見出し画像

映像で読み解く(32)MV『IN THIS WORLD』(2022)


モンド・グロッソ×満島ひかり 
コラボ第2弾

『IN THIS WORLD』は、
モンド・グロッソの楽曲で、
女優・満島ひかりがボーカルを
務めています。

モンド・グロッソと満島ひかりの
コラボレーションは二度目で、
つい先日、三度目のコラボ楽曲も
発表されました。

『IN THIS WORLD』の制作には、
坂本龍一(ピアノ)、UA(作詞)、
s**t kingz(※) の NOPPO(振り付け)

(※シットキングス:
  日本の4人組ダンスパフォーマンス
  グループ。2007年結成。
  2010年、アメリカの
  ダンスコンテストで優勝)

といった錚々たるメンバーが
参加しています。

無人のピアノからはじまる

映像はスポットライトが当たる
ピアノからはじまります。

ピアノ奏者の姿はなく、
自動演奏で鍵盤だけが
動いています。

(これを演奏していたのが、
 坂本龍一だと思うと、
 胸にくるものがある)

画面は徐々に後方の
暗い場所に移っていき、
満島ひかりが、
歌う姿を捉えました。

やがて満島ひかりにライトが当たり、
ここがステージの上であることが
わかるでしょう。

※写真はイメージ

最初は両手で
頭を抱えるようにして
歌っているだけですが、

曲のリズムが激しくなるにつれて、
身体の動きが加わっていきます。

ダンスがはじまると、
画面の動きもそれに合わせて
激しくなり、

ボーカルを中央に捉えながら、
寄ったり引いたりしながら、
上下左右にグルグルと
回り出しました。

被写体の姿を立体的に
捉えていきます。

満島ひかりのダンスは、
飛んだり跳ねたり、
かなり激しく動くもので、
躍動感が伝わってきますね。

やがて、満島ひかりが
ステージの前方に移動し、
画面はステージ上から
客席を映し出します。

天女のごとき舞をご覧あれ

ここで画面が満島ひかりの
背中のアップになり、
画面が客席の方に
切り替わっていきます。

このようにカメラが何かを
クローズアップし、
画面を覆い尽くした後に、

シーンを切り替える手法は、
ヒッチコック監督が
生み出したギミックで、
古くから使われてきたものです。

(古くは長回しのシーンで、
 テープチェンジに利用された)

このようなつなぎ方は、
画面の変化が自然で、
観る者の集中力を途切れさせない
メリットがありますね。

ステージの前方に立った、
満島ひかりがステージからダイブし、
客席の上に浮かび上がります。

ここからしばらく、
空中遊泳が披露されるのですが、

この時に彼女の衣装が
ゆったりしているところが
見た目に大きく影響しています。

もともと手足がスラリと長いので、
それだけでもモーションが
大きく見えるところに、

衣服の動き、襟のあたりに巻かれた
長いリボンの動きも加わり、
天女の舞のごとき印象です。

※写真はイメージ

この時のカメラの動きは、
さらに激しいものになっていて、
ステージ上で見せたものよりも

さらに動きがダイナミックで
360°、自由自在に動き回っています。

これはどうやって撮ったのか
とても気になる映像です。

カメラも被写体と同じように、
ワイヤーで釣って撮ったとしか
思えないほど、
動きがシンクロしています。

座席の背もたれに着地すると、
今度はそこを飛んだり跳ねたりしつつ、
ダンスは続いていきます。

客席から再びステージに戻りますが、
この時の照明のコントラストが
よくできていますね。

上着を脱ぎすてて、
さらに激しいダンスが続きます。

徐々に動きがクールダウンしていき、
曲調も穏やかになり、

歌はポエトリーリーディング
(詩の朗読)に変化、
画面がフェードアウトして
フィニッシュです。

4分ほどの短い時間の中に、
曲のイメージが凝縮されており、

照明による明暗の使い分け、
カメラワーク、場面のつなぎ方が
素晴らしい映像でした。

【作品情報】
2022年公開
制作国:日本
アーティスト:モンド・グロッソ
監督:Nozomu Hayashi
レーベル:A.S.A.B


サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。