黒田日銀総裁の功績と安倍元総理と目指していたもの

記事を書こうと思った経緯

日銀が行っているイールドカーブコントロール(以下、YCC)の運用の見直しのニュースが出た中で、黒田日銀総裁の功績について、振り返りたいと思う。

【速報】日銀 金融政策を一部変更 長期金利の上限を0.5%程度に引き上げ

以下、私が運営しているオープンチャットにて、独り言にて、発言した内容を含み、加筆訂正したものである。

はじめに

かねてより、長らく、日本では、デフレマインドが漂っており、それにより、賃金上昇がされず、結果的に日本の経済成長率は、先進国の中で、低位で推移することとなってしまった。

その中で2012年に第二次安倍政権が発足し、その後、2013年の白川元日銀総裁の任期満了を待たずして、黒田日銀総裁を安倍総理肝いりの人事として、日銀総裁に、指名を行ったところからが、今回の振り返りの開始となります。

今回の政策変更を行った意図、意味

そして、2022/12/20におこなったYCCの政策変更の話に繋がります。
と最初は、この記事の後ろの方に、この章を持ってきていたのですが、今回、書こうと思ったきっかけがこれですので、冒頭に持ってくることにしました。

今回の政策変更は、日銀総裁から、ヘッジファンドへのクリスマスプレゼント、メッセージだったのではないかと考えました。

「あまり、ドル円を売り浴びせて、いじめないでよ。
そんなこと、これからもするつもりなら、日銀には、円安に対する対応策もいくらでもあるし、これまで同様、どんどん、有言実行していくから、覚悟してね」という黒田さんなりのメッセージだったのではないかと。

なぜこの、時期だったのかについては、以下、完全に妄想です。
まず、150円までに進んだ円安時期に、日銀が仮に今回の政策変更をしていたところで、小手先の円高にならず、円安基調を変えられないと考えていたのではないかという点。

そして、先日、岸田総理と黒田さんの会談が行われていたとのことで、その中で、岸田総理から、円安基調についてなんとか、ならないかと打診があったのではないかという勝手な推測。

また、次期日銀総裁に代替わりした際にあらゆる政策変更が取れるように、するためという意図も、含まれているのではないかと!

今回の政策変更の妥当性

今回、黒田さんが言われていたイールドカーブ・コントロールに歪みが生じていたため、その調整を行ったとの発言がありました。

これに関しては、以下を見ると明らかで、妥当性が有る政策変更だったと感じます。
10年もの国債の金利のみがガクッと下がっているため、今回、これに対して対処をするために、変更を行ったということです。

日本国債利回りの年限別金利図

上記画像は、以下より、取得しました。

黒田さんと安倍さんが目指していたものとは?

様々なことを目指して、今日も続いている最中のお二人の長い旅は始まるわけですが、今回は日銀目線ですので、以下が日銀として、目指すべき目標でした。

「物価安定目標2%の達成、及び、将来にわたり持続的な達成に目処が立つこと」

物価上昇率が、心地よい割合で、上昇していくことは、日本全体の賃金が上昇すること及び、ひいては、日本の経済成長率を高めるために必要だったため、政府と日銀は一体的に連携する必要がありました。

政府・日銀による共同声明の発表

上記のことから、政府・日銀による共同声明の発表をすることになります。
これにより、政府と日銀は強調して動いていき、デフレ脱却を目指して動いていくよと宣言いたしました。

大胆な金融政策に向けて~日本銀行と共同声明 | 首相官邸ホームページ

相次ぐ異次元の緩和

黒田さんが、日銀に就任後、足早に、これまでにない異例の金融緩和が行われていきました。

まずは、大規模緩和の始まりとなった量的・質的金融緩和です。

これまでとは桁違いの国債買入を行い、日銀当座預金(マネタリーベース)残高の大幅な増加を目指します。

そして、物価安定目標2%を少しでも阻害する要因、見通せなくなりそうな場合には、さらなる金融緩和策の用意があると、金融政策決定会合のたびに黒田総裁が会見にて、発信。

その度に、もう、そんなに取れる手法はないだろうと、ネタ切れ感を指摘され続けてきた。

しかし、その言葉のとおり、国債買い入れ額の順次大幅増額、マイナス金利の導入、フォワードガイダンスの内容変更、YCCの導入、そして、制限なしの指し値オペの毎営業日やります宣言からのその実行と様々な前例のない政策を行ってきました。

未だに批判され続けている日銀による株式、REITの買い入れを初めて行ったのも、黒田さんでした。

また、消費税増税といういわば、安倍総理の裏切りにあいながらも、様々な前例のない政策を導入していきます。

消費税増税という予想外

そんな中で、一緒に頑張ろうと約束をした安倍総理からのまさかの裏切りに合います。

そう、5%から、8%、そして、10%へと、順次引き上げた消費税増税です。

消費税は、いわば消費することに対する罰金とも評される悪名高い税金です。
そんな税金を上げればどうなるかは、一目瞭然です。
引き上げ前に、買いだめが起こり、引き上げ後は、買いだめ分、当分、消費は下がり、その後も財布の紐は緩むどころか、消費を抑えようとしていきます。

そうすると、モノは売れなくなり、値段を上げるどころか、下げざる負えなくなります。

結果的に、政府、日銀が目指す2%の持続的な物価安定目標の達成からは、遠のくこととなります。

しかし、そんなことは、安倍総理も、もちろん、わかり切っていました。
故に、15年10月に増税することが決まっていたものを、総理の決断で2度にわたり、延期をしましたが、19年10月に増税は行われてしまいました。

消費税増税は、民主党政権から政権交代した際の三党合意でもありましたし、財務省の圧力には、安倍総理も敵いませんでした。

でも、2度も大きな決断をして、延期をしてくれたのです。

日銀の金融緩和は、大成功だったけれど…

日銀がこの10年近く続けてきた異次元で異例の大規模な金融緩和は、何一つ間違っていなかった。
しかし、アベノミクスの三本の矢にあった通り、「①日銀による大規模な金融緩和」、「②機動的な財政支出」、「③規制緩和を含めた成長戦略の実行」の3つ全てが、着実に力強く実行されないと、冒頭に記載した目標を達成することはできません。

①は、黒田さんを始め日銀が十分すぎるぐらいやってくれました。

②に関しては、赤点もいいところで、全くできていません。
安倍さんも就任直後はやる気満々だったはずなのですが、財務省の強すぎる抵抗、緊縮派議員の抵抗により、実行、推進することは叶わなかったのです。

③に関しては、経済特区を設ける法案を通したりと、一部実行されたものはありました。
しかし、こちらも、②ほどではないにしても、不十分でした。

次期日銀総裁に望むもの

政府・日銀による共同声明の目標は全く達成させておりません。
達成の目処すら、立っていません。
そんな中で金融緩和の縮小、出口戦略へと向かっていくなど考えられません。

黒田日銀総裁の大規模な金融緩和を継承し、続けほしいと思っています。
もちろん、今の規模、内容をずっと続けるのは、円安圧力となり続けるので、難しいでしょう。

多少の調整、見直しを行っていくのは、もちろん必要でしょうし、するべきです。

しかし、大きな基調としては、大規模な金融緩和を冒頭の目標が達成されるまで続けてほしいと思います。

最後に

日本を良くしようと、復活しようと尽力した安倍晋三元総理と、黒田日銀総裁には、心から、敬意を評するとともに、感謝を申し上げたい気持ちです。

そして、骨太の方針の文言変更を含め、総理を辞した後も、まだまだ、粘り強く日本のために頑張っている最中に、道半ばで、あのような形で死去されてしまったことは私自身、悔しくて仕方ありませんし、ご遺族の方はそれ以上のやるせないものだったと推察します。

心から、ご冥福をお祈りするとともに、改めて、感謝を申しあげます。



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