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マンガレビュー『BLUE GIANT』石塚真一(2013~2016)たゆまぬ努力と何げない日常の積み重ね



おもしろくて一気に読んでしまった

以前から読みたい
と思っていたマンガでした。

本作はジャズを
主題にした作品で、
昨年はアニメ映画化もしました。

映像で観るべきか、
本で読むべきか、おおいに悩みつつ、
マンガの方を読むことにしたのです。

実際に読んでみると、
想像以上のおもしろさで、
一気に全10巻を
読み終えてしまいました。

一体、本作のどこがおもしろく、
そこまで惹きつけられたのか、
考えてみます。

若者が掲げた夢は
世界一のサックスプレイヤー

本作は2013~2016年に
『ビッグコミック』で連載され、
現在もその続編が連載されています。

主人公・宮島大(だい)は、
宮城県仙台市に住む高校生です。

ある時、ジャズに興味を持ち、
はじめてライブで観た演奏に感動し、

彼は世界一の
サックスプレイヤーになることを
決意します。

サックスを買うために、
アルバイトをしながら、
コツコツと貯金をしますが、

なかなか目標の金額には到達せず、

それを見かねた兄が
大の誕生日サックスを
プレゼントしました。

その日から大は一人、
川原でサックスの練習に
励むようになるのです。

同級生たちが遊んでいても、
雨が降っても、
毎日休まずに練習し続けます。

その間に、大はジャズに導かれ、
さまざまな人たちとの
出会いと別れを繰り返し、

人間としても、
プレイヤーとしても、
メキメキと成長していくのです。

もちろん、そこには
成功だけでなく挫折も多くあります。

しかし、大は決してめげません。

なぜならば、
ジャズを愛する心だけは
誰にも負けない
という自負があるからです。

たゆまぬ努力と
何げない日常の積み重ね

夢を持った若者が
努力して成長していく物語で、
いわゆる「青春ドラマ」
といえる作品だと思います。

私はこの手の作品に
弱いところがあるんですよね。

そういう若者は、
ただただ自分の「好き」
という純粋な気持ちで
行動しているからです。

淀みがなく、企みもなく、
ただただ真っすぐなんですよね。

その真っすぐさに
まぶしさすら感じてしまいます。

本作のもっとも
素晴らしい部分は、
その気持ちをストレートに
描いたところです。

一番の見どころは、
やはり、演奏シーンですね。

画にとても力があって、
本当に音が聴こえるような
感覚があるんです。

音楽をテーマにしたマンガは、
はじめて読んだのですが、

本当にすごいものは、
ここまでのものなのか、
と感動しました。

そういった派手なシーンだけでなく、

大たちが繰り広げる
若者らしい日常の描写も
よくできています。

そういったシーンは、
物語の本筋から言えば、
無駄なものなのかもしれません。

しかし、不思議なことに
それがあることによって、
物語は一層、盛り上がるのです。

本作でいえば、主人公の目的は
「世界一のサックス奏者になること」
ですが、

そこに至る過程には、
サックスを演奏することだけでなく、
仲間たちとのつながりがあります。

学生には学校生活があり、
社会人になれば、
食うために働かなくてはいけません。

どんなに壮大な目標を掲げた人にも
何げない日常の積み重ねがあるのです。

そういうものが滲み出て、
多くの人を魅了してこそ、
一流の音楽家なんですよね。

演奏がうまいのは、
プロならば当たり前のこと、
それ以上のものがあってこそ、
真のプレイヤーなのです。

本作はそういうことを
読む人に実感させてくれるでしょう。

物語もよくできているので、
読みはじめると、
一気に読みたくなってしまいます。

この記事を書きながら、
今も次の巻(続編)が読みたくて
たまらない自分がいます。


【作品情報】
初出:『ビッグコミック』
   2013~2016年
著者:石塚真一
出版社:小学館
巻数:全10巻

【作者について】
'
71年茨城県生まれ。
’02年、『This First Step』で
デビュー。

【映像化作品】

『BLUE GIANT』
(2023)

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