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テレビレビュー『【推しの子】(シーズン1)』(2023)芸能界の裏側を見せるサスペンス

※2500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。


「推し」の「子」に転生

原作は2020年から
『週刊ヤングジャンプ』で
連載されている作品です。

(ウェブコミック配信サイト
 『少年ジャンプ+』でも
 1週遅れで配信)

タイトルの通り、
主人公が「推し」の「子」

つまり自分が愛してやまない
アイドルの子どもとして
生まれ変わる話になっています。

まずは、この設定が
とてもおもしろいですね。

主人公は生まれ変わっても、
前世の記憶を持ったまま、
「推し」のアイドルを
そばで見守ることができます。

序盤はほのぼのコメディー

当初、この設定を聞いた時、
私の中で連想されたのは、
推しの子として
生まれ変わった主人公が、

自分の正体がバレないように、
推しのアイドルを見守っていく
コメディー色の強い作品でした。

たしかに、序盤には
そんな部分もあります。

赤ちゃんになった主人公が
母親のライブ会場で、
ペンライトを手に
振り付けを完璧にこなすなど、

笑える場面がいろいろあります。

しかし、これがとんでもなく、
いい意味で予想を裏切られる
作品になっていました。

ここからは、
1話目のストーリーを
紹介していきましょう。

ちなみに、テレビアニメ版の
第1話は連続テレビアニメにしては
珍しい「90分スペシャル」として
放送されました。

観る前は「なぜ、こんなに長いんだ」
と不思議に思いましたが、

1話目を観終わると、
その長さに意味があるとわかり、
納得できました。

ーこの先はネタバレがありますー

(※ここまでの紹介を読んで
 「観てみたい」と思った方は
 この先を知らずに
 作品を観た方が楽しめます)

芸能界の裏側を見せるサスペンス

主人公・ゴローは産婦人科医で、
12歳で亡くなった患者(さりな)の
影響でアイドルオタクに
なっていました。

ゴローとさりなが、
愛してやまなかったのが、
アイドルグループ「B小町」で
センターを務める星野アイです。

このアイが、ゴローのもとに
患者としてやってきます。

マネージャーとおぼしき男性に
連れられてきた彼女は、
妊娠していました。

10代のアイドルが
妊娠しているなんて、
世間に知られては、

彼女の芸能活動に支障が
出てしまいます。

アイは出産後も
アイドル活動を続けることを
希望しており、

ゴローは彼女の主治医として、
「内密出産」に協力することに
なりました。

アイもすぐに彼を信頼し、
「出産の時には、
 絶対に先生でなければダメ」
と言うほどです。

そして、迎えた出産日、
深夜にアイから着信があり、
病院へと向かったゴローでしたが、

目の前に突然現れた男によって、
ゴローは殺害されてしまいます。

「アイのもとへ行かなければ!」
という強い使命感を持ったまま
ゴローの意識は遠のいていきました。

意識を失ったゴローが目を覚ますと、
目の前には、なぜかアイがいました。

アイに抱き上げられ、
ゴローはアイの子どもに
生まれ変わったことを知ります。

アイが生んだのは、双子でした。

実は両方とも
前世ではアイのファンだった
人間の生まれ変わりで、
二人とも前世の記憶が残っています。

男の子はゴロー、
女の子はさりなの
生まれ変わりなのです。

しかし、この双子は、
お互いの前世のことを知りません。

ここを共有していないのが、
この物語のおもしろいところです。

なんせ、二人とも前世の記憶が
残っているので、
赤ちゃんのうちから言葉を話し、
アイの出演するテレビにも夢中です。

1話はこんなとんでもない設定を
しっかり視聴者に理解させ、

ここからほのぼのとした
エピソードが続くのだろう
と思った1話の終盤で、

アイは元カレのもとに連絡をし、
(双子の父親にあたる)
新しく引っ越した住所を
知らせます。

そこにやってきたのが、
なぜか、ゴローを殺害した
青年だったのです。

彼はアイのストーカーでした。

元カレがやってきたと思い、
無防備に扉を開けた、
アイの懐にストーカーは、
ナイフを突き刺しました。

犯人はその場から逃走、
アイは出血多量で、
その場に倒れ込みます。

少し大きくなった
アイの子どもたちは、
まだ小学生でした。

アイのもとに
子どもたちが駆け寄ると、

アイは母親として、
二人の成長を見届けることが
できないのが残念だと、
無念の意を告げます。

そして、最期に残したのが、

「アクア(ゴロー)は
 将来、俳優になるのかな」
「ルビー(さりな)は
 アイドルかな」
という言葉でした。

逃走した犯人は自殺し、
ストーカーによる殺人として、
世間を震撼させました。

やがて、年月が過ぎ、
二人はほぼその通りの
道に進むことになります。

アクアは、子ども時代に
携わった映像関係の仕事に進み、
ルビーは、アイドルデビューを
目指しています。

アクアが芸能界に進んだのは、
母親の死に関係がありました。

というのも、アイを刺した
ストーカーが新居の住所を
知っていたことに
疑問を感じたからです。

その住所を知っていたのは、
事務所の人間のほかに、
アイが連絡をとった
元カレしかいないのです。

アクアは、この人物を
芸能関係者であるとにらみ、
自らも芸能界に
進むことにしました。

つまり、この作品は、
パッと見では、

アイドルとファンの
生まれ変わりの関係を描いた
コメディーに見えますが、

その本筋にあるのは、
母親の死の真相を探る
サスペンスなのです。

序盤の突拍子もない設定から、
このように急展開を迎え、
はじめて物語の本筋が
見えてきます。

そのために、本作は
1話目が1時間以上の長さに
なっているんですね。
(原作の1巻分)

2話目以降では、
アクアがそれとなく芸能活動を
続けながら、

少しずつ母親の死の真相を
探っていく物語と

ルビーがアイドルを目指して
奮闘する物語が同時進行で
展開されていきます。

それぞれの物語の
おもしろさは異なりますが、
自然と一体感があり、

芸能界の裏側を見せる
「内幕もの」としての
おもしろさもあるんですよね。

こんなにおもしろい作品だとは、
実際に観てみるまでは、
わかりませんでした。

昨年の6月にシーズン1が終了し、
現在はシーズン2の放送が
控えているようです。

先がとても気になるストーリーです。


【作品情報】
2023年放送(全11話)
原作:赤坂アカ、横槍メンゴ
監督:平牧大輔
脚本:田中仁
声の出演:高橋李依
     大塚剛央
     伊駒ゆりえ
放送局:TOKYO MXほか
配信:ABEMA、dアニメストア、
   niconico ほか

【原作】

【平牧大輔監督の作品】


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