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チョコレートリリー寮の少年たち

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自己満足で書いているお話です。チョコレートリリー寮に住んでいる少年たちの、とうといまいにち。 ご飯を美味しそうにたべます。 (少年たちがいちゃいちゃします、要注意)
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2022年12月の記事一覧

ギフト①【チョコレートリリー寮の少年たち】

ギフト①【チョコレートリリー寮の少年たち】

ロロとリュリュが眠った夜中、僕は空中にミルヒシュトラーセ家の家紋をフローライトの杖で描いた。23時、ぎりぎり鳳が対応してくれるはずだ。
ふわりふわりとしながら暫く待っていると、優しいバリトンボイスが、やわらかく鼓膜を揺さぶった。
「エーリク坊ちゃん、こんばんは。如何されましたか?」
「鳳、今日も遅くまでお疲れ様。えっとね、大したことじゃないんだけど、僕、チョコレートリリー寮のみんなと物語喫茶レグル

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ギフト②【チョコレートリリー寮の少年たち】

ギフト②【チョコレートリリー寮の少年たち】

「……坊ちゃん、坊ちゃん……おはようございます……」
「……こうして寝顔をながめていると、昔のことを思い出す……ふふ、かわいい。こうして川の字になって僕ら、寝てたよね。坊ちゃん、寝顔がずっとあどけない……」
僕は聞き慣れた声でゆるゆると覚醒した。寝台がものすごく狭い。何事かと瞳を開くと、レシャとファルリテがぎゅうぎゅうと、おしあいへしあいしながら僕の寝台を支配していた。僕は腹筋に思い切り力を入れて

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ギフト③【チョコレートリリー寮の少年たち】

ギフト③【チョコレートリリー寮の少年たち】

「さて……じゃあまずは、おでんを食べに行くか。リアムさんに差し入れる分も手に入れよう。しかし、不思議な食べ物だな……」
ノエル先輩がスピカから手渡されたフライヤーを見つつ、先陣を切って歩き出す。セレスティアル舎は今日も大盛況だ。
「すごいね、人だかり。おでん効果かな、そんなに美味しいの?」
蘭と手を繋ぎ、指を絡めたり解いたりしながら問いをなげかけた。
「すっごくすっごく、美味しいよ!エーリクは、炊

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ギフト④【チョコレートリリー寮の少年たち】

ギフト④【チョコレートリリー寮の少年たち】

僕たちはめくるめく鮮やかな露店に瞳を奪われながら、はしゃぎつつ行進した。リヒトがブルースハープを高らかに吹き鳴らしている。そしていきなり立ち止まる。ちいさなせなかにぶつかってしまった。ごめんね、とあやまると、気にしないで!と朗らかな笑みを浮かべてくれた。
「わー!!すごい人。クレープ屋さんとフライドポテト屋さん、彼処ですか?」
「そうそう。併設されてるんだ。エメ・ラボっていうお店。レシャさんとファ

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ギフト⑤【チョコレートリリー寮の少年たち】

ギフト⑤【チョコレートリリー寮の少年たち】

かくして僕らは無事波止場にたどり着いた。たくさんの露天が軒を並べている。
「すごい、今まさに太陽が沈んでいくところ、奇跡みたい。綺麗な夕焼けです。まるで湯むきしたトマトのようです」
真っ赤な夕日が、嘘みたいなまぼろしをはらんで水平線にきえていく。しばらくの間、僕たちは黙って、ゆっくりその光景に見とれた。
「素敵ですね。僕とレシャはこのくらいの時間から夕飯の支度をはじめるから、こんなに雄大な空、どこ

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