カープダイアリー第8285話「満員御礼の幕張、紅白応援合戦は強烈なエンディングへ…」(2023年6月10日)

燃え上がれ 燃え上がれ 勝利をつかみとれ 

九回、幕張の曇り空へと広がるマリンサポの大声援の中、栗林が投じた13球目がセンター前に弾き返された。

打った藤岡がウォーターシャワーの中で跳ね、打たれた栗林は松山に肩を抱かれながらベンチの仲間たちに迎えられた。

5試合連続クオリティスタート成功中だった森下でこの試合を落としたことがこのあとどういう流れになっていくのか。ソフトバンク、DeNAともに敗れたため、勝っていれば交流戦単独首位となる記念すべき一日になるはずだったのに…

二回、六番角中のソロで先制された森下は三回、曾澤のソロで同点にしてもらった直後に先頭打者への四球に二盗を絡められ三番中村奨吾に同点打を許した。

風の影響などでカーブやチェンジアップが思うように制球できず、結果真っすぐを狙われた。

五回、今度はロッテ先発の本前(今季初登板)が連続四球を出した。それに乗じて2対2同点に追いついたのも束の間、森下は六回にもヒット→二盗→暴投→四球→二盗→犠飛という、およそらしくない流れで“ミスミス”また勝ち越し点を奪われた。

七回、ロッテベンチが送り込んできたのは開幕から21試合無失点の西村。だが、今の打線は決して諦めない。

一死から曾澤の代打坂倉が左前打で出ると、菊池が右中間に弾き返して一、三塁。龍馬が中前して3対3同点とし、龍馬は秋山の初球で二盗。2球目を叩いた秋山の打球が風の影響を受けながらショートとレフトの間に落ちて一気に勝ち越しに成功した。

大型連休以来の大入り入場者数2万8563人のスタンドは三塁・レフト側が赤一色に染まりビジター側に追い風が吹く…

いや、野球の神様は平等だ。

八回のターリーは二死二塁から同点二塁打を許したが、ストレートが続く中で4球目を打った角中はこう言った。

「その前の守備で、記録的にはヒットになっていますけど完全にやらかしちゃったんで、何とか1本という気持ちでいきました」

続いてZOZOマリンスタジアムのマウンドに上がった栗林。そのユニホームが風に吹かれることはなかった。野球の神様は、前夜に続く九回の熱い攻防で、どちらかのチームに肩入れするようなことはしない。

時計の針は午後5時12分を指していた。互いに点を取り合いながら、よく守り、よく走り、そしてよく粘ってきた。

例えば同じ九回を投げた益田は「こういう展開はランナーが出るもんだと思って、ピンチになっても動揺せず、しっかり投げることができたと思います」と振り返った。一死二塁まで攻めながら、松山空振り三振、野間二ゴロに終わった。

ただしこの日が669試合目となった益田のような境地に、栗林が至るにはまだ長い年月が必要だ。先頭の佐藤都志也を歩かせた時点でほぼサヨナラ負けのシナリオが確定したと考えていい。

坂倉の構えたミットとはぜんぜん違う方向へとカーブも真っ直ぐもフォークもブレていた。続く岡が2度バントをファウルにしてくれたにも関わらず、最後に左前打されたのも落ちないフォークだった。

送りバントで一死二、三塁とされ打席に迎えるは藤岡。1球目の150キロは内角を狙ったのに大きく外へズレた。2球目の落ちないフォークは引っ張られて大きなファウルになった。

そこでバッテリーが頼ったのがカーブだった。選択としてそれが良かったのか、どうだったのか?

見事に紅白に分かれた応援合戦のエンディング。前夜とは真逆になり、幕張の白波が赤いコイの群れを飲み込んだ。自身、今季サヨナラ負け3度目という激流の中から栗林はどうやって抜け出すのだろうか…

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