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『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022』坂本龍一の本気を見た

10月に投稿した
こちらの記事にも書いた

坂本龍一のライブ配信を
先週の日曜日に視聴しました。

「ライヴでコンサートを
 やりきる体力がない――。
 この形式での演奏を
 見ていただくのは、
 これが最後になるかもしれない」

配信前から坂本本人が
このように語っていた
今回のライブは、

事前に NHK のスタジオで
演奏した映像を編集したものを
配信する形で公開されました。

配信は、
12月11日(日)12:00
12月11日(日)18:00
12月11日(日)24:00
12月12日(月)6:00
の全4回にわたり、

それぞれ、1時間ほどの
演奏が披露されました。
(私が観たのは1回目の配信)

この映像はアジア、欧米を含む
全30か国で配信され、
同時視聴者数は
3万人を超えました。

最後になるかもしれない、
配信ライブの感想を
綴ってみます。

*  *  *

今回演奏されたのは、
以下の13曲です。

1.Improvisation on Little Buddha Theme
2.Lack of Love
3.Solitude
4.Aubade 2020
5.Ichimei - Small Happiness
6.Aqua
7.Tong Poo
8.The Wuthering Heights
9.20220302 - sarabande
10.The Sheltering Sky
11.the last emperor
12.Merry Christmas Mr.Lawrence
13.Opus - Ending

代表曲である
『戦場のメリークリスマス』
『ラストエンペラー』から

YMO時代の『東風』、
最新の曲まで含む
幅広いラインナップでしたね。

映像の方は、
今後、ドキュメンタリー映画を
制作する予定もあるらしく、

単純に演奏する姿を
そのまま録ったものではなく、
かなり凝った印象の映像でした。

全編モノクロの映像で、
時にはピアノを演奏する
指にアップしたり、

姿そのものではなく、
影の動きを捉えたり、

従来のライブ映像とは、
一線を画す、
画期的な映像作品だったのです。

今回、演奏を収録した
NHK放送センターの
509スタジオは、

坂本龍一が
「日本で一番いいスタジオ」
ということもあり、

音の方も研ぎ澄まされたものを
感じました。

一般的なピアノ演奏の音盤でも
演奏者の呼吸まで捉えたものは
多くありますが、

今回の映像ほど、
演奏者の呼吸が
密に感じられたのは、
はじめてです。


いろいろ書いてきましたが、
正直なところ、
実際に演奏を観るまで、
心配なところもありました。

ピアノ演奏というと、
一般的には静かなイメージを
抱かれるでしょう。

しかし、坂本龍一の演奏は、
特に打鍵が強い印象が
ありましたから、

果たして、今回の演奏も
そんな力強さを
見せてくれるのだろうか、
という不安があったんです。

長年、観てきたファンとしては、
その部分が変わって
しまっていたら、

どんなにショックだろう
と想像してしまいます。

しかし、心配は杞憂でした。

もちろん、この演奏は
いっきに全曲披露
したわけではなく、

何曲かごとに分けて
演奏したものを
編集したものですし、

何よりも坂本本人が
「この形式での演奏を
 見ていただくのは、
 これが最後になるかもしれない」
と言っているのです。

つまり、それは、
今の自分に
これまでの自分と変わらない

パフォーマンスが
できるという確信が
あったわけですよね。

そこを信じていれば。
何も不安に思う必要など
なかったと思います。

演奏を観ていて、
特に、打鍵の力強さが
感じられたのは、
⑦『Tong Poo』ですね。

前述したように、
これは YMO 時代の曲で、

私自身、20年以上にわたり、
何度も演奏する姿を
映像で観てきました。

そんな私から見ても、
その力強さは
衰えを感じさせるどころか、

若い頃にも負けない
パワーを感じさせてくれたのです。

若い頃の教授の姿と
ダブった印象もあり、
涙が止まりませんでした。

その他にも、
⑧『The Wuthering Heights
 (嵐が丘)』、
⑪『Last Emperror』など、

これまでピアノソロでは
披露する機会のなかった
楽曲も目を惹きましたね。

演奏後の坂本本人の
コメントでも、
はじめてピアノの独奏用に
アレンジした楽曲もあり、

選曲もかなり慎重に考えた
と語っておりました。

そして、ライブ配信の最後には、
チケット購入者への特典として、

来年の1月17日(坂本の誕生日)に
発売予定のアルバム『12』が
先行公開される
サプライズもありました。

このアルバムは、
療養中に録り溜めた
スケッチを12曲の楽曲に
仕上げたものです。

残念ながら、私自身は、
時間の関係で、
全曲聴くことが
できなかったのですが、

数曲聴いた印象としては、
今回のピアノ演奏と
対称的な電子音を使った
アンビエントに感じました。

それと同時に、
かつて坂本自身が
語っていた言葉も
思い出したんです。

それは YMO として
活動していた若い頃、

「身体が動かなくなっても
 できる音楽も突き詰めなくちゃ」
というようなことを

メンバーの細野晴臣、
高橋幸宏とよく話していた
という回想でした。

実際、今回披露された
ピアノ演奏、新作の公開も含め、
本人も「新境地に辿り着いた」
と語っていました。

これからの坂本龍一も
まだまだ目が離せません!

※トップ画像は
 公式サイトよりお借りしました。

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