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音楽レビュー『red curb』Rei Harakami(2001)時代のトレンドを「シンプル」にシフトさせた

懐かしくてせつないサウンド

レイ・ハラカミの音源を
はじめて聴いたのは、
2003年のことでした。

この年に発売された
『鉄腕アトム』のコンピレーション
アルバムに彼が参加していたのです。

はじめて聴いた時は、
彼の作る独特な音色に、
懐かしいような、切ないような、
不思議な感覚を覚えたものです。

その音の秘密は、
電子音を逆再生させた
音色にあります。

音を逆再生させると、
現実世界の音にはない
独特の質感が得られて、
不思議な音色になるんですよね。

そんなことを教えてくれたのも、
彼の音楽でした。

時代のトレンドを
「シンプル」にシフトさせた

彼の3枚目のアルバムである
本盤は、発表された当時(’01年)の
電子音楽のシーンを変えた1枚
と言われることもあります。

ちなみに、この年に発表された
「電子音楽のシーンを変えた」
と言われるアルバムは、

本作の他に、
コーネリアス『Point』、
砂原良徳『LOVEBEAT』、
この2枚が挙げられることが多いです。

時代は21世紀に入ったばかり、
当時のテクノのシーンは、
ちょっとした行き詰まり感が
あったようにも思います。

なんせ、テクノシーンは、
’80年代、’90年代の流れが
濃すぎました。

そんな中で登場したのが、
上述した3枚の名盤だったのです。

この3枚に共通するのは、
「シンプルに削ぎ落した音」
と言えるでしょう。

レイ・ハラカミは、
1枚目のアルバム『Unrest』の頃から、
割と音が少ないシンプルな
サウンドでしたが、

発表当時の時代の空気も相まって、
さらに音数を減らした印象です。

しかし、音数を減らしても、
スカスカというわけではなく、
その分、一つひとつの音の重みが
増しているんですよね。

現代音楽的なアプローチも

レイ・ハラカミのサウンドといえば、
情感にうったえる
せつないサウンドが特徴的です。

そのせつなさがピークに達したのが、
本盤だったのではないかと思います。

それでいて、ダンスミュージックとして、
しっかりビートのある
リズミカルな音楽になっています。

この辺のバランスが
絶妙なんですよね。

それに加え、本作では、
さらに現代音楽寄りのアプローチも
あちこちに感じられます。

⑥、⑧、⑩、⑪
といったトラックが
その路線の楽曲です。

メロディーもはっきりしないですし、
リズミカルでもないので、

一聴するだけでは、
なかなか魅力が
伝わらないかもしれません。

この手の音楽には、
じっくり、何度も聴き続けることで、
じんわり伝わってくる魅力があります。


【作品情報】
リリース:2001年
アーティスト:Rei Harakami
レーベル: Sublime Records

【アーティストについて】
’96年デビュー。
自身の楽曲だけでなく、
CM や映画音楽、
UA、くるり、GREAT3、
イルリメなどの楽曲のリミックスや
プロデュースも手掛ける。
’07年には、矢野顕子とのユニット、
yanokami を結成。
’11年、逝去。

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