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最期までトイレに歩いて行ける幸せのためにできること

認知症がある母の「排泄の失敗」を工夫して改善することができ、母は生きる自信を取り戻すことができました。筋肉トレーニングや膀胱機能のチェック、水溶性ファイバーの服用などの工夫を、今までの遠距離介護の3年間を振り返りながらまとめてみました。


認知症があってもあきらめたくない

排泄を失敗すると、自尊心が傷つきます。介護が始まったばかりの3年前の今ごろは、当時87歳だった母はリハビリパンツを使用していました。外出先での失敗が続いて、「散歩の途中にな、間に合わんようになってな…」とか、趣味の「グラウンドゴルフの練習から帰るときにな、間に合わんかって大変なことになってしもうた・・・」などと切ない声で電話してくるようになりました。

アルツハイマー型認知症の診断されて、要介護1の認定が出たばかりのころでした。認知症のことも介護のこともチンプンカンプンの世界でした。ネット上には認知症に関するネガティブで絶望的な情報があふれていたことを覚えています。一番強烈だったのは、「認知症があると排泄コントロールができなくなる」という情報でした。

物事には光と影があります。情報も同じです。必ずポジティブな情報があるはず…と思い、必死で調べていくうちに一冊の本に出会えて、「なんとかなるかもしれない」と希望の光が灯りました。

認知症になってもひとりで暮らせる』(社会福祉法人 協同福祉会 編)

『最期までトイレに行ったヤスオさん-小規模多機能を利用して-』p.61

オムツゼロでトイレに座れるケアは、東京都品川区1万5046人にデータ追跡(2015年4月~2017年11月)で、①トイレを使用できないグループは75%の人が要介護4または5になっていました。そのうち50%の人が2.7年後に死亡していました。②場合によってはトイレを使用できるグループの死亡率は30%でした。③常にトイレを使用できるグループは、要介護4または5になる人が5%にとどまっていました。

認知症になっても一人で暮らせる   社会福祉法人協同福祉会編p.64-65   



光を探して

調査結果から考えた排泄の自律

もともと放送局で番組制作をしていたことから、介護の取材をしてstand.fmで音声配信の番組を制作してシェアしていたので、この本の著者の一人である大國康夫さん(社会福祉法人 協同福祉会 理事)や、精神科医の大石智さん(相模原市認知症疾患医療センターのセンター長)にも早々に取材させていただき、尿漏れは、筋肉や膀胱機能の衰え、薬の副作用が原因になることがあると知りました。

母は今のところ尿漏れにつながる薬は服用していなかったので、筋肉を鍛え、膀胱機能のチェックをすることにしました。


オムツなし介護を目指して

筋肉トレーニング

三年前の母は筋肉がずいぶん衰えていて、室内をヨロヨロしながら伝い歩きをしていました。週に2回、45分のリハビリを開始してから徐々に歩き方がしゃんとしてきて、今ではサッサと歩いてトイレに行けるようになりました。リハビリでは転倒しない「つま先を上げながら歩く」という指導もあったので、とても助かりました。母は実際に廊下で転倒して腰を痛めたことがあったのです。

詳しいトレーニングの内容はこちらの記事をごらんください。


膀胱機能のチェック

遠距離介護では母の通院つきそいは簡単にできることではありません。ネットで調べてオンライン診療を見つけて受診してみました。そこで過活動膀胱かもしれないとの診断を受け、母の住む地域の「ウロギネ科(婦人科+泌尿器科)」を受診するようにと言われました。実際に尿検査やエコーなどの検査もしていただき、過活動膀胱と診断されて薬が処方されました。

「大」の失敗を防ぐために

母はお腹がゆるくなって失敗することがよくありました。番組で取材させていただいた歯科医の方に、水溶性ファイバー(下↓参照)のことを教えていただき、試してみると、母のお通じはすこぶる快調になり、「もう大丈夫。もれることはない」と安心して外出できるようになりました。


排泄の自信復活で笑顔が増えました

リハビリと過活動膀胱の薬の服用で、介護スタート直後にはリハビリパンツを使用していたのに、昨年からは布パンツが復活して、ミニの尿漏れパッドを一日あたり2〜3枚の交換で大丈夫になりました。今年になってからはパッドの使用量が徐々に減り、2割減になったところで主治医に相談したら、過活動膀胱の薬の服用を止めて、様子を見てみようと言われるまでに症状が改善されていたのです。今はこのパッドを利用しています。↓


排泄の失敗が続くと、「失敗したらどうしよう」と外に出る勇気がなくなってしまいます。過活動膀胱の治療とリハビリのおかげで、母は心配することなく外食や温泉に出かけられるまでになりました。生きる自信を取り戻すことができて、前向きに「まだまだ大丈夫じゃ」と言えるポジティブな母になれました。




排泄の改善に、ここをチェック

  1. 筋肉が衰えていませんか?
    もしそうなら、理学療法士さんによる訪問リハビリをオススメします。

  2. 排泄コントロールが難しくなる副作用のあるお薬を服用していませんか?
    心配なら、主治医や薬剤師さんに相談してみることをオススメします。

  3. 膀胱機能はいかがですか?
    配なら、女性は「ウロギネ科(婦人科+泌尿器科)」、男性は泌尿器科を受診し、原因を探ってみてはいかがでしょうか?

  4. 「大」の失敗には
    全ての方に有効とは言えませんが、母の場合は水溶性ファイバーの服用で改善されました



認知症になっても最期まで人生を楽しみたい


排泄の失敗がなくなり、母は生きる自信を取り戻すことができました。認知症があるから無理ということはなく、改善できる手段はいろいろあると母を通じて知りました。

もし大切な誰かが困っていたら、我が家の経験のどれか一つでもお役に立てたらいいなと思っています。人生、最期まで楽しみたいものです。

介護スタート直後に母と二人でがんばった断捨離のことをふりかえっています。よかったらごらんになってみてください。

⇧ 自己紹介と我が家の介護のことをまとめています。最近アップしたその他のnoteの記事もごらんいただけます。

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