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電気グルーヴ 名曲ベスト10(私選)

「YMO がいなかったら日本の音楽シーンは、全然違うものになっていたかもしれない」

これは電気グルーヴが YMO の40周年記念のインタビュー動画で言っていたことですが、この言葉を聴いて、そっくりそのまま電気グルーヴにも当てはまるように思いました。

前身バンドの「人生」を経て、電気グルーヴが結成されたのは、’89年のことです。

当時、YMO は既に散開し、忘れかけられていましたし、「テクノ」という言葉自体が国内では一般的な音楽ジャンルではなくなっていました。

そんな中、シンセサイザー、サンプラー、リズムマシンに「おもろラップ」を組み合わせて登場した電気グルーヴは、明らかに異質な存在だったのです。

デビュー時の音楽雑誌のインタビューで、編集者とともに CD ショップに行ったら、自分たちの CD が一枚も置かれていなかったというエピソードは、今では有名な話ですね。

やがて、ライブの MC のおもしろさが評判となり、テレビやラジオにも引っ張りだこな時代もありました。

しかし、そのサウンドは、常に本気の電子音で、あくまでも彼らが演じていた「おもしろさ」は、楽曲の魅力が多くの人に伝わってほしいという願いもあってのことだったのです。

そんな彼らが「おふざけ」をかなぐり捨てて、本場(ヨーロッパ)のテクノに接近したのが、’93年に発表された4枚目のアルバム『VITAMIN』でした。

アルバムの半分以上がインストである、このアルバムは、レコード会社と大揉めをしながら発表したもので、グループにとっては一世一代の賭けでもありました。

これが当時のグループとして、最高の売り上げを記録(オリコンチャート最高5位)し、日本でもインストのテクノが売れる土壌ができあがったのです。

以降も、電気グルーヴは大衆におもねることもなく、独自の道を歩み続けています。今では世界的にも有名なグループになりました。彼らがいる限り、日本のテクノシーンも安泰といえるでしょう。

そんな彼らが発表してきた楽曲の中から、私のお気に入りの10曲を紹介します。いつものごとく、この選曲も一般的ではないと思います。

たぶん、ファンにアンケートをとったら、こんなランキングにはならないでしょう。でも、私の好きな電気はこんな感じなんです。

10.Mojo(’08)

収録アルバム:『YELLOW』
作曲:石野卓球
TDK の企業 CM 曲。アルバムに収録されているのは、30秒のテレビバージョンで、全編が入ったフルバージョンは、シングル『The Words』に収録されている。短い時間の中でも電気グルーヴらしい音圧の強いドラム、尖った音色が全開で、アルバムの1曲目の導入としてピッタリ。

9.Upside Down(’09)

収録アルバム:『人間と動物』
作詞・作曲:石野卓球
15枚目のシングル曲で、アニメ『空中ブランコ』の主題歌でもある。女性ボーカルを起用し、ストリングスを多用するなど、いつもの電気グルーヴとは一味違った印象。『Shangri-La』以来のキャッチーな楽曲とも言える。

8.FLASHBACK DISCO(’99)

収録アルバム:『VOXXX』
作詞:石野卓球、ピエール瀧
作曲:石野卓球
10枚目のシングル曲。砂原良徳が脱退し、二人体制になってからのはじめての楽曲でもある。ディスコ(ダンス)に回帰した音色、リズムが特徴的。このシングルが売れなかったせいで、所属事務所が潰れたというお決まりのジョークがある。

7.No.3(’08)

収録アルバム:『YELLOW』
作詞・作曲:石野卓球
10枚目のアルバム『YELLOW』に収録された楽曲。韻を踏んだ短い英語の歌詞、楽曲のシンプルな構成がおもしろい。曲の後半に行くほど、音が増えていく。

6.リンギンベル(’08)

収録アルバム:『J-POP』
作曲:石野卓球
9枚目のアルバム『J-POP』に収録された最後の曲。ハンドベル、拍手のサンプリングが印象的なインスト曲で、いつになくシリアスな曲調になっている。キラキラした電子音が心地よい。

5.wire, wireless(’00)

収録アルバム:『WIRE 00 Compilation』(V.A.)
作曲:石野卓球
1999~2014年に石野卓球が主催していた国内最大級のテクノイベント『WIRE』の2000年のテーマ曲。「wire」「wireless」という声と電子音のみで構成されたクールな楽曲になっている。弾力のあるバスドラムとソリッドなリズムトラックが当時の電気らしい。

4.モノノケダンス(’08)

収録アルバム:『J-POP』
作詞:石野卓球、ピエール瀧
作曲:石野卓球
13枚目のシングル曲であり、アニメ『墓場鬼太郎』の主題歌。一般的にはハードシンセからソフトシンセに移行した時代とあって、アナログシンセを使ったサウンドが、シーンの中でも異彩を放つようになってきた。「モノノケ」らしい怪しげなサウンド、妖怪のイメージを表現した遊び心のある歌詞がおもしろい。

3.Fallin' Down(’15)

収録アルバム:『TROPICAL LOVE』
作詞:石野卓球、ピエール瀧
作曲:石野卓球
18枚目のシングル曲であり、ドラマ『怪奇恋愛作戦』の主題歌。ふざけているのか、本気なのかわからない、どこかせつなくリズミカルな歌詞がいい。ジャケットや歌詞にもある「メビウスの輪」(歌詞では「メビウスの罠」)のごとく、ループするサウンドが独特。

2.Baby's on Fire(’14)

収録アルバム:『25』
作詞:石野卓球、ピエール瀧
作曲:石野卓球
25周年に発表されたミニアルバム『25』に収録。シングル曲ではないものの MV が制作され、『SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS』2014年度の優秀作品に選出された。人懐っこいメロディーライン、コード進行、遊び心満載の歌詞が、懐かしい初期の電気グルーヴの面影を感じさせる。

1.柿の木坂(’17)

収録アルバム:『TROPICAL LOVE』
作詞・作曲:石野卓球
13枚目のアルバム『TROPICAL LOVE』に収録された楽曲。タイトルは流行りの一連の某女性アイドルグループ群から連想されたものだと思われるが、曲調や歌詞は、意外と真面目な感じである。せつないメロディーとソリッドなリズムトラック、研ぎ澄まされたシンプルな電子音の組み合わせがかっこいい。

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