春の特別講座「杜の都の邦楽絵巻」開催(箏と尺八の演奏動画あり)

去る3月24日、仙台市シルバーセンター7階と交流ホールを会場に、午前と午後の2部構成で春の特別講座「杜の都の邦楽絵巻」が開催されました。
午前の1部は、宮城教育大学で音楽学をご指導されている小塩さとみ教授をお招きし、「日本の音・日本の音楽~楽器と声の歴史~」と題し、日本音楽と楽器、声の歴史について、映像と音、そして先生ご自身の三味線と併せてご講話いただきました。

 皆さんは、「日本の音楽」というと、どのようなイメージを持つでしょうか。
仙台では、青葉祭りのすずめ踊りなどで、太鼓や笛の音など、日本の楽器を耳にする機会も多いかもしれませんが、それらの楽器がどのように日本に伝わり、どのような特徴があるのかを学ぶ機会は案外多くないと思います。
 小塩先生は、日本音楽の特徴を、音色重視、声楽中心、階層性の歴史をもつという3つの特徴に分け、時代と歴史を重ね合わせながら説明してくださいました。
 箏や三味線、日本の楽器と呼ばれるものの多くが日本発祥と思われがちですが、その歴史は遣隋使や遣唐使が中国に派遣された飛鳥時代までさかのぼり、大陸から伝わった楽器や音楽が、日本独自の美意識に従って楽器の改良や音楽作りを重ね、その文化の伝統を担ってきたのが邦楽を継承しているアーティストたちということがわかりました。
 手から手へ、口から口へ、身体を通して「日本の音、日本の音楽」が伝えられてきたのです。受講した58名の皆さまからは、はじめて知る、聞く音の歴史に、「和楽器の成り立ち深く理解できてよかった」「日本の楽器は世界に誇るべき楽器」といった声が多数寄せられました。

 午後の第二部は、1階の交流ホールに会場を移し、箏と尺八の生演奏を開催。箏を生田流大師範の伊勢雅之園先生、尺八は琴古流仙台竹友会会員の高橋聴雪(ちょうせつ)先生をお招きし、東北に伝わる古典の名曲を演奏していただきました。
 箏は遣唐使が日本に持ち込んだ楽器であり、部位の各所に「龍」の名前が付けられていること、東北は尺八の名曲の宝庫であり、サムライの時代から脈々と受け継がれている現代の尺八音楽が国内のみならず、海外にも愛好家が多いことなど、それぞれの楽器の歴史と演奏曲の解説を兼ねた贅沢至極の90分!

 本講座の最後を飾ったのは、箏と尺八の合奏。「さくら」「荒城の月」に合わせ、舞台に桜の花びらが舞い、満月が浮かぶ照明が照らされ、つかの間の邦楽絵巻に会場が酔いしれました。

「地震やコロナで心が折れそうになっていたが、心癒されるひとときだった」「日本音楽の特徴である音色の多彩さを体感した」といった声に、先生方も大変喜ばれ、音楽の持つ力に元気づけられた「特別講座」となりました。

 ご参加いただいた皆様、ご多忙の中、本当にありがとうございました。

 【講師著書紹介】
「日本の音、日本の楽器」小塩さとみ著 
出版社:アリス館