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アフリカでも日本かよ


30代後半、全く知らない人たちとよく旅行に行っていた。
羽田空港で待ち合わせてそこから、あちこちにいくのだ。
JTBやHISなどのツアーではなく、宿だけ決められていて、後は全員で話し合っていくという予定がないフレキシブルな旅である。
しかも、見知らぬ人と同室。
なんだか、すごく楽しそうじゃないか、、、あいのりみたいじゃないか。
バツイチになりたての俺には悲しみと同時に、ある幸運も起きていた。
偶然入った会社が上場してくれたおかげで、ストックオプションという泡銭が手に入ったのだ。
いっちょ辞めたろ。
俺は「脳汁が出るほど遊びたい人間」となっていた。貯金? 先のことなど知ったことかである。
今までしなかった海外旅行やら、よくわからない人たちとの出会いを求めて参加した。
参加者は大体一人参加が多くて、職業も年齢もバラバラだった。
バイトで生活をしている人もいれば、外資系で休みが長い人もいた。
そういう集まりなので、初日の夜は大体、みんな酒を飲みながら自分の人生のようなものを語る。それはメンバーが変わっても大体同じだった。
見知らぬ人同士だから、これからの生活に影響もないので、なんでも好きなことが言えるというのもある。
アフリカに行った時のことが思い出深い。
初日の夜だった。
みんなで乾杯したあと、数分後、女の子がいきなり叫んだ。
「あー、なんで、アフリカ来てまで悲しいんだろ! あなたは既婚?」
いきなり聞いてきたな、この人、、、
「いえ、バツイチですけど」
仕方なく答えると、
「結婚できてるだけ、いいじゃないですか」
彼女はいきなり管を巻いた。
「どうしたんですか?」
「一人参加のこんな旅の会にきてさ!友達は彼氏と遊んでる写真アップしてるのに!なんで私は結婚できないんだ」と叫んだ。
いきなり重っ。
話を聞けば、友達が結婚次々にしてしまって、焦っているという。
20代の貴重な時期をパイロットと付き合っていたのだがセフレ扱いされていて、別れてもいまだに連絡が来るんだよぉおおおおお、だけど、連絡きたら返しちゃうんだよぉおおおおお、と泣く。
みんなで彼女を慰めているうちに、いつしか振られ話選手権みたいなことになって全員の痛い話を始めた。
アフリカという非日常の国で、満天の空の下、話していることが結婚できない悲しみという現実と地続きの悩みなのが面白かった。
ある人は、彼女に婚約指輪を贈った翌週に、彼女が働くバイト先のモンゴル人に婚約者を取られたという話をした。
モンゴル人に婚約者を取られるってなかなかパワーワードだ。
IT経営者に付き合っていた彼女を取られた話も聞いた。
「ITってモテるんですかね?」と言う彼も面白かった。
そういう話を聞きながら、ラム肉を食べる。味も異国のスパイシーなやつ。よくわからない穀物。
満天の星空の下、聞いたことのない、異国の鳥の鳴き声。
そんな不思議な空間の中でする、悲しき日本のネタ話。
あー。全然、俺たち、日本忘れられてない。
全然、日本じゃん。
二十時間以上かけてるけど、日本が背中に貼り付いてる。
アフリカの蛾のデカさ。
バオバブの木の不思議な影。
だけど、話すことは全然、日本。
おもしろ。








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