帰り道
「うわぁ、寒いね。もう4月なのに」
私達は今コンビニを出たところだ。ついさっきまでコンビニの飲食スペースの一角でアイスを食べていたのだ。
「アイス食べてから沢山お喋りしといてよかった。こんなに寒いと凍死しちゃうところだったね」
「ほんとほんと」
「あのね、あんまり喉が冷たいから、私達、ここで凍死しちゃうの。それで、朝になって学校にきた人が私達をみつけるのよ。」
「ここそんなに人通り少なくないでしょ、皆見て見ぬふりしすぎだよ」
確かに、と笑った。
「それでね、私達はこうやって棺に入れられて、皆はそれを囲むの。」
いわゆる、『ザビエルのポーズ』をしてみせる。チカも続いてポーズをとる。にこにこしている。
「皆がお花を一輪ずつ持って、なんでそんなに早く逝っちゃうのよって言うの。なんでアイスなんか食べたのよ、りり、チカ!って泣くの。」
「まるで眠ってるみたいね。って誰かが言って、そしたら眠ってるなら目を開けてよ!って言うのよ。」
チカの迫真の演技に私は笑ってしまう。
「しんみりしてるところに、校長が言うね。『死因はコンビニのアイスです。これを教訓に、皆さんは帰り道にコンビニによるのはやめましょう。』」
「あーぁ、私達、全校生徒に恨まれちゃうね」
私達は笑った。高級住宅街の夜には似つかわしくない二人。いつものこの道をすたすたと歩いていく。こんなにも歩調が合うようになったのはいつからだろうか。
今のは私の理想の死にかただよ、と心で呟きながら、繋いだ手を ぶん、と振ってみる。
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