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地域の人が楽しいまちには人が集まる。

(地域ものがたるアンバサダーに参加させていただいた2ヶ月で学んで感じたことを書きたいと思います。)

先日、富山県南砺市井波地区に行かせていただいた。
井波は日本遺産にも登録されている木彫りの町。なんと8,000人のうち200人が木彫り職人とのこと。風情ある美しい通りを歩けばそこかしこに工房があり、職人さんたちが作業している様子を窓越しに見ることができる。
この町には瑞泉寺という1390年に建立された大きな寺がある。その昔、1760年に瑞泉寺が火災で焼失した際に京都からやってきた彫刻師、前川三四郎が井波の大工に彫刻の技術を伝えたことから彫刻の技術が発展し、今日に続いている。

地域の外の人も中の人も楽しめる地域づくり

この町で、一般社団法人ジソウラボという団体の方とお会いした。
今回、代表の島田優平さんに井波の町を案内していただき、井波のまちのことやジソウラボの取り組みについて伺った。

ジソウラボでは地域を大きくとらえるのではなく、区画ごとに区切ってゾーニングし、その中で地域の活性につながる仕掛けを作っている。井波では町の景観を大切にした計画が進められており、昔ながらのレトロな建物の外観をそのままに中をリノベーションしていて、都市部でよくあるような、町の景観を無視して壊すようなことがされておらず、これもまた井波の魅力の一つになっていると思う。

代表的な例として、立ち並ぶ古民家の中を改装した「nomi」と「Bed&Craft」がある。「nomi」は燻製料理を中心に提供している飲食店で、燻製には木彫刻から出た木くずを使用している。古民家の間を入っていくとモダンで、しかし木の町らしく木のぬくもりが感じられる空間が広がっている。
「Bed&Craft」は一棟貸しの宿泊施設で、町の中に点在しており、それぞれの施設ごとに違う職人が施設を作品に見立てて空間を作り上げている。また、それぞれの職人から木彫刻を学ぶことができる体験もついており、まるでこの町で暮らすかのように滞在できる。
いずれもジソウラボの建築家の山川智嗣さんが手掛けた施設で、「nomi」と「Bed&Craft」は一緒であり完全な一緒ではない「泊食分離」の施設である。井波では飲食店が少ないため、訪れた人が食事をする場が限られている。
そのため「nomi」を飲食店として独立させることで、井波での滞在時間を増やすことができる。今後も計画的に飲食ができる場を増やしていくそう。今回、「Bed&Craft」には宿泊できなかったのだが、「nomi」にお伺いすることができ、ジソウラボの皆さんと食事をご一緒させていただいた。

食事がとても美味しかったのはもちろんのこと、この町をもっとこうしたほうがいいんじゃないか、とか、そういう話が飲みの場の話題になっていて、本当に情熱を持って地域に愛を持って活動しているのだということが伝わってきて、それがとても印象的だった。

出てきた話題の中で印象的だったことはたくさんあり、全部をメモしきれなかったのだけど、2つ、メモに残せていたことがある。

・nomiのようなおしゃれな空間ができて、楽しみが増えたということ。
井波では飲食店がどんどんなくなっていき、気軽に楽しめる場所が少なくなっていた中でとても嬉しいことだったそう。
そして、nomi ができて町を歩く人が変わり、新しい何か、が着実に町を良い方へ変えていく。
・町に核となる事業(なりわい)があることで文化が作られ継承されていくということ。
例えば井波では木彫刻の文化があるが、その昔、井波では養蚕をはじめとした商業が栄え、それらの商いに支えられて文化が発展していった。地域の文化の継承と発展には核となるものを作っていくことが重要。

現在進行しているプロジェクトの中に、とても立派な古民家の中を改装したブルワリーの計画が進んでいる。現在井波でビールづくりを手掛けている藤井公嗣さんの新たなブルワリーとして作っており、今後の計画では施設内でビールを楽しめるようにしたり、2階部分を宿泊できるようにするとのこと。外から人を呼び込む場所としてだけでなく、地域の人も集まって楽しめるような空間を目指している。
ちなみにnomiで藤井さんのビールを飲んでみたが、地域のものを素材に入れたビールは個性豊かな味わいで、クロモジを使用したものはやや苦味の強い中に、クロモジのさわやかな香りが素敵だった。

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そして、これらの計画を進めるのに地域の年配の人たちとの橋渡しになる北村隆洋さんがいて、地域を巻き込んだプロジェクトが進められている。
地域の色々な人が関わって地域を作り上げている様子、それから何より情熱と愛がひしひしと感じられて、この場にいられたことがとても嬉しかった。

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※nomi名物スモークハイボール。
スモーキーな三郎丸蒸留所のサンシャインのハイボールをさらに特殊技術でスモークし、スモークペッパーを振った、スモーキー&スモーキー&スモーキーな一杯。本当は動画で貼りたかった…

寺がつなぐ縁

井波には瑞泉寺という歴史ある寺院があり、門の前には「テラまち雑貨店」というお店がある。ここは瑞泉寺と地域の人たちをつなぐ活動の中でできた施設で、寺の敷地内にある使われていない施設を活用したお店だ。地域の子育て中のママたちが中心となって運営しており、手作りのお菓子などが置かれていたり、ワークショップを行ったりしている。

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伺ったこの日は太子伝会という井波の伝統行事が行われている期間で、お祭りのにぎやかさがあった。
テラまち雑貨店でもかき氷やアルコール類などの提供、また店頭では子供たちがヨーヨーすくいを楽しんでいた。

ウロウロしてると、まだ4か月だという赤ちゃんを抱いたママが声をかけてくれた。少しおしゃべりしていて驚いたのは、なんと井波に住んでいる人ではないということ。SNSでたまたまテラまち雑貨店のスタッフの方と知り合ったことがきっかけで名古屋から手伝いに来たのだそう。
「地域のママたちが中心でがんばっているところだって聞いて、なんだか楽しそうだと思って来ちゃった。」と笑っていた。

地域の人が楽しめる地域が人を呼ぶ

地域外からやってくる観光客が交流人口であるのに対し、継続的に地域外から継続的に関わる人口が関係人口で、私はそのひとりになりたいと思って今回地域ものがたるアンバサダーに応募した。

以前、6月に地域ものがたるアンバサダーのMTGで、鳥取県大山町で活動している貝本正紀さんのお話を伺った。
貝本さんから教えていただいたのは、「地域の人が楽しんで参加できる・挑戦できる地域をつくる」ということだった。

「地域づくりはお金がなくてもできる。むしろ、お金よりもふるさとを思う気持ちや、参加する楽しさが大事であって、あくまで住民が主体的に活動する地域にしていくことが大切なこと。」
「若い世代の地域づくりを加速させるには、それによって収益も得られる仕組みを作っていくことが重要。」

私は井波に実際に訪れて、この町の関係人口になりたいと思った。
大山町にも訪れてみたい。
地域の人が主体となって地域の人が楽しめる(愛着を持てる)活動によって地域の人が取り残されない、みんなが楽しいまちができるのだと思う。そして、そんなまちはとても魅力的だからこそ人が自然とやってくるのだと思った。例えば、テラまち雑貨店で出会ったママのように…

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