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映像で読み解く(33)ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』



2000年代に世界各国で大ヒット!

アメリカでは
'01~'02年に放送され大ヒット、
その後、世界各国でも放送され、
世界的なヒットを記録した作品です。

日本では'03年にビデオが発売となり、
たちまちレンタルビデオとして、
大人気となりました。

その後もシリーズが制作され、
'10年にシーズン8を放送、
それ以降にもスピンオフ作品が
制作されています。

マルチ画面による
スピーディーな展開

本作は CTU(テロ対策ユニット)の
捜査官、ジャック・バウアーを
主人公にしたドラマです。

物語の中で、1話につき1時間が経過し、
リアルタイムで物語が進行する
というのが新しい見せ方でした。

本作ならではの演出としては、
リアルタイム進行を意識した
マルチ画面によって、

異なる場面・人物の
複数の視点を一つの画面に
映し出す手法があります。

複数の場面をいっぺんに
画面に出すことにより、

短い時間の中で
効率よくシーンを展開する、
理にかなった演出になっています。

例えば、登場人物が
誰かに電話をかけた場合、

一般的な作品では、
誰が誰と話しているのかを
わかりやすくするために、

何度か画面を
切り替える必要がありますが、

『24』ではそれをマルチ画面に
することによって、

画面を切り替えるロスをなくし、
切れ間のないスピーディーな展開に
結び付けているわけです。

ちなみに、このマルチ画面による
演出がもっとも多くあるのは、
シーズン1で、

シーズン2以降は、
マルチ画面の頻度が
少なくなっていきました。

臨場感を高める手振れ、
アップ、パンニング

『24』の映像において、
マルチ画面以外の特徴としては、

役者だけでなく、
カメラもよく動くというのが
挙げられるでしょう。

銃撃戦などアクションの
多い場面はもちろんのこと、

何気ない場面でも
このようなカメラワークが
使われており、

この撮り方が地味ながら、
画面に大きな影響を
もたらしています。

例えば、娘がさらわれた
ジャック・バウアーが、

娘の友達が
(娘と一緒に拉致された)
病院に搬送された
という知らせを受けて、

病院にやってくるシーンの
映像を観てみましょう。

最初にカメラは
ドアを開けて院内に入ってきた
ジャックを正面から捉えます。

急いでいるジャックは、
速足で進みます。

カメラの立ち位置は
止まっており、
ジャックはそれを横切るようにして、
移動していきました。

すると、カメラはジャックの背後を
写すことになりますね。

ここからカメラは速足で進む、
ジャックの背後を追うようにして
一緒に進んでいきます。

院内で妻、一人の男と
接触しました。

今度はジャックと妻、
その少し奥に立つ男を
画面に収めています。

その後も、院内を移動したり、
話す人物が切り替わるたびに、
カメラの視点が次々に
変わっていくのですが、

その視点の見せ方は
まるでその場にいるような
臨場感があるんですよね。

画面の中にいるのは
3人の登場人物ですが、
カメラが絶妙な立ち位置で、

そこから見える視点は、
まるで自分が4人目の
登場人物になったかのようでした。

このシーンはその一例でしかなく、
劇中ではさまざまな人物のやり取りが
展開されていきますが、

どのシーンにおいても
臨場感を意識したカメラワークが
感じられました。

そして、『24』を
『24』たらしめている
もっとも大きな特徴は、
カメラの手振れです。

撮影時のカメラは、
機材で固定するパターンと
カメラマンが抱えるパターンが
ありますが、

本作では後者が多いように、
見受けられました。

ステディカム(Wikipedia より引用)
カメラ安定支持機材。
『24』で使われたかはわからないが、
こういう機材もある

これによって、
カメラは手振れが発生するのですが、
このブレ加減が絶妙でしたね。

手振れがあると、
臨場感が高まるのです。

カメラを固定するよりも、
視点の切り替えの自由度も
高まります。

この特性を活かして、
劇中では自由なカメラワークを
実現しています。

手振れの臨場感を
さらに高めているのは、
絶妙なタイミングで使われる
クローズアップとパンニングです。

クローズアップは、
人間の眼にはできないもので、
画面の中の特定の部分に
寄ることができる技法です。

特に、人物同士が
激しく言い合っているシーンなどで、
クローズアップが使われています。

感情の動きを細かく映すために
顔の表情をクローズアップ
しているのです。

地味な演出なので、
初見の方は気が付かない
かもしれないですが、

このような演出がされている場面は
劇中に多く出てきました。

パンニングは、カメラの視点を
固定したまま、
水平または垂直方向に
視点を移動させるものです。

この手法が使われているシーンも多く、
高速のパンニングが
本作のスピーディーな映像の魅力を
一層引き立てています。

手振れ、クローズアップ、パンニング、
この三つの手法が
ふんだんに使われているのは、
シーズン1の最終回(24話)です。

銃撃戦のシーンもさることながら、

CTU 内部でのやりとり、
現場のジャックと CTU、
はたまた大統領と夫人の
やりとりにいたるまで、

(シーズン1は大統領候補の
 暗殺を阻止するミッションのため、
 大統領の登場も多くある)

あらゆる場面が、
緊迫感のある画面作りに
なっています。

物語の終盤というのもあって、
それまでにわからなかった事実が
あきらかになっていくので、

その驚きを最大限に引き出しているのも、
こういった映像の作り方が
大きく影響しているのです。

【作品情報】
2001~2002年放送
(日本では2004年)
制作国:アメリカ
演出:スティーヴン・ホプキンス、
   ウィンリック・コルベほか
出演:キーファー・サザーランド、
   レスリー・ホープ、
   サラ・クラーク
放送局:フォックス

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