岡嶋二人にハマる
※この記事は、
2018年8月29日に書いた記事に
加筆修正をしたものです。
最近、なかなか特定の作家さんに
ハマることがなかったのですが、
ここにきて、すっかりハマってしまう
作家さんが出てきました。
それが岡嶋二人(おかじまふたり)です。
この方たちは‘80年代に、
日本では珍しい「コンビ」で
執筆していた作家さんでした。
井上泉(‘50年生まれ)、
徳山諄一(’43年生まれ)による
コンビのペンネームが
「岡嶋二人」なんですが、
私が彼らのことを知ったのは
ごく最近のことです。
『ホンマでっか!? TV』にも出演する
中野信子先生(認知神経科学者)が
とあるサイトで
「わが人生最高の10冊」
と題した記事の中で、
岡嶋二人の最後の作品
『クラインの壺』(‘89)を
1位として紹介していたのを
読んだのがきっかけで知りました。
『クラインの壺』は‘89年の作品なんですが、
すでにこの時代にコンピューターによる
バーチャルリアリティ(VR)を
主題にした作品に取り組んでおり、
そんな先進性に惹かれて
読んでみたいと思いました。
なんでもお二人のうち、
特に井上氏の方が
パソコンの知識に長けていたらしく、
(‘80年代には「マイコン」と呼ばれていた)
岡嶋二人の作品には
コンピューターを題材にした
作品も多いようです。
二人がデビューしたのは‘82年、
『焦茶色のパステル』という作品で、
第28回江戸川乱歩賞を受賞しています。
これは「競馬」を題材にした
ミステリー作品で、
その後も『七年目の脅迫状』(‘83)
『あした天気にしておくれ』(‘83)
(実際に執筆されたのは‘81年で
実質的には二人の処女作)
と、立て続けに
「競馬」をテーマにした作品を
手掛けましたが、
これは徳山氏の得意分野を
活かした作品だったようです。
他にも徳山氏は
スポーツの知識にも長けており、
その次の4作目の作品
『タイトルマッチ』(‘84)では
「ボクシング」を題材にしていますし、
『ビッグゲーム』(‘85)
『殺人!ザ・東京ドーム』(‘88)
といった作品では
「野球」をテーマにしています。
私が先日、はじめて読んだのが
『99%の誘拐』(‘88)という作品で、
この作品は井上氏が得意な
「コンピューター」を題材にした作品でした。
ネットでは「二人の最高傑作」
とも言われているのも見かけましたし、
本当は『クラインの壺』が
気になっていたのですが、
この頃の作品は実質、
井上氏が一人で手掛けていた
ということもあったので、
できれば二人で手掛けた作品が
読みたいと思い、
『99%の誘拐』を手に取ったんですよね。
これはめちゃくちゃおもしろかったです。
久々に小説を夢中になって読みました。
二人の作品は「誘拐」を扱ったものも多く、
「人さらいの岡嶋」「誘拐の岡嶋」
といった異名もあるくらいなんだそうですが、
この『99%の誘拐』もタイトルの通り、
誘拐ものの作品で、
岡嶋二人の魅力を知るうえでは、
初心者にも最適な一冊ではないかと思います。
そして、本作は
‘89年に刊行された本であるのにも係わらず、
‘05年の『この文庫本がすごい!』で
1位に選ばれたらしいです。
20年近く経ってからもヒットするなんて
すごいと思いませんか。
それだけ本作は時代を先取りしたテーマを
取り上げていたということでしょう。
ちなみに、私が二人のことが
猛烈に気になったのは、
主軸はミステリーとして
一貫していても、作品によって、
さまざまなジャンルに
足を突っ込んでいるところなんですよね。
特に小説家としては、極めて珍しいのが、
ゲームブックを手掛けているところで、
‘86年に『ツァラトゥストラの翼』
という作品を手掛けています。
(ゲームブックは読者が
選択肢を選ぶことによって
話が進む形態の本)
また、『熱い砂―パリ~ダカール
11000キロ』(‘91)は、
二人がアフリカ大陸最西端・ダカールで
世界一過酷なレースを取材した
ドキュメント作品で、
二人が唯一、手掛けた
ノンフィクション作品です。
ちなみにコンビ解散後、井上氏は
「井上夢人(いのうえゆめひと)」
とペンネームを改め、
現在も活躍中です。
▼井上夢人のデビュー作
▼岡嶋二人の制作秘話を明かしたエッセイ
▼井上夢人の最新作
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