見出し画像

(20)目標設定次第で、業績はアクセラレートする(レーター期)

スタートアップ「レーター期」の最初の記事です。
※レーター期:一般的には「事業が安定し継続成長が実現しIPOが視野に入る段階」を意味します。

今回の記事は、課題(20)「目標設定次第で、業績はアクセラレートする」です。

課題20目標設定次第でアクセラレート


①有楽町オフィスへの移転

2012年2月アルー株式会社は、創業前から数えて8番目となる有楽町オフィスに本社を移転しました。広さは約220坪。ビルのフロアの半分を借りていました。
(神楽坂→本郷→湯島→銀座シェアオフィス→西新橋→市ヶ谷→有楽町)

本記事はレーター期に分類していますが、2012年2月はミドル期の最後の年と考えています。業容拡大に伴う様々な組織問題に直面したミドル期の6年間もようやっと落ち着き、安定成長に向けて動き出していたタイミングでした。

JR有楽町駅を交通会館の方に出て、高架線沿いに東京駅方面に向かうと、LOFTの脇に小道があります。その小道を進んでいった奥にある住友不動産丸の内ビルの3階に入居をしました。すぐ隣には、鍛冶橋駐車場があり、山手線・新幹線の高架線の向かい側には、東京国際フォーラムがあります。東京駅の丸の内南口まで徒歩5分程度と近く、とても便利な立地でした。

この有楽町オフィスのビルは、山手線の東側(外側)にあり、東京駅の出口でいえば八重洲側なのですが、住所はなぜか「丸の内」でした。「いよいよ丸の内にオフィスを構えることができたのか」と無邪気に喜んだことを記憶しています。

実際に丸の内には、当社の顧客である大企業が多く集積しており、徒歩で訪問をすることができるとても効率的な場所でした。

有楽町オフィスには、丸4年間、2016年3月末までいることになりました。
当社のレーター期は2015年末までですので、レーター期を丸々過ごした場所となります。

ちなみに住友不動産丸の内ビルは、定借での入居であり、元々東京都の保有資産だったなどの理由が重なり、立地対比で家賃をとても安く抑えることができました。当社を含む全入居企業は2016年の同時期に退去し、現在は、丸の内警察署の建物となっているそうです。

※住友不動産丸の内ビル
(屋上のアンテナが特徴的。この画像は丸の内方面から撮影)

画像2


②経営体制の大幅強化

2013年1月江田副社長が新たにアルー株式会社の経営陣として参画されました。江田さんは、私や当社代表の落合さんよりも一回り上の世代の方です。

元々超大手人材サービス企業の経営陣のお一人でした。その頃より落合さんと親交があり、2010年のアルー上海現地法人設立時の総経理(社長)となった陳さんをご紹介いただいたこともありました。(陳さんは、元々超大手人材サービス企業に新卒で御入社され、江田さんの部下の部下だったとお聞きしています)

この2013年のタイミングで、色々な状況が整い、江田さんに当社にご参画をいただくこととなりました。

私は、江田さんから本当に多くのことを学ばせていただきました。色々とお𠮟りも受けたり、フォローをいただいたりなど感謝の言葉を尽くせません。
株式会社エデュ・ファクトリー(アルーの創業時の社名)設立時より、私には「上司」と呼べる方はおりませんでした。もちろん代表の落合さんは社長ですので上司にあたりますが、共同創業者・パートナーという感覚もありました。そのため新卒で入社をしたA.T. カーニーの頃より10年ぶりに上司ができたことになります。

2003年の創業以来、未経験の起業・事業立ち上げ・経営を、よく言えば試行錯誤をしながら、悪く言えば我流にやってきました。そのため多くの非効率性があったり、「普通の大人の会社」はしないような失敗もしてきました。

江田さんに参画をいただいたことで、業界トップクラス企業の取組み、考え方を学び、当社に取り入れることができました。特に本noteのテーマである営業組織のマネジメントについては、大きな進化をさせることができたかと思います。現在でも心から尊敬する上司です。

一方で、江田さんは正解を教えてくれるという方法ではなく、当社の状況を徹底的に把握され、その上で議題を提起し、合理性を持って判断をするという、フラットな形で経営に参画いただきました。

江田さんから学ばせていただいた「中長期視点を持ち議論を尽くし、合理性で最後の判断をする」という経営の基本姿勢は今でも私にとって大きな軸となっております。
(そんなこと教えていないとおっしゃられるかも・・・。私が勝手に感じ取ったというか)

当然に聞こえるかもしれませんが、事業拡大中のスタートアップの「ぐちゃぐちゃな現場」の中にいると、合理性に基づく判断が全くできておらず、感情・主観的な想いを根底に論理武装をして議論をしていたことは過去多くあり、反省することばかりでした。

江田さんは2016年秋にご退任されました。レーター期以降の組織的な業績拡大を強く推進していただきました。


③営業目標設定の改革

江田さんが参画し、最初に議題として上げたことは営業部門の目標設定の改革でした。

この改革には幾つかのポイントがありますが、活動の達成目標とする指標が「受注」なのか「売上」なのか、という大きな論点がありました。

企業研修サービスの特性上、受注と売上にはタイムラグが存在します。
「受注」とは、研修実施の顧客との契約のタイミングです。
一般的にはその数か月後に、受注した研修を実施し、そこで初めて役務提供となるので「売上」を計上することができます。


当社の営業部の目標設定の歴史を振り返ると、2005年頃の高橋浩一さんが営業部を立ち上げた頃にどういう目標設定をすべきか議論をしたことを記憶しています。当時は、なんとか研修事業を立ち上げるということを目的としており、1社でも多く受注をするということを目標に掲げていました。


その後、2007年・2008年に営業部の大幅増員、KPI管理を強化した後は、営業部の目標を「売上」に変更しました。

2007年・2008年時の変更の理由としては・・・
(1)受注は、顧客事情でキャンセルされることもあり、業績目標として不安定であると、当時感じていました。

例:2021年11月に、翌年2月実施の研修を受注しました!→営業メンバーを評価します→年が明けて顧客都合で研修がキャンセルになりました。
既に評価をしているのをどうする?次の期にマイナス評価する?等論点が出てきます。それを解決するテクニカルな仕組みを導入し、管理・運用をするには、当時の組織が未成熟過ぎました。

(2)売上はシンプル。管理しやすい
2007年・2008年当時の問題は、営業実績数値、活動量などのKPIが不明確であったことでした。不明確な状態に基づき、誤った経営意思決定をするということが問題であったため、シンプルで不明確な状態にならない数値を目標とし使うのがよい、という考えがありました。

上記の目標指標として「売上」をその後も継続して採用をしてきました。

2013年の江田さんからの提案は、目標指標として「売上」から「受注」に、再度変更をしようというものでした。
(厳密にはもう少し別の概念なのですがここではシンプルに記載します)
そして年2回の売上目標設定から、年4回の受注目標への設定に変更するというものでした。


2013年初時点で、半期単位で売上を目標管理指標としていたことで、以下のような問題がありました。
(1)売上は、数か月前の時点で決まってしまっている。そのため、当該期の業績を伸ばそうというエネルギーが生じづらい。淡々と仕事をしている。もう一歩上を目指そうという雰囲気がない。
(2)半期単位では、PDCAの回転が遅い。
(3)経営管理のための指標になっており、現場をエンパワーするものではない

業績をアクセラレートすることが求められた当時のアルーにとって、受注を指標とし年4回の目標設定をするという案を江田さんはご提案されました。

受注を目標とする際に生じる様々な不安定さ(例:キャンセルの対応、押し込み受注問題等)については、ルールを整備すること、営業事務機能を強化し計数管理とチェックを強化することで対応が可能ということもわかりました。2007年当時の当社ではそこまで余力がありませんでしたが、レーター期の当社では管理可能な内容でした。


2013年1Qより受注を指標をとした営業目標の制度がスタートしました。
受注を指標としたことで、期末の最後の一瞬まで追いかけ、全社で目標数値達成を目指すエネルギーが生まれました。
2013年1Qは、前年度の時期別の受注金額と比較しても、上回る結果となりました。

私はこの出来事を見て、業績目標設定とその運用次第で、組織はこんな大きく変わるものなのかという驚きを感じたことを記憶しています。


④営業目標設定の水準感:フタコブラクダ

営業目標設定の水準において、もう一つポイントがあります。
ストレッチゴールが大切と一般的に言われますが、あまりにも高い目標を掲げることは意味をなさないと考えています。(企業のカルチャーによっては、ボールは手前に落ちるため高い目標を掲げることが大切というところもあるかとは思います)

重要なのは、あと少しの頑張りを引き出す「達成可能なストレッチゴール」です。

理想的な「達成可能なストレッチゴール」に目標を設定することができれば、結果としてメンバーの分布は「フタコブラクダ」の背中のこぶのように、2つの山に着地します。

この2つの山とは、達成率95%(未達成)の方々と、達成率100%をギリギリ超えるあたりの方々の分布です。反対に山の谷となるのは、その間の96~99%のところの方々です。

なぜこうなるのでしょうか?
谷である目標達成率96%~99%というのは「あと少し頑張れば100%達成となる」水準です。この方々が「今期はもう無理かな」と思わなければ、最後のがんばりを行い100%に近づくのです。

95%のところに一つ目の山ができるのは、目標達成が難しかった方々の集まりです。それでも「達成可能水準ストレッチゴール」ですので、最初から50%、60%等の大幅未達というのは起こりづらい状況です。

達成を最後まであきらめないためには、個々人のモチベーションや組織の雰囲気、マネジャーの管理というものだけではなく「あとちょっとがんばればいける!」とドライブをかける目標水準が大切となると考えております。

当社では、過去の営業メンバー各人の受注実績、リピート率、今後の目指したい経営上の業績目標、期初時点での受注/ヨミの総量等を多面的に検討して、「達成可能水準ストレッチゴール」の設定に取り組んでいます。

営業目標とはあくまで「業績アップのツール」であり、「達成したい」と営業メンバーの方々に思っていただくことが重要です。


本記事のまとめ

◆受注目標に変えたことで、全社で目標数値達成を目指すエネルギーが生まれた
◆「達成可能なストレッチゴール」に目標を設定することで、後少しの頑張りを引き出す
◆営業目標とは「業績アップのツール」であり営業メンバーの意欲を引き出すためのもの

次回の記事は・・・・

======================

本記事を含む「レーター期」の全体像を解説した記事はこちらになります。
レーター期のスタート時点・主たる活動・到達地点について解説しています。よろしければぜひご覧ください。

======================

<「スタートアップ営業組織作りの教科書」をまとめて読むには↓>

スタートアップ営業組織作りの教科書トップ画像

======================

本noteでは別途アルーの「研修プログラム開発のストーリーとノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

<アルーのすごい研修開発バイブルを読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル

======================

お問い合わせ・資料請求

アルー株式会社への研修のご相談はこちらからご連絡をいただけますと幸いです。

お問い合わせ・資料請求

新入社員研修、管理職研修、DX人材育成、グローバル人材育成、Eラーニング、ラーニングマネジメントシステム等、企業内人材育成の様々な課題にお応えいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?