カープダイアリー第8375話「『アレ』から『優勝』甲子園では胴上げ、阪神との”再戦”目指す神宮のカープ打線は…」(2023年9月14日)

18年ぶりのリーグ優勝へ、大阪・ミナミの道頓堀川に架かる戎橋一帯は午後8時半を回って虎ファンら群衆によって埋め尽くされた。午後6時プレーボールの甲子園は阪神リードの九回、巨人が1点を返して4対3になった。
 
同じころ神宮球場では2対5、3点を追いかけるカープ打線の敵地ラストゲーム逆転勝利への反撃が始まろうとしていた。6試合連続1得点負けの呪縛から自分たちを解き放つために、だ。
 
ヤクルト三番手の石山から代打秋山が四球を選ぶと、3試合連続で四番に入り二回には先制11号ソロをかっ飛ばした堂林が右前打。打席には五番小園…
 
先にゲーム終了の甲子園では岡田監督が6度宙を舞った。人心掌握術と戦略、戦術に長けた指揮官の下でひとつにまとまって「アレ」を成就したことになる。
 
それはあっという間の出来事だったようにも思えてくる。10連勝した7月27日、最大9差だった阪神を抜いて新井カープは首位に浮上した。
 
しかし翌28日からの甲子園では野村祐輔、森下、大瀬良の右腕3人を立て、結果は2-7、2-2、2-4と1勝もできず。

第1戦では三回、森下翔太に2点打されて逆転された。第3戦では同点の六回に2ランを許した。森下翔太がノイジーに代って三番に抜擢されたのはこの3連戦の3日前のことだった。

8月5日時点では首位までまだ1・5差だったが、8・6ピースナイターを境に1分けを挟んで6連敗と急ブレーキがかかり、その1カ月後、負ければ終わりの9月8日からの甲子園でも床田、森下、九里を投入しながら1-4、1-5、1-5のスコアで圧倒され、ゲーム差11で事実上の終戦を迎えた。

その初戦の初回、またしても森下翔太にソロホームランを許したのである。
 
9月を11戦全勝で逃げ切った阪神は見事というしかない。しかしみるみる優勝マジックを減らした責任の一端は、追いかける側にある。
 
故障者続出、投手陣の息切れ。戦力的な問題はもちろん今後の課題だ。それにしても残念なのはマツダスタジアムでは強いのに、敵地では勝てないこと。
 
けっきょく7月末以降、甲子園では6戦5敗1分け。今回の神宮でも5戦全敗で、V免が決まるというこの日を迎えていた。この極端過ぎる傾向には、どんな意味があるのだろうか?
 
神宮球場のレフト、三塁側スタンドを毎試合のように埋めてくれるカープファンに向けて八回の反撃は小園の左前適時打でまず1点。救援登板した木澤からマット空振り三振のあとライアンが四球を選び一死満塁として5人目の山本から曾澤が押し出し四球を選び4対5とした。
 
そして代打磯村が中前に弾き前してとうとう逆転に成功した。ただ、その戦いを俯瞰すれば何もかも遅すぎた、という落ちになる。
 
試合後、スタンドのファンに横一列で頭を下げた新井監督らにはいつものようにスタンドから温かい拍手やねぎらいの言葉が送られた。
 
開幕から132試合を全力で駆け抜け69勝59敗4分け、貯金10。この数字は、リーグ3連覇以降、一度も貯金できなかった4シーズンと比べればはるかにいい。
 
マラソンに例えられるリーグ戦で息切れしたことから様々なことを学び、そこから一発勝負に近いプレーオフでは何をどう表現していくか?
 
試合後のヒーローインタビューを受けた磯村は、2月の日南キャンプで左足を痛めて離脱したため開幕一軍メンバーにも入っていない。坂倉、曾澤の二枚看板の存在は大きく、一軍ベンチに入っていても裏方的な仕事までこなす毎日だ。
 
それでも出番が来れば最高のパフォーマンスを発揮する。レギュラーシーズン残り11試合でも、磯村のようにみんなでできることはすべてチャレンジする。
 
新井監督もそういう姿勢を選手全員に説いてきた。確かにリーグ優勝はならなかったが、まだ1年目の戦いは続いていく。

 
磯村のヒーローインタビュー
打席に入る前に、来た球は全部打とうと思って、ほんと気持ちだけで打ちました。ショートゴロかなと思ったんですけど、抜けてくれて良かったです。
 
ほんとにピッチャー陣が…僕は島内と良吏だったんですけど、ほんとに引っ張ってくれました、ほんとにふたりに感謝しています。
 
ちょっと連敗していましたけど、こんなにカープファンに集まっていただいて応援していただいて、ほんとに力になりました。ありがとうございます。


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