見出し画像

高橋幸宏とは(6・終)魅力的なドラムの秘密

※2500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

前回、このシリーズを
締めると言ったにもかかわらず、
続いてしまいました。

これが本当の最後です。

これまでの記事は、
どちらかというと、
幸宏さんのパーソナルな部分、

人物像や趣味を
取り上げてきましたが、
最後は、音楽的な
もっと突っ込んだ話をします。

前回の記事で、
「高橋幸宏とは」
「ロジカルである」
と題して記事を書きました。

そのロジカルな部分を
さらに具体的に書こうと
思っていたんですが、

想定していたよりも、
記事が長くなってしまったので、
記事を改めました。

ここからが、その本題です。

前回の記事では、
著書『LOVE TOGETHER』での
関係者の証言の中で、

「幸宏さんは、どこをどう叩けば、
 どういう音が鳴るか理解したうえで、
 楽器を演奏している」

という趣旨の
コメントがあったのを
書きましたね。

そういったドラムの話を
幸宏さんが披露したことが
ありました。

それは2010年に放送された
坂本龍一の音楽教養番組
NHKの『スコラ』に

幸宏さんが
ゲスト出演した時のことです。

この番組は、
音楽のマニアックな話を
楽器などに焦点を当てて、
解説する番組でした。

その「ドラム&ベース」特集に
幸宏さんがゲスト講師として、
出演したことがあったんです。

その時に幸宏さんは、
自身が影響を受けた
ドラマーの一人として、

ビートルズのリンゴ・スターを
挙げています。

幸宏さんはビートルズの
ドラムの音を聴いて、
あることに気づいた
と言っていました。

それはリンゴ特有の
ドラム奏法で、

スティックを楽器に
押し付けるように
叩いていることでした。

ドラムに限らず、
一般的な奏法の打楽器は、
スティックや手の平で
叩く時に、

楽器にぶつけて、
すぐに離す
という演奏のしかたが
一般的なんだそうです。

ところがリンゴのドラムは、
スティックがドラムに付いて、
すぐに離すのではなく、

ドラムを押し付けるように
叩くんですね。

そうすると、
ドラムの音は残響音が
かき消されて、

ミュートされるような
状態になります。

このことを幸宏さんは、
映像を観て知ったのではなく、

レコードの音を聴いて、
わかったというのだから、
すごいですよね。

そして、幸宏さんのドラムも
リンゴのスタイルを踏襲して、
スティックを押し付けるような
ドラムの奏法になりました。

ドラムセットのバスドラムは、
足元のペダルを踏んで、
鳴らしますが、
これも同じです。

普通はペダルを踏み込んで、
バスドラムにぶつかったら、
すぐに足を戻すのが
一般的なんですが、

幸宏さんのバスドラムは、
スネアドラムなどの
叩き方と同様に、

足元のペダルが
バスドラムに当たってからも
強めに踏み込みます。

そうすることで、
ドラムの音は、
残響音がかき消されて、
切れ味の鋭い音になるのです。

また、幸宏さんいわく
「その方が拍が安定する」
という話でした。

このように、
ドラムを一つ叩くにしても、
幸宏さんは
非常にロジカルなんです。

著書『LOVE TOGETHER』の中で、
バンド・GREAT3 のドラマー、
白根賢一が幸宏さんと
共演した際に、

バスドラムのフットペダルの
話になったことを
回想しています。

一般的なドラマーは、
バスドラムのフットペダルを
踏む時に、

かかとを上げて、
つま先で踏むように
演奏するそうです。
(ヒールアップ奏法)

白根賢一も、
そのように演奏していました。

ところが、幸宏さんは、
フットペダルを踏む時に、
かかとまでしっかりつけて
踏み込みます。
(ヒールダウン奏法)

幸宏さんは
「かかとをつけて
 叩くこと以外、
 意味がわからない」
とまで言っていたそうです。

一般的には、
かかとをつけない
ヒールアップ奏法の方が

楽に演奏できて、
音量も出やすい
と言われているそうですが、

幸宏さんの
ドラムを聴く限り、
音量が小さい
と思ったことはありません。

何よりも、
ロジカルな幸宏さんです。

たぶん、一般的には、
ヒールアップ奏法の方が
効率的と言われていても、

実際には、
ヒールダウン奏法にも利点が
あるのでしょうね。

そして、この話は、
前述したリンゴ・スターを
踏襲した、

しっかりと踏み込む
ドラムのスタイルと
合わせて考えると
納得がいきます。

ヒールアップ奏法のように、
つま先を中心にペダルを
踏むようなスタイルだと

しっかり踏み込むことは
できないでしょう。

幸宏さんにとっては、
それが効率的なドラムの
叩き方なので、

自然とヒールダウン奏法に
行きついた
ということなのだと思います。

幸宏さんの
ドラムの演奏スタイルは、
どこをとっても

「最小限の力で、
 最大の音量を出す」
という方向性で、

組み立てられている
気がするんですよね。

ここからは
私の憶測になりますが、

幸宏さんがドラムを叩く時の
姿勢を思い出すと、
猫背気味で、

ドラムを抱え込むような
前傾姿勢で
叩いてる姿が
思い起こされます。

もしかしたら、
若い頃を知らない人は、
「年をとったから猫背なのでは」
と思う方もいるかもしれません。

でも、実際には、
20代の若い頃から、
こんな姿勢でドラムを
叩いていました。

これも癖といえば、
癖ですが、

幸宏さんだからこそ、
そこにロジカルな面を
感じずにはいられません。

幸宏さんの
ドラム演奏の特徴として、

スティックでドラムを
叩くまでのモーションが小さい
というのがあります。

ドラマーの中には、
スティックを頭上まで
高く振り上げて、
力一杯叩くような人もいますが、

幸宏さんのドラム演奏では、
そういう場面は、
ほとんど見られません。

つまり、これも、
前述したような
「猫背」の姿勢と
関連があるのではないか、
と思ったりもするんですよね。

背筋をまっすぐ伸ばして、
ドラムを叩くと、
どうやっても
スティックを持つ手が
ドラムから離れてしまいます。

結果として、
姿勢のいいドラマーは、
ドラムを叩く時の
モーションが大きくなりがちです。

ところが、幸宏さんのように
ドラムに対して、

若干、前のめりに座っていると、
スティックを持つ手の動きが
最小限に抑えられます。

先ほども言ったように、
これは私の憶測に
過ぎないのですが、

これはご本人に
直接、話を聴ける機会があったら、
ぜひとも、
質問してみたいことでした。

しかし、それも叶わぬ夢
となってしまいました。

(もともと幸宏さんに直接、
 お話を伺う機会なんて
 ないのだけど^^;)

とにかく、高橋幸宏
というアーティストは、

ご本人が語らなかった部分、
まだ語られていない部分が
相当あるような気がします。

そういった話題も
今後、折に触れて、
記事にしていけると
嬉しいです。

長いシリーズになってしまいましたが、

「全6回」というのも、
6月6日生まれの幸宏さんと
繋がりの深い数字なので、
良かったです。

最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました。

※トップ画像は
 公式サイトより
 お借りしました。

この記事が参加している募集

#とは

57,813件

サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。