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音楽レビュー『Anthem』Ralph Towner('01)クラシックと民族音楽をミックスした深い味わい

ジャケット写真のような
曇り空がよく似合う

またしても、
ECM の音源を紹介します。

ECM レコード
'69年にドイツで設立された
ジャズのレーベル。
クラシックや現代音楽の作品も
リリースされている。

'70年代から ECM で
作品を発表し続けているギタリスト、
ラルフ・タウナーが
'01年に発表した作品です。

ジャズでは珍しい
クラシックギターの演奏者で、

'70年代から活動するグループ、
オレゴンでは民族音楽的な演奏も
披露しています。

まずは、このジャケットの
素晴らしさをとくと
堪能してほしいですね。

雨粒が付いた窓から
のぞく車からの風景が見えます。

本盤では、このジャケットの雰囲気を
そのまま音にしたような世界が
味わえるんですよね。

きめ細やかなサウンド、
音の粒子を感じる

もともと、私はギターの音が
それほど好きではなく、

このアルバムを聴きはじめた時も
最初は「苦手かな」
という感じもしました。

ところが何度も聴く内に、
この静かで澄んだ音が
耳に馴染んできて、
すっかりハマってしまったんです。

そう感じられたのも、
楽曲や演奏の素晴らしさだけでなく、
ECM ならではの音質のせいも
あったかもしれません。

このアルバムに限らず、
ECM の作品というのは、
独特な静けさが
感じられるんですよね。

本盤も音の作りがきめ細かく、
音の粒子が感じられる
端正な音作りがされています。

クラシックと民族音楽を
ミックスした深い味わい

クラシックギターの
ソロアルバムですから、
聴く前から地味な印象を
抱かせるかもしれません。

しかし、ラルフ・タウナーの演奏は、
12弦ギターを使っているせいも
あるのかもしれませんが、
かなり音が豊かな印象です。

本盤に収録された曲を聴くと、
クラシックの香りがする
と思いました。

彼の経歴を調べてみると、
ビル・エヴァンスの影響が強いそうで、
若い頃はピアニストを
目指していたようです。

(ビル・エヴァンスも
 ドビュッシーやラヴェルといった
 クラシック音楽に影響を受けている)

また、彼のギターには、
クラシックだけでなく、
民族音楽からの影響も感じられます。

これは若い頃から
活動しているグループ、
オレゴンでの経験が
活かされたものでしょうか。

本盤の中で、
特に私が気に入っているのは、
⑤「Simone」です。

音の伸びが素晴らしく、
「ギターって、
 こんな音色も出せるんだ」
という新たな発見がありました。


【作品情報】
リリース:2001年
アーティスト:ラルフ・タウナー
レーベル:ECM

【アーティストについて】
アメリカのギタリスト。
(ピアノ、シンセサイザー、
 パーカッション、トランペット
 なども演奏するマルチプレイヤー)
’60年代に活動を開始。
'72年、『Music of Another
Present Era』でオレゴンとしてデビュー。

【同じアーティストの作品】

『A Closer View』(1998)
※ゲイリー・ピーコックとのデュオ
『Time Line』(2006)
『At First Light』(2023)

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