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テクノ/ハウス 名盤10選(私選)

高校生最後の年だった’00年に、テクノにハマったのがきっかけで、音楽を深く聴き込むようになりました。

最初は音楽のこと、特にバンドやアーティストのことがわからず、’80年代のテクノポップやエレクトロポップ、’90年代以降のテクノを手当たり次第に聴いていたんですよね。

詳しくない方にはどうでもいい話ですが、ここに挙げたテクノ、ハウスは、’80年代末期~’00年代中盤までのものです。

日本で「テクノ」というと、YMOやクラフトワークが筆頭に挙げられますし、一緒くたにして語られることも多いのですが、’80年代に流行ったテクノポップは、本来、テクノやハウスとは別物です。

そもそも「テクノポップ」というのは、和製英語で、海外では「エレクトロ」と呼ばれているんですよね。

私も18歳の頃に、テクノの関連文献を読んで知ったのですが、「テクノ」とか「ハウス」は、’70~’80年代にアメリカの黒人のDJたちが作った音楽だったんです。

ここでは、本来の意味での、テクノ、ハウスに絞った音楽を紹介します。

とはいえ、個人的には’70~’80年代のエレクトロニックミュージックも好きなので、いずれ別項目を設けて紹介したいと思います。

20代の前半までは、毎週のようにCDショップに足を運び、どんなテクノが流行っているのかトレンドを追いかけていました。

クラブには1回しか行ったことがなく、完全にホームリスニング派です。

今では、どんなアーティストがいるのかも知らない「テクノ浦島太郎」な私ですが(^^;

10代~20代半に聴いていたアルバムの中から、個人的に思う「テクノ/ハウス 名盤10選」を紹介します。

①『90』808 State(’89)

イギリスのテクノユニット、808ステイトの2枚目のアルバム。
1枚目のマニアックなアシッドハウスから脱却し、若干ながらボーカルの入る曲も収録している。’80年代末期の作品ながら、’90年代を予期するアナログシンセのサウンドが秀逸。
特に④『Pacific 202』のデトロイトテクノ+ジャジーなサックスの音色のハーモニーは、出色の出来栄え。

②『Experience』The Prodigy(’92)

イギリスのテクノロックバンド、ザ・プロディジーの1枚目のアルバム。
デビュー当時、19歳だった彼らは、登場して間もなく鮮やかなヒット曲を繰り出し、その才能を音楽シーンに知らしめた。
今では強面のバンドのイメージだが、意外にも主要メンバーのリアム・ハウレットは、クラシック音楽などの素養を持つ秀才である。
このアルバムでは、いち早くブレイクビーツ(音を切り刻んで再構築する手法)を取り入れ、たちまちクラブを席巻した。

③『Vitamin』電気グルーヴ(’93)

日本が世界に誇るテクノユニット・電気グルーヴ、4枚目のアルバム。
収録曲の半分以上がインストのダンスミュージックでありながら、オリコン5位を記録した。当時の電気としては最高のセールス記録であり、日本のテクノ史上でもまれに見るヒットだった(のちに『シャングリラ』のヒットがその記録を上回る)。
DJとしても活躍するメンバー・石野卓球が、本作の制作前にヨーロッパに渡っており、その身を持って感じた、当時のヨーロッパのテクノの要素がふんだんに盛り込まれている。

④『Selected Ambient Works 85-92』
   Aphex Twin(’93)

イギリスのリチャード・D・ジェイムスによるソロユニット、エイフェックス・ツインの1枚目のアルバムであり、一般的にも「テクノの金字塔」と称される名盤。
この時代からアーティストが自宅の寝室で曲を作るような文化が生まれ、「ベッドルームテクノ」という名称が生まれた。エイフェックス・ツインはその筆頭のような存在で、本盤には、彼が’80年代から作り溜めてきたトラックが収録されているという触れ込み(彼の虚言癖は有名なので、話半分に聞いておこう(^^;)。
そんな経緯もあって、アルバムとしてみると、まとまりに欠ける面もあり、どちらかというと「コンピレーション」といった方がしっくりくる。
とはいえ、独自の尖ったサウンドの魅力は本物で、確実に時代を変えた名盤。

⑤『Unrest』Rei Harakami(’98)

レイ・ハラカミの1枚目のアルバム。一貫してインディ・レーベルのサブライムレコーズから作品を発表し続けていたが、業界内での知名度は高く、ジャンルを超えて幅広い世代のアーティストからリスペクトされていた。
矢野顕子には「世界遺産」と絶賛され、特別ユニット・yanokamiとしてもコラボ、UAやくるりなどのアーティストのプロデュースやリミックスを手掛けたことでも知られる(残念ながら’11年に逝去)。
サンプリング音源を逆再生して奏でられる、妙にノスタルジックなサウンドは、1枚目のアルバムの時点で確立されている。

⑥『Beaucoup Fish』Underworld(’99)

イギリスのテクノロックバンド、アンダーワールドの4枚目のアルバム。
売れたのは’90年代に入ってからだが、キャリアは長く’80年代から活動していた。転機となったのは、’92年にDJのダレン・エマーソンが加入したことがきっかけで、サウンドがテクノに移行したこと。
ちなみに、このアルバムを最後にダレンはグループを脱退。以降、カールとリックの二人組のユニットとして活動している。
イギリスらしい仄暗いロックサウンドとテクノが見事なまでに融合した傑作。

⑦『TEMPOVISION』Etienne De Crecy(’00)

フランスのソロ・アーティスト、エティエンヌ・ドゥ・クレシーのアルバム。これ以前にも彼は、モータベースというユニットでも活動しており、本盤が自身初のアルバムとなった。
モーターベースはフランス国内のクラブシーンでは有名なようで、のちにダフト・パンクが世界的にヒットした際に「彼らがいなければ、今の僕らはない」と言わせたほどの存在。
ダフト・パンク的なフィルターハウス(グニャグニャした音が特徴的)でありながら、ダフト・パンクのそれよりも、’60~’70年代、アメリカのファンク(中でもPファンク)の影響が色濃いサウンド。シングルとしてもヒットした④『Am I Wrong』にその魅力が凝縮されている。

⑧『Discovery』Daft Punk(’01)

フランスのエレクトロデュオ、ダフト・パンクの2枚目のアルバム。
フランスのクラブカルチャーを世界に知らしめたのは、紛れもなく彼らだった。このアルバムも世界的にヒットして、日本のテレビCMでも何曲か起用されていたが、グラミー賞を受賞するのはずっと後の2014年。
1枚目のアルバムで強く打ち出されたヒップホップ色は鳴りを潜め、’70~’80年代のディスコサウンドが前面に打ち出されている。当時の日本の一部では、’80年代カルチャーのリバイバルの影響もあって、本盤のサウンドは特に注目を集めた。

⑨『LOVEBEAT』砂原良徳(’01)

砂原良徳の4枚目のアルバム。電気グルーヴ脱退後、初のソロ作品となった。前作までのソロ音源では、サンプリングを中心にしたラウンジサウンドを中核に据えていたが、本作から機械的な電子音を解禁している。
’90年代の音数の多いテクノとは一線を画し、シンプルな電子音でビートを強調した作り。全体的に曲調は暗く、重たいイメージだが、聴き込むほどに味の出るサウンド。

⑩『Sunriser』Ken Ishii(’06)

ケン・イシイの7枚目のアルバム。’93年、大学時代にベルギーの名門テクノレーベル、R&Sレコーズにデモテープを送ったのがきっかけで、日本に住みながらヨーロッパでデビューするという、当時としては画期的な試みを果たしたアーティストでもある。以降、似たような経路でデビューした日本人アーティストは多く、ケン・イシイは、その道筋を作ったパイオニアでもある。
デビュー当時は、東洋のイメージをまとったミステリアスなサウンドで注目を集めたが、その後、自身のスタイルを次々に変えていき、現在のスタイルに至る。
そのスタイルとは、自身がもっとも影響を受けたデトロイトテクノを継承しつつも、独創的なアレンジで昇華したサウンドである。きらびやかな電子音とみぞおちに響く太いベース音、耳に刺さるようなリズムトラックの合わせ技が病みつきになる。

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