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なにものにもならない〜Je ne peux être rien.〜(「種々雑多」外伝その3)

公園のベンチに恋人達が座ってた
「私はずっと、あなたのいちばんでいたい」
「僕もずっと君を一番好きでいるよ」

別れてもあいつらは、別の相手にも、きっと同じ事を言うだろうよ。

信号待ちの中学生等が
「オレ今回の期末テスト、学年で1番だったぜ!」
「何だよまさかお前に、1番の座を譲るなんて」

そうやってお前等は社会の渦に巻かれていくだぜ。

蕎麦屋から出てきたサラリーマンの集団が
「そーいや、お前さ今度、営業のトップで社長賞もらうんだって?」
「あ、ありがとうございます。でも先輩も去年もらったじゃないですか〜。」
「営業は、成績も大事だが、サービスも大事だぞ」

所詮、数で勝負してるような営業をしてる会社なんて、客を大事にしやしねぇんだ。
賞なんてもらったってうれしくもなんともねぇ。
嬉しいのは、客に、満面の笑みで「ありがとう」って言ってもらった時だ。正に値千金だ。

自分は何者にもならねぇ。誰の1番にもならねえし、どこの自治体、どこの国の長にもならねぇ。
自分は自分というもので生きていく。呼吸し、好きな時間に食って、好きな時間に寝る。
社会がそれを拒絶するなら、それでも良かろう。生きる権利を訴える覚悟はある。
だから自分は何者にもならねぇで生きていく。
自分は、自分という、アイデンティティで生きていく。

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