが自分の人生と重ね合わせたんだなと実感。
邦画の恋愛映画を全く観ない自分でも、今作は傑作だと思います。
7. Eternals / エターナルズ
まるでゲーム『APEX Legends』のように個性豊かなキャラクターたちによる超壮大な群像劇。
女性、子供、ゲイ、聾唖、韓国人、インド人。
いままでの「ヒーロー=筋骨隆々な白人の男性」というイメージを覆す歴史的な一作。
焦点をイカリスではなく、ジェンマ・チャン演じるアジア系のセルシに当てたのがとてもよかった。知的で強いアジア人女性が、主人公としてここまで活躍するハリウッド映画は歴史上初めてなのでは?
本来だと一番注目を集めるはずのアンジェリーナ・ジョリーも一歩引いた脇役で他を輝かせつつ、自身の見せ場をしっかりと作っていたのも印象的。
他にもマ・ドンソクやクメイル・ナンジアニといったアジア俳優がとても面白く目立っていて、いままでのアベンジャーズ系MCUとは少し違う雰囲気を醸し出している。BTSの音楽も使われているしね。
お話自体はゲーム『シヴィライゼーション』を彷彿とさせる、人類史の発展を軸においた叙事詩。
「人類はいったいどこで間違えた?何千年も頑張って行き着く先がこれなのか?」
核兵器の抑止力によって不安定な均衡を保つ時代、人口爆発によるさまざまな社会問題が噴出している現代。そういった我々の現実世界とリンクしている部分がとてもリアルに描かれている。
アジア人監督であるクロエ・ジャオによる演出で、アクションではなく人間関係や心の描写に比重を置き、地球が持つ美しい情景とマッチさせることで、その壮大感をより強調させる。
そして今作のテーマである「忘却」というのはとてもしっくりくる。
エターナルズは何百万年も「忘れ続けてきた」結果、セナはギルガメッシュのことを「忘れない」と誓う。
一方でイカリスにとってセルシとの思い出が「忘れられない」ことで、それが足枷となってしまう。
マッカリは人類の叡智をドーモに集約することで、人類史を「忘れない」ようにしている。
忘れてないけない。しかし忘れてしまっても、心と魂は覚えている。
そう、全ては「愛」なんだよ。
8. Nomadland / ノマドランド
「生活」という全人類が共感するドラマ性を描き、我々が慣れてしまった21世紀の資本主義に毒された定住生活へ疑問を投げかける。
ドキュメンタリーとフィクションの境界線が曖昧な、ある意味で究極の映画。
本来「映画」というものは本物ではない事象を、あたかも本物のように見せるイリュージョンのようなもの。
けれどもこの作品に映る人、場所、景色はすべてホンモノ。
本当に旅をしているノマドたちが出演し、語ることで、彼/彼女たちの生活描写への説得力が格段に増す。
彼らや彼女たちの顔に刻まれているシワは本物であり、生きていることの証なのだから。
今作はアメリカの広大で壮美な景色と共に綴られるシンプルな話。音楽もピアノがメインでとてもシンプル。
大きな事件は起きないけど、「生活」という人にとっての乗り越えるべき壁を刻々と描く。その乗り越えかたは千差万別。生活と幸せに正解はない。
ある人は友達を作り、ある人は自然の世界に自分を置き、ある人は家族のもとへ帰り、ある人は孤独であることを選ぶ。
最終的に自分が幸せであれば、それでいいのだ。
9. No Time to Die / 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
2006年に『カジノ・ロワイヤル』からジェームズ・ボンド役を演じているクレイグの話も15年で幕を閉じる。
今作のヴィランは、思想や国家などは関係のない、純粋に人間が持つ闇を象徴するような人物を描いている。そして物語の中心となる兵器もまるで今のコロナ禍を象徴するようなモノに。
もうここまで来るともはや「国家のスパイ」という括りでは表せないジェームズ・ボンド。だからこそ、国や世代を超えた人気があるのかもしれません。
本作は007シリーズならではの国際色豊かな作品。イタリアから始まり、アメリカ、ジャマイカ、キューバ、ノルウェー、フランス、イギリス、日本、ロシア(ソ連)などの国や言語が入り乱れる。
キャリー・フクナガ監督の趣味なのか、ラストパートでは「和」の要素がかなり強調されている。といっても、あくまで西洋人からみた日本のような、少しズレた「和」なので日本人から見ると違和感を覚える。ただ、一連のシーンで使われた畳が西日暮里にある小さな畳店、森田畳店が提供しているのはちょっぴり面白い。ボンドとサフィンはずっと正座してたけど、痛くないのかな・・・
『カジノ・ロワイヤル』から『スペクター』まで。前4作の総括をするかのように、旧キャラクターたちが出現。もちろん、ジュディ・デンチ演じるMもちょこっと出演。
個人的に今作で一番魅力的キャラクターは圧倒的にアナ・デ・アルマス演じるパロマ。急に出てきて急にいなくなるのに、ものすごくカッコいいし可愛いしエロい。とても重いストーリーの中で、Qに並ぶ唯一の癒し。
新しい007であるラシャーナ・リンチ演じるノーミも違和感なく溶け込んでいる。恐らくポリコレ対策用の意味合いもある女性+非白人というキャスティングなのだろうが、全くもって自然。こういった魅力的な新規キャラクターを開発できるパワーが、長期シリーズを継続させる秘密なのかも。
ウィットに富んだイギリスっぽい皮肉混じりのセリフ、ハンス・ジマーの音楽、ビリー・アイリッシュの主題歌、魅力的なランドローバーとアストンマーチン。実に筆舌に尽くしがたい、要素盛り盛りの2時間43分。けれどもそこまで長く感じさせないほどテンポがよく、物語に入り込ませる。
ダニエル・クレイグがショーン・コネリー、ロジャー・ムーア、ピアース・ブロスナンを超えたように、次のジェームズ・ボンドはクレイグを超せるのか?007は終わらない。
10. Free Guy / フリー・ガイ
オンラインゲームやオープンワールドゲームが普及し、プログラミングが身近となった昨今、NPCという単語や概念が世間に認知されているからこそ作れる作品。
笑いあり、シリアスあり、アクションあり。
「恐れずに外の世界へ踏み出してみよう」というテーマがしっかりと描写されているので、読後感がとてもよく、勇気づけられる作品です。
ゲームやサブカルネタがとことん盛り込まれており、クスッと笑えるような小ネタが散見されます。特に『GTA』や『シムシティ』のようなNPCをいじめる話や、『フォートナイト』の”ラマ”や”ツルハシ”、『APEX』の”プレデター”といったいま一番盛り上がっているオンライン対戦ゲームのネタがあったのは個人的に嬉しいです。そして20世紀フォックスがディズニーに買収されたからこそ出せる『スターウォーズ』『マーベル』ネタも。とにかくエンタメカルチャーを活用した笑いがたくさん。
一方で社会問題を皮肉ったネタも随所に。例えばネカマ問題や”こどおじ”こと「子供部屋おじさん」の描写。さらには大人向けバイオレンスゲームなのにも関わらず、実際に遊んでいるのは小学生の男女。相手に遠慮なく誹謗中傷ワードをぶつけているのはとてもリアルだなと思いました。
上記で触れたAPEX等も相手をコロスFPSにも関わらず、ネットリテラシーが低い子供たちが主なゲーマーとなっており、いろいろな事件にも発展している。本作でも描写されていたTwitchなどの実況配信者たちは今や社会に影響を与えるインフルエンサーとなっており、自分達の現実世界とのリンクを実感しました。だからこそ自我を持ち始めたガイの存在も、不思議と納得ができるのです。
Guyに対するアンチキャラがDudeなのも若者カルチャーを描いていておもろい。
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