カープダイアリー第8292話「古巣西武相手にもフルイニング出場続けるバットマン、タイトル奪取へ越えなければいけない相手はすぐそばに…」(2023年6月17日)
広島の青い空、白い雲を見上げ、相手ベンチに感謝しながら古巣と戦う。見せ場はいきなりやってきた。マウンドには3年連続で開幕投手を務めた高橋光成、推定年俸1億8000万円。所沢で5年間一緒だった秋山の方が9歳年上だが年俸では3000万円負けている。
ワンアウト二塁、ファウル2つでボールカウント1-2。4球目はおあつらえ向きの外寄り真っすぐで、強く左へ“引っ張った”一撃はまさにレフト線ギリギリ、フェアゾーンに弾む先制タイムリーになった。
「(二番抜擢の)羽月がバントを決めてくれたので、ダブルプレーを怖がらずに打つことができました」
二塁ベース上では静かに満員のスタンドの歓声を味わった。両軍ベンチに向けて胸を張れる打席になった。
どんな気持ちで、どんな顔で、かつての仲間たちと言葉を交わそうか。ずっと頭の中ではシミュレーションを繰り返してきた。9年間、自分を大きく成長させてくれた土壌にはリスペクトし続けている。2015年に216安打を放ち、この年も含めてラスト5シーズンはフルイニング出場。海の向こうへ挑もうという気概が醸成された。
メジャーでの1シーズン半を挟み、昨年6月30日、新たに「C」のマークをつけマツダスタジアムで入団会見。交流戦には間に合わなかったからこの3連戦を前々から意識してきた。
この日のテレビ中継担当はTSSテレビ新広島で緒方孝市元監督と山内泰幸さんの両OB解説だった。
緒方元監督は中継の中で秋山がファウル2球を打った時すぐ言った。
「逆方向を意識したような入りをしていますね」
その通りだ。
試合前練習のグラウンドに山内さんの姿はあったが緒方元監督は“現場”に降りてこなかった。よほど来づらい理由があるのか?おそらく練習は見ていないはずだ。
この日のフリー打撃では左打者がいずれも逆方向への打球を強く意識していた。高橋光成の真っ直ぐとフォーク、縦スラをどのポイントで捉えるか?蓋を開けるとズラリ左打者が並んでいた。
野間
羽月
秋山
龍馬
坂倉
田中広輔
林
矢野
森下
先発の森下は5月のテスト登板から安定した投球が続いて6試合連続でクオリティスタートに成功した。まずは3点、さらにもう1、2点で勝てる可能性は高くなる。勝てばボロカスに言われてきた?交流戦勝ち越し決定!秋山はチームの思いを胸に1打席目から全集中した。
三回、先頭の坂倉はセンターフェン直二塁打。田中広輔は進塁打狙いでバットのヘッドを早く返したら一塁線を抜ける二塁打になった。一死からは矢野のボールカウント2-2からのスクイズ失敗が相手のバッテリーミスを呼び込み2点目が転がり込んできた。さらに野間の左前適時打でこの回3点目。五回には二番手の青山から2点を加えて森下の背中を後押しした。
森下は6回7安打2失点で3勝目。七回の森浦は2失点で島内の救援を仰いだが、八回の栗林、九回の矢崎は3人斬り。6対4で西武に連勝、逆に相手は7連敗…
ところで前日のNHKテレビ中継の中では辻発彦さんが北別府学さんの思い出話を優しく語るとともに、フルイング出場ラスト3シーズンを指揮官として見守ってきた秋山についてもソフトに“解説”していた。
「彼は自分にも(他の)選手にも厳しいけど、あの通りいじられキャラでね…」
1500安打をクリアした平成・令和を代表するバットマンの人となりは辻さんこそが知り尽くしているだろう。
そしてその厳しさを考えた場合、今の西武には課題が山積みされている。その代表例が山川の傷害事件であり、さらに球団の対応の甘さであり、そういう風土が「L」のマークには見え隠れしているということでもあり…
秋山がNPBに復帰する際、マスメディアは「古巣復帰か?」「ソフトバンクか?」とこぞって書き立てたが、秋山の頭の中には最初から「L」の文字はなかったはずだ。
自らを厳しく律して野球人としての限りある日々をどう生きるか?
自ら首脳陣に頭を下げてフルイニング出場を続ける中、約1カ月前には4割近くあった打率はこの日の5の1で・319まで落ちた。
キャンプの時と同じような多種のティ打撃で体のキレを維持しようとしたり、あの手この手でトライしてみるものの、そう簡単にはいきそうもない。
それでも首脳陣はその姿を「若手の手本」と評価して、三番固定の方針を変えないでいる。
143試合完走で、打撃タイトル奪取!打率はリーグ4位ながら79安打はリーグトップ。1試合で1・25安打計算、目指すは180安打!
セ・リーグ最多安打のタイトルで180をクリアしたのは、広島に“誘ってくれた”菊池の2016年181安打が最後…
幸い交流戦明けには4日間の休養日がある。同一リーグ戦再開と同時にまた安打量産体制に入れるだろうか…
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