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テレビレビュー『だが、情熱はある』(2023)たりないふたりが出会うまで


たりないふたりが出会うまで

南海キャンディーズの山里亮太、
オードリーの若林正恭まさやす
二人のお笑い芸人の半生を
モチーフにしたドラマです。

なぜ、この二人が
モチーフとなったのかというと、
それは二人が「たりないふたり」
というユニットを組んでいたからですね。

『たりないふたり』は、
山里、若林が漫才をするイベント
としてスタートし、

2012年からはテレビ番組
としても放送されました。

そして、2021年、
「たりないふたり」は
最後の舞台を持って、
解散となります。

山里の苦悩の日々

南海キャンディーズは、
2003年にコンビを結成し、
2004年の M-1グランプリに出場、

無名の新人だったにもかかわらず、
決勝戦に進出し、準優勝に輝きました。

しかし、そこに至るまでの道のりは、
決して平坦なものではなかったんです。

山里にとって、南海キャンディーズは、
はじめてのコンビではなく、
いくつかのコンビ、ピンでの活動を
経てから辿り着いたものでした。

笑いに対してストイックである
山里は相方に対して厳しく、
ネタがウケないと、
どうしても相方を責めてしまいます。

そんなこともあって、
コンビがなかなか長続きせず、
ピン芸人の道を歩んでいました。

周りの同期がどんどん売れていく中、
山里の心は荒んでいき、
ネタもどんどんおかしな方向に
なっていくんですね。

そんな時に相方候補として、
見つけたのが現在の相方、
しずちゃんでした。

当時、しずちゃんは、
別のコンビを組んでいましたが、

山里のあの手この手を使った
口説きに負けて、
コンビを結成することになりました。

しずちゃんのキャラクターを活かした
南海キャンディーズは、
みるみるうちに、大阪で頭角を現します。

そして、M-1決勝進出を果たしたのです。

こうして売れた
南海キャンディーズですが、
まだ山里は納得していませんでした。

なぜなら、世間にとって
「南海キャンディーズ」
=「しずちゃん」で、

山里は、そのおまけのような存在に
甘んじていたからです。

売れてからも山里の心は
荒れてばかりでした。

若林の陰鬱とした日々

オードリーは、
2000年にコンビを結成し、
2008年の M-1準優勝がきっかけで、
多くの人に知られるようになりました。

彼らにとってもまた、
売れるまでの
道のりは平坦なものではありません。

まったく仕事がなく、
定期的にある仕事といえば、
モノマネのショーパブでの前説くらい、
という日々が何年も続きます。

誰にも知られることなく、
鬱々とした日々を過ごす若林とは
対称的に相方の春日は、
いつも楽しそうでした。

しかし、若林はそんな相方を見て、
余計に気持ちが荒んでいき、
情なくなってしまいます。

そんなオードリーも
売れてから春日が注目されることが
多いコンビでした。

若林もまた、そのことに
複雑な思いを抱えることになります。

山里と若林、この二人に
共通するものを見出し、
引き合わせたのは、
テレビ番組のプロデューサーでした。

何かが足りない二人を見て
番組の企画は「たりないふたり」となり、
それはそのまま二人のユニット名に
なっていきます。

そして、この二人を演じるのは、
King & Prince の髙橋海人、
SixTONES の森本慎太郎です。

正直なことを言うと、
私もジャニーズのグループは
今ではほとんどわからず、

アイドルが主演であることに
不安に思っていました。

しかし、ドラマを観はじめて、
彼らの演技を観て、
すぐにそんな不安は
吹き飛んでしまったんですね。

お二人とも、
山里・若林の特徴をうまく捉えていて、
最後まで本当に素晴らしい演技を
見せてくれました。

変な先入観を持ってしまった自分を
反省してしまったくらいです。

そして、彼らだけでなく、
春日役の戸塚純貴、
しずちゃん役の富田望生、

いずれも若い役者さんで、
はじめて見た方でしたが、
これもまたすごい完成度で、
笑ってしまいました。

番組の冒頭でも
毎回ナレーションが入りますが、

このドラマは
友情物語でもなければ、
サクセスストーリーでもありません。

多くの人にとって、
なんのためにもならないかもしれません。

ただ若い二人がもがいた
その日々が描かれています。

ただそれだけのことなのに、
観ていておもしろいんです。

でも「おもしろい」、
それ以上のことが
この世にあるでしょうか。

「おもしろい」は最強なんです。


【作品情報】
2023年4月~6月放送(全12話)
脚本:今井太郎
演出:狩山俊輔
   伊藤彰記
   長沼誠
出演:髙橋海人
   森本慎太郎
   戸塚純貴
放送局:日本テレビ
配信:TVer、Hulu

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