国連の呼びかけに応えたので、クリエイティブプロセスを綴ってみた
3月末、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関するクリエイティブアイデアを募集する、国連のブリーフがクリエイター界隈で話題になりました。
最初は応募を考えていなかったのですが、仕事も激減したタイミングでしたので、せっかくのチャンス。
一転して応募を決めたのでした。
しかし、応募締め切りがあと24時間ちょっとしかないことに気づく。
プレイ中の『あつまれ どうぶつの森』を放置し、大慌てで準備を開始。
どうやってクリエイティブのアウトプットまでこぎ着けたのか、プロセスをまとめてみました。
❶与件整理
今回の課題は、国連がコロナウイルス対策を促進すべく、クリエイティブ産業にコンテンツ作成の協力を呼びかけたのが始まりです。
コンテンツ作成の協力が求められるのは6つのキーメッセージ。
・個人の衛生管理(Personal Hygiene)
・身体的距離の確保(Physical Distancing)
・症状の理解(Know the symptoms)
・やさしさの伝染(Kindness contagion)
・迷信への対抗(Myth busting)
・さらなる行動、寄付を(Do more, donate)
つまりこれらを活用し、世界中の人々をターゲットにしたクリエイティブを制作することが目標。
アウトプット方法は各々に任せる感じなので、自由な発想でチャレンジしてみたいと思います。
❷クリエイティブの種を探す(リサーチ)
与件の整理が完了し、目指すべきゴールが見えたところでリサーチを開始します。
目的は二つ:
1. アイデアを刺激する事例を見つける
2. クリエイティブが重複しないようにする
コロナ禍が始まって数ヵ月が経過し、企業・個人によるコロナ関連の作品が、世に出回っています。
中には「これぞクリエイティブ!」と呼ばれるような作品もあり、アイデアの参考になりました。
1. Audi
マクドナルドを始めとした多くの大手企業が実施した施策。
自社ロゴをアレンジし、ソーシャルディスタンスを啓蒙するシンプル&パワフルなアイデア。
2. 最後の晩餐
リモートワークが急速に普及したことで、zoom飲みなどの文化が世界的に発展。
そのzoom飲みと名画「最後の晩餐」を合体し、イースターに合わせた、ウィットに富んだクスッと笑える事例。
3. インドアスキー
外出禁止令が敷かれている欧米。
アウトドアライフを満喫したいスキーヤーが、インドアでスキーを楽しむ方法を発明。
4. マッチ × ソーシャルディスタンス
マッチを使って感染の恐ろしさ、ソーシャルディスタンスの効果をたったの12秒で伝える、大変素晴らしい動画。
5. 外出自粛アニメーション
日本のクリエイターが外出自粛グラフからアイデアを得た動画。
自粛の意義を視覚的に表したわかりやすい事例です。
❸クリエイティブプランニング(コンセプト決め)
多数のクリエイティブを分析し、必要な要素を洗い出しました。
やはり世界中の人がターゲットなので、言語を除外した視覚的なわかりやすさというのは必須。
そこに目を引くアート性・ハッとさせるようなアイデアがあれば一応の目的はクリアできると思います。
しかし、日本から参加する僕が同じコンセプトで挑むことに意味はあるのでしょうか?
ということで、もう一つの重要な要素である文化的要素を足したいと思います。
ブリーフにもa cultural quirkを含めたほうがいいということも記載あるので、日本文化特有の要素は必須だと思いました。
では日本が持つ独自文化でソーシャルディスタンスなどのメッセージを上手く伝えられる方法はあるのか?
浮世絵、侍、寿司、東京・・・リサーチをしてみましたがどれも決定打に欠けます。
例えば「風神雷神図屏風」を使ったソーシャルディスタンス、というアイデアは:
1. 風神雷神を世界の人が知らない
2. 似たようなアイデアが西洋絵画で既に実施されている
などの理由により没。
めげずにリサーチをした結果、行きついたのが・・・
ニンジャ
❹アウトプット方法の選定
ニンジャはサムライと並んで日本を象徴するアイコン。
NARUTO効果もあり、特に欧米での人気は非常に高いはず。
そして何よりもコロナ対策と相性が抜群。
・常時顔を隠している(マスク着用)
・隠密行動で距離を取る(ソーシャルディスタンス)
・家の中で忍んでいる(Stay Home)
・忍術を出す際に印を結ぶ(手洗い方法にそっくり)
ニンジャコンセプトでアイデアを練ってみようと思い、次はアウトプット方法を考えてみました。
僕の得意分野は映像。実写、アニメーション、ストップモーションなど様々な方法が浮かびました。
だが、ここで2つの大きな問題が・・・
一つは外での撮影ができないこと。
外出自粛中なので、僕の主戦場である実写撮影ができません。
機材もないので手元にiphoneしかなく、クオリティ担保に問題が生じます。
二つ目は圧倒的時間不足。
この時点で既に提出期限24時間を切っており、ここからコンセプトの深堀を行ってからの映像制作が大変困難となりました。
(やはりどうぶつの森を遊び過ぎたのが原因か・・・)
なので今回は仕方なく、絵で勝負することにしました。
ちなみに僕は絵が超絶ヘタです。
まとめると、アウトプットは下記を題材に行うことに決定。
❺クリエイティブ制作
いよいよ具現化の作業。
まずはニンジャの深堀を行い、いかに今回のメッセージと合致しているかのファクトチェックを開始。
▼構成
今回はニンジャを通じて様々なコロナ対策を伝えたいので、電車の中にあるマナー広告のような一枚のスライドに様々な要素を詰め込み、啓蒙するような構成をイメージしました。
なのでワンメッセージよりかは、ワンコンセプト(この場合はニンジャ)で統一性を保ち、クリエイティブに落とし込みたいと思います。
▼絵柄
次は絵柄の選定。
時間を短縮し、自分でも簡単に描けるようにシンプルなデザインを目指す。
ターゲット対象は世界中の子供をイメージし、できるだけマンガちっくにしたいと思いました。
ですので万人に好かれ、洗練された藤子・F・不二雄先生の絵柄を参考。
そしてノリタケさんのようなハッキリとした、シンプルな線も取り入れることで力強い絵を構築。
▼描く作業
映像制作で培ったデザイン力なども駆使し、一気に制作を進めます。
絵を描く際に使ったツールはiPadのProCreate。しかも初使用。
絵心のない自分が初めてのツールで手探りのまま進め、徹夜で作業。
20時間以上、机と向き合いました。
そして最終的に出来上がったのが下記のクリエイティブです。
❻提出
ふらふらしながら細部もチェックし、サイトにアップ。
これで僕の怒涛の制作は終わりました。
正直、作っている間は「なんで一銭にもならないのにこんなキツイことやってるんだ?」という気持ちでいっぱいでした。
しかし、今回の目的はあくまでクリエイティブを通じてコロナ対策を世界に広めること。
キツかったですが目的をブラさずに、最後までやってみてよかったなと思います。
国連による選定発表は4月30日とのことですが、このクリエイティブが一人でも多くの方に届き、コロナ対策に役立って頂ければクリエイター冥利に尽きます。
これからも、クリエイティブで世界をより良くしていきたいですね。
あと自分は絵ではなく、映像に向いているんだなと改めて思いました。
呂
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