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【保存版】まとめ:研修プログラム開発ノウハウの全体像と要点

アルー株式会社の100本ノック研修プログラム開発のノウハウをまとめた「すごい研修開発バイブルnote」をこれまでお読みいただきありがとうございます。13の研修プログラムについて、開発の背景ストーリーとノウハウ(DNA)を綴ってまいりました。

<すごい開発バイブル まとめて読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル


序文にも記載をいたしましたが、元々私や当社創業メンバーは教育研修業界出身ではなく、創業当初は手探り・試行錯誤ばかりでした。お客様向けに一つ一つ研修プログラムを開発しお届けしていく中で少しずつ開発ノウハウを蓄積し、洗練していくことができました。

本noteマガジンの最終回として、これまでプログラム単位で語らせていただいたノウハウ(DNA)を整理して、全体像と要点をご説明いたします。


研修プログラム開発の全体像について

当社が提供する研修プログラムは、お客様(顧客企業)と受講者(顧客企業の社員)の両者がユーザーとなります。両者のニーズに対応をしたプログラムを目指すことが開発の大前提となります。

そうしたプログラムを再現性高く開発するために以下の観点の検討が必要となります。

①商品設計
②プログラム全体構成
③ラーニングポイント調査
④ラーニングポイント設計
⑤解説設計
⑥演習設計
⑦演習アーキテクチャ設計
⑧開発体制
⑨開発後改定/拡販

以下、各項目について各プログラムで記載したDNAを踏まえつつ解説をさせていただきます。


①商品設計

商品設計とは「作るべき商品を定めること」です。
誰に対して、何を提供するのか?、そのコンセプトを定めることがゴールとなります。

当社の開発の多くのケースにおいては、顧客が実際に存在していました。
DNAワーク」の場合では、無敗営業高橋浩一さんが2枚の提案資料で受注をしてきた形のないプログラムを私が開発をしました。お客様が求めるものが定まっていましたので、その要件を具体的な企画に落とし込んでいくことが求められます。

一方で、顧客が具体的に存在せずプロダクトアウトで開発した研修プログラムもあります。「グローバルコミュニケーション100本ノック」は、開発時点で顧客がいたわけではないため、仮説ベースで顧客課題を定義していきました。こうした場合は、よい(売れる)商品を作るという意味では、より難易度が高いものとなります。成功すれば競合企業に先んじて、顧客に提案ができるというチャンスとなりますが、多くの場合不発でありました。(グローバルコミュニケーション100本ノックは幸いながら、海外派遣研修というより大きなソリューションを事業化するきっかけとなりました)

商品設計では、具体的には以下の項目を詰めていくことになります。
・開発背景(市場要因/自社要因/競合要因)
・リリース時期(α版/β版)
・研修日数
・受講対象者
・受講パターン
・ターゲット顧客、規模、業界、顧客内担当部署の特定
・顧客企業の課題、バイヤーにとっての価値、受講者にとっての価値、
・変容設計(Before⇒After/どのレベルまで)
・効果測定定義
・価格
・販促構想
・販売の仕方(ソリューション全体/組み合わせ例)
・競合調査、ポジショニング

上記のような企画を詰めつつ、最も難しいのは「コンセプトメイキング」となります。一言で言うと何の研修なのか?に答えられることです。
そのコンセプトがお客様と受講者の両者の課題に刺さることが大切ですが「ひらめき」が求められる世界となっています。

コンセプトを体現する商品名=研修タイトルを付けることができると望ましいと考えています。
「プロフェッショナルスタンス100本ノック」は、当初「仕事の進め方100本ノック」という名称でしたが、名前を変えたことで大きく販売が進み、当社の最大のヒット商品の一つとなりました。

<関係するDNA>
DNA37:第一にお客様と握っている与件を把握する(プロフェッショナルスタンスシミュレーション)
DNA16:初期顧客を想定してテーマ選定をする(戦略的思考100本ノック)
DNA7:タイトルは重要。普遍的であるが、差別化されたものをつけることが大切(プロフェッショナルスタンス100本ノック)
DNA28:ひと言で言うと何の研修なのか?が答えられることが大切(プロフェッショナルコミュニケーション100本ノックB)
DNA31:「研修商品差別化」だけを目的とした「差別化」はするべきでない(プロフェッショナルマナー100本ノック)
DNA33:斬新さと、世間からの乖離は紙一重(プロフェッショナルマナー100本ノック)
DNA55:アルーとしてのメッセージを発信する(自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック)
DNA56:アルーの研修は「ブレーキ(するな!)」ではなく「アクセル(こうしよう!)」でありたい(社会人の基本100本ノック)
DNA6:競合プログラムの特定と、徹底的な研究・ベンチマーキングは重要(プロフェッショナルスタンス100本ノック)
DNA60:サブ講師はできるかぎり必要にならないように工夫する(社会人の基本100本ノック)
DNA61:次の時代を狙ったテーマ選定をする(グローバルコミュニケーション100本ノック)


②プログラム全体構成

プログラム全体構成とは、商品設計に基づき「研修としての構造を定義すること」です。後述のラーニングポイント調査やラーニングポイント設計と、行ったり来たりをしながら行います。

企業研修プログラムは多くのケースにおいて、1日間や2日間などで行われます。この工程を通じて「タイムスケジュール」の概要が定まることがゴールとなります。

「高揚感・挫折感・達成感」というキーワードを用いて企画されたDNAワークやパスタブリッジのように、研修というものはLIVEイベントです。参加する受講者の方がどのような体験をするのか?(ユーザーエクスペリエンス)を、学びの内容であるラーニングポイントと共に設計していきます。

<関係するDNA>
DNA4:シンプルかつインパクトのある掴み演習を作る(ロジカルシンキング100本ノック)
DNA10:講師のオペレーションのし安さを考え、ボリュームを絞り込む(プロフェッショナルスタンス100本ノック)
DNA14:受講者の制約条件を明確にする(DNAワーク)
DNA18:物語を使い概念全体像を理解させる(戦略的思考100本ノック)DNA20:盛り上がる演習を特定し、盛り上げるための仕掛けを作る(戦略的思考100本ノック)
DNA40:音楽やリズム感、ビジュアル、香りのイメージなどアート的な感覚をプログラムに入れる(プロフェッショナルスタンスシミュレーション)
DNA44:高揚感、挫折感、達成感を体験できるようにデザインする(パスタブリッジ)
DNA45:予定調和に終らない、偶発性から受講生が得られる学びも存在することを認識する(パスタブリッジ)
DNA49:受講者レベルに合わせた研修への参加ができるように、レベル別の取り組み方を明示する(ネゴシエーション100本ノック)
DNA58:クライマックスは盛り上がる演習にする(社会人の基本100本ノック)


③ラーニングポイント調査

ラーニングポイント調査とは、「研修で伝える中身を調査すること」です。
基本的な思想として「インプットなしにアウトプットできない」というものがあります。

当社の研修プログラム開発では、開発者自身(私)があまり知見がないテーマについても顧客要望に基づいて開発を行ってきたケースが多くあります。代表的なケースとしては、心理理論TA(交流分析)を題材としたプロフェッショナルコミュニケーション100本ノックBです。

そのため十分な時間を通じて、研修で扱う学びの内容を調査することが大切です。開発プロジェクト全体の20%程度の時間かけて行うべきです。

ラーニングポイント調査の代表的な進め方としては以下の2点があります。

(1)書籍調査
コンテンツ内容に関する、書籍を10冊程度調達し、複数の書籍の目次を書き出していきます。
複数冊記載をすると、重複している点等が見えてきます。

(2)インタビュー調査
コンテンツに関して知見が深い人物にアポイントメントを取得し、インタビューを実施します。
インタビューにおいては、その方の事実ベースの経験談を伺った上で、本テーマについてのポイントについて考えを伺います。特にユニークな事例を聞き出すことが大切です。

ラーニングポイント調査を通じて把握すべきは、
「全体像」と「重要ポイント」と「ユニークな事例」です。
※重要ポイントは、ラーニングポイント設計に、自然と繋がっていきます。
※ユニークな事例では、解説設計や演習の題材に活用することができます。

<関係するDNA>
DNA1:開発者自身が培ってきたものをLPとして落とし込む(ロジカルシンキング100本ノック)
DNA17:テーマの内容は、短期集中的にインプットして全体像を理解する(戦略的思考100本ノック)
DNA23:良書からインスピレーションを受けてラーニングポイントを創る(プロジェクト型リーダーシップ)
DNA26:外部の専門的なセミナーに参加するなど足を使って情報を集める(プロフェッショナルコミュニケーション100本ノックB)
DNA46:ラーニングポイントを作る際には、競合の教材を徹底的に解読する(ネゴシエーション100本ノック)
DNA51:ラーニングポイントが書籍に落ちていないテーマは、インタビューを重ねて創り上げる(自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック)
DNA62:ラーニングポイントの特定には専門書籍を5冊買って目次を写経する(グローバルコミュニケーション100本ノック)


④ラーニングポイント設計

ラーニングポイント設計とは「研修プログラム内で取り扱う学びを絞り込むこと」です。
上述の通り企業研修は、1~2日間と限られた時間で行われます。そのため学びの内容を絞り込むことが重要になってきます。

ラーニングポイント調査を通じて「全体像」と「重要ポイント」と「ユニークな事例」を把握することができているはずです。
全体像を担保しつつ、重要ポイントを取り上げ構造化をしてきます。

絞り込むことは優先順位付けですが、2つの観点が必要となります。
(1)捨てること
そもそも取り上げないものを決めていくことが大切です。
お客様や受講者の課題を踏まえ、研修ゴールに対して効果が低いものは大胆に切り捨てることが大切です。

(2)扱いの大小レベルを決めること
切り捨てるべきでない内容であったとしても、扱いの大きさをコントロールします。
重要な学びのポイントは、演習時間を含めて2時間程かけて取り扱うこともあります。
一方で知っておいて欲しいが、時間をかけるほどでもないノウハウ(サブHOW)は、スライド1枚で簡単に解説するだけに留める等。(または1行説明に留めるなど)

この絞り込みが、研修のメッセージの伝わりやすさ=効果を決める大きな要因の一つとなっています。

ラーニングポイントの絞り込みが非常にうまく行った例は、当社の創業の商品である「ロジカルシンキング100本ノック」です。ロジカルシンキングに必要な概念を、大原則「ピラミッド構造」と4つのルール(Why So?、MECE、So What?、グルーピング)に絞り込みました。この4つのルールは当社がご支援してきた多くのお客様企業で浸透してしております。

ここまでが研修開発における「上流工程」=企画検討パートとなります。

<関係するDNA>
DNA2:ラーニングポイントを絞り込む(ロジカルシンキング100本ノック)
DNA8:対象者に対して必要な学びがワンパッケージで入っているという構成が重要(プロフェッショナルスタンス100本ノック)
DNA19:ラーニングポイントは重要な点のみに絞り込む(戦略的思考100本ノック)
DNA27:ラーニングポイントは受講者視点に立って本当に使えるものだけに大胆に絞り込む(プロフェッショナルコミュニケーション100本ノックB)
DNA32:従来テーマは、押さえるべき基本があることを認識する(プロフェッショナルマナー100本ノック)
DNA42:学びのポイントを一つだけに絞り、徹底的に繰り返すことでメッセージを落とし込む(パスタブリッジ)
DNA63:ラーニングポイント絞込みは役員必須参加で検討会議を実施する(グローバルコミュニケーション100本ノック)
DNA53:ラーニングポイントはキャッチーなタイトル付けをする(自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック)


⑤解説設計

解説設計とは「ラーニングポイント単位の講義解説資料を作ること」です。

この段階から研修開発は「下流工程」=実制作パートとなります。これまでの工程で企画した内容を具体化していく段階となっております。

「講師視点で講義をするつもりで、ストーリーが流れているか」
「受講者から共感性が得られる内容になっているか」
「受講者のリテラシーが高い場合、その分野の特殊性は描かれているか」
という観点に留意しながら、資料化を進めていきます。

解説設計の一番重要なポイントとしては「WHAT→WHY→HOW」という構造です。

①What(最も言いたいこと)→why(なぜ必要か?)→how(メインhow・・・whatに直結するもの/サブhow・・・メインhow以外に伝えたいこと)→まとめ(what/why/how/)の構造で作成します。

②メインhow・・・付加価値をつけるため、更に一歩踏み込むことが必要です。
メインhowはツール的なものを紹介できると望ましいと考えています。
覚えやすいフレーム(例えばチェックリストや雛形など)が良いですね。

具体例としては、プロフェッショナルスタンス100本ノックでは「ゴールの確認」というラーニングポイントに対するメインHOWとして「5W2H」というフレームワークを紹介しています。

③事前ヒヤリング等で入手した情報を元に、具体的事例を盛り込むことも解説設計では重要です。

<関係するDNA>
DNA64:演習問題より先に解説を作り上げる。解説の構造はWHAT→WHY→HOWにする(グローバルコミュニケーション100本ノック)DNA43:スライドはシンプルにすることで、伝わることがある(パスタブリッジ)
DNA57:キーラーニングポイントは、簡潔かつ強いメッセージで受講者の記憶に残す(社会人の基本100本ノック)


⑥演習設計

演習設計とは「ラーニングポイントを伝える受講者参加パートを作る」ことです。

演習(ワーク、ケース、ゲームなど)は、LIVEコンテンツとしての研修にとって最も重要な要素と考えています。演習がないのであれば研修に参加する意義はなくなってしまいます。書籍を読んだり、YOUTUBE等で動画を見れば済みます。しかし書籍や動画よりも研修が効果を発揮するために必要なものが「演習」なのです。

しかし演習作りは、クリエイティブな発想が必要になります。情報を集めてきて整理すれば教材の解説を作ることはできます。しかし、演習という参加パートを開発するには、様々なアイデアの組み合わせが必要になります。

(1)演習作成における作成する資料項目
・演習作成アウトプット一覧
・表紙(演習の目的)★
・物語(課題の設定・題材の設定)★
・問い(受講者が答える・取り組むことの定義)★
・演習の進め方
・情報(インプット)
・解答用紙
・解答例
・演習解説(演習をどう解くのか、どういう考え方に基づいているのか)

作成すべき項目は上記の通りです。その中で、特に★が付いている箇所が開発が難しい部分です。

(2)具体的にどのように開発を進めるか
演習づくりの方法は、以下の手順で進めていきますが・・・実際には「進んだり戻ったり」を繰り返しながら内容を練り込んでいくとお考えください。

ステップ1:演習の目的の明確化
・何を学ぶのか?当該演習にて対応するラーニングポイントを特定します。

ステップ2:問い(何をするか)★
・ワークの形式の選定:演習の目的とマッチしたワーク形式を選択します。
ワーク形式とは「個人ワーク検討→グループワーク」や「ペアワーク」、「ビジネスゲーム」、「ビジネスシミュレーション」等ワークの基本アーキテクチャを指します。
・できることを前提とした演習か、できないことを前提とした演習か?を定めます。
・オープンクエスチョン型 または クローズドクエスチョン型なのか?を定めます(解答にどれぐらいの幅をもたすのか)。
例①新人研修:クローズドクエスチョンが多めのほうが盛り上がる(もやっと・ふわっとしない)
例②管理職研修:クローズドクエスチョンで扱う題材だとマッチしない(YesNoの簡単な問題ではない)

ステップ3:題材(どんな具体的テーマを扱うとよいか)★
・演習のケース世界観を作ります。
(そのためには世界観の調査を先に行います。数字や歴史などの具体を押さえると世界観の構築に役立ちます)
・前提を整理します(業界・登場人物・設定など)
・実話に基づくケーススタディは、設定がリアルのため効果的です。

ステップ4:研修1日ストーリーの中で位置づけを検討する
・ワークの繰り返しが単調にならないように、また参加者の成長感が感じられるように、オープン・クローズ/ワークの形式の使い分け、流れを構築していきます。

ステップ5:情報(インプット)資料作り
・目的に応じて情報量を決定します。
・難易度を上げたければ、情報の量を増やし、時間を短くします。
・考えさせることを重視したい場合は、情報量は一定に絞込み、その分欠けた要素を補わせたり、組み合わせたりして、正解を導き出させます。
・専門用語や横文字などに注意し、対象者が理解できる内容になっていることも重要です。

ステップ6:解答用紙作り
・問題のオープン/クローズ度の割合と関連して、受講者が回答をしやすいフォームを設計します。

ステップ7:解答例、演習解説作り
・クローズ型の場合は、典型的な解答例と、それに至るロジック、ラーニングポイントとのつながり(どのラーニングポイントが活用できるか)を明記します。
・オープン型の場合は、よくある解答のパターン例を明記し、それに至るロジック、ラーニングポイントとのつながりを明記します。オープン型の場合はどちらの解答例も想定され、正解不正解は無いことが伝わる内容とする必要があります。
・トライアルを実施し、想定どおりの解答になるかどうかを確認する必要があります。
・演習におけるメッセージと、ラーニングポイントのメッセージの整合は完成後チェックをします(作業は別々に行うことが多いので、最終的にズレるリスクがあります)。

よい演習を作る際には、世の中に存在する良い演習・ワークの骨子をレバレッジ(展開)するということも有効な手法です。既存の演習を「そのままパクる」のは望ましくありません。しかしその演習の「良い要素」を特定し、その要素を活かしつつ、具体的な題材・ケース設定を変えてアルーオリジナルに昇華させる、ということも多く取り組みました。

自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック」において、アイスブレイク演習は上記の手法で開発しました。(アルー山ワーク)

(上記リンクは「前編」です。アルー山ワークについては「後編」の方に記載しております。前編記事内リンクよりご参照ください)

<関係するDNA>
DNA3:日常の場面に結びついた演習設定とする(ロジカルシンキング100本ノック)
DNA12:ノック演習の基本構造を踏まえて、応用を常に考える
(DNAワーク)
DNA13:演習ではインプットとアウトプットを明確にする。プロセスはルールを明確にする(DNAワーク)
DNA30:他コンテンツとの類似の演習を作ると後で苦労する(プロフェッショナルコミュニケーション100本ノックB)
DNA47:実話に基づくケーススタディストーリーを創る(ネゴシエーション100本ノック)
DNA48:ケーススタディの登場人物は、実在の人物をモデルにする (ネゴシエーション100本ノック)
DNA50:受講生の所属する業界と近いケース設定を作る場合は、現実から乖離しないようにする(ネゴシエーション100本ノック)
DNA54:世の中にあるインパクトのある演習を元ネタにして、設定を全部作り変えることでオリジナルにする(自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック)
DNA59:体感ゲームは完全オリジナルで作るよりも、既存のゲームを改変する方ができがいい(社会人の基本100本ノック)
DNA41:過去の開発資産を活かす(パスタブリッジ)
DNA39:実行段階での資料印刷・備品準備のトラブルを回避するための徹底的な工夫をする(プロフェッショナルスタンスシミュレーション)
DNA24:トライアルを重ねてブラッシュアップする(プロジェクト型リーダーシップ)


⑦演習アーキテクチャ設計

演習アーキテクチャ設計とは「演習自体の基本構造を設計する」ことです。
このアーキテクチャ設計は、全ての演習開発において行われるものではなく「新しい演習形式」を開発する際に実施します。

アルーの100本ノック研修は、ロジカルシンキング100本ノック等の初期の研修開発を通じて固まった「標準的かつ効果の高い演習アーキテクチャ」(構造)が存在します。
(1)ノック演習の課題/ストーリーの紹介
(2)受講者が答えるべき「問い」の提示
(3)インプット情報の提示
(4)回答用紙の提示
(5)個人ワークで検討
(6)グループワークで回答づくり
(7)発表とフィードバック
(8)演習回答の解説/ラーニングポイントの解説
(9)質疑応答

多くの100本ノック研修において、上記の構造をベースとしてラーニングポイントに合わせて題材や演習のやり方を多少カスタマイズをして、演習を作っていきます。
しかしながら、顧客要件等に基づき、新規の演習形式に対応することが求められる場合があります。
この場合は、題材を考える前に、アーキテクチャを先に検討することが必要になります。

代表的な例としては、プロフェッショナルスタンスシミュレーションが挙げられます。この研修は、前述の標準演習構造を活用せず、「職場の疑似体験」を再現するために入念にアーキテクチャの企画開発を行いました。

DNA22:未知の演習形式を開発するには、アーキテクチャレベルから検討する(プロジェクト型リーダーシップ)
DNA38:アーキテクチャの設計を固めてから、中身(演習内容・ラーニングポイント)を創りこむ
(プロフェッショナルスタンスシミュレーション)


⑧開発体制

ここまでは開発のプロセスに関するノウハウですが、本項目は「体制構築」における要点です。
創業当初は、職人的な開発業務を行っておりましたが、よいチームを構築することがよい開発につながると考えております。

一つ目ポイントとしてはチーム内役割分担が重要です。
顧客要件を把握する人(営業)と、企画を形にする人(開発)と、プロジェクト管理をする人(PM)の役割分担を行うことが重要ですね。

二つ目のポイントとしては、開発のゴールに対する明確なビジョンをもった人をチームに入れることが大切です。
プロジェクト型リーダーシップの開発プロジェクトにおいては、パートナー企業の責任者Kさんが方向性についてアドバイスをしてくれる大きな存在でした。Kさんは内容の方向性について明確なビジョンを持っており、適宜アドバイスやダメだしをしていただきました。Kさんのおかげで迷走する開発を前に進めることができました。

補足的なポイントとなりますが、心理検査MBTIにおける「S(感覚)タイプ」と「N(直観)タイプ」の両方の観点で開発を進めることは重要です。

ここでは詳しく述べませんが、「Sタイプ」の方が受け取りやすい情報は時系列・ステップバイステップの形式であり、「Nタイプ」の方は全体像やイメージの方が情報を受け取りやすいという違いがあります。開発チームがどちらかのタイプに偏ると、他方のタイプの方からわかりづらい教材になってしまうということがよく発生します。

<関係するDNA>
DNA11:尖った企画を発想する人物と、尖りを丸めず形にする人物でチームを組む(DNAワーク)
DNA25:プログラムの明確な完成ヴィジョンを持つ発注者を、開発者以外に設定する(プロジェクト型リーダーシップ)
DNA52:売った人、創る人、進行管理をする人でプロジェクトチームを創る(自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック)
DNA21:ノウハウを得るための安易な外注は失敗の素(プロジェクト型リーダーシップ)


⑨開発後改定/拡販

最後の項目です。研修プログラムは一度開発して終了ではなく、お客様の研修で納品後、ブラッシュアップを続けることでよりよい成果を創出するようになり、また商品としても拡販に繋がっていきます。メンテナンスや内容の見直しは非常に重要です。

アルーでは100種類以上の研修プログラムがあるため、メンテナンスを行うことも多大な工数が掛かり容易なことではありません。かつては年1回のメンテナンスサイクルを設定し、営業メンバー、パートナー講師の方々から声を集約し対応するという取組みを行っていました。

誤字脱字程度の微修正であれば、クイックに行います。一方で、内容の見直しとなると優先順位をつけて取り組む必要がありました。

改定の取組みの代表例は、プロフェッショナルスタンス100本ノックです。
プロフェッショナルスタンス100本ノックは2006年に初期版(Ver0)をリリースしました。リリース当初より多くのお客様に導入が進み、当社の新入社員向けの代表プログラムとなったということもあり、2007年初にVer1へ抜本改定し、現在でも評判のよい「ホテルワーク」を含めた形となりました。以後、毎年抜本改定を繰り返し。2009年のVer4の段階でいったん完成というレベルに到達しました。以降もブラッシュアップを繰り返しており、2021年時点ではVer12を超えております。

商品開発のマネジメント」としてこうした改善の取組みへのリソース確保と優先順位付けの検討がとても重要になります。

<関係するDNA>
DNA5:まず創る。納品しながら完成を目指していく(ロジカルシンキング100本ノック)
DNA9:定期的な改訂とバージョンアップを繰り返し完成度を高める(プロフェッショナルスタンス100本ノック)
DNA15:お客様と一緒に改善をして一体感を創り上げる(DNAワーク)
DNA29:コンテンツの熱烈なファンを社内に作る。ファンに伝道師になってもらう(プロフェッショナルコミュニケーション100本ノックB)
DNA34:お客様、営業からのフィードバックを真摯に受け止めて、すぐに改善につなげる(プロフェッショナルマナー100本ノック)
DNA35:後発で参入したテーマは、既存企業向けの大型提案の一部という使われ方になることを認識する(プロフェッショナルマナー100本ノック)
DNA65:コンテンツを創り上げることで、営業がテーマを取り上げてくれる(グローバルコミュニケーション100本ノック)
DNA36:やればできる。できるかできないかではなく、やるかやらないか(プロフェッショナルスタンスシミュレーション)


アルーの「良い研修プログラムの定義」5つの観点

最後に、商品開発活動を通じて言語化した、アルーとしてのよい研修プログラムについての定義をご紹介させていただきます。

当社の事業は、研修を通じて受講者の方々の行動変容を支援し、受講者個々人の方の成長と顧客企業の業績拡大に寄与することです。狙った行動変容を実現できれば、当社のビジネスにもポジティブなフィードバックがあります。そうした前提の中、シンプルに以下を「よいプログラム」としています。

<良い研修プログラムの定義>
①リピートが取れる研修プログラムであること(成果↑&売上↑)
②低コストの研修プログラムであること(コスト↓)

上記の定義を達成するためには、5つの観点を踏まえることが大切です。


<5つの観点詳細>

①【本質性】:受講者が期待される成果(行動変容)を実現できる
・行動変容のBefore→Afterが明確である
・学びの内容に偏りがない
・受講者のレベルに合致している

②【共感性】:お客様・講師・アルーメンバーの共感性が高い
・受講生の現場感とマッチしている
・受講者が咀嚼をする時間が取られている
・受講生の現状を否定せず、個性や経験を承認しつつ高みが示されている
・講師が運営しやすい
・最低限は講師に依存せず、それ以上は講師の強みを引き出すことができる
・アルー社内で実践されている

③【独自性】:アルー全体コンセプトおよび「アルー品質標準10か条」との適合度高い
・アルー全体のコンセプトとの明確な結びつきがある
・全体を貫く1コンセプトが明確である
・「アルー品質標準10か条」と適合している

(1)シンプルである。文字数・ページ等ボリュームを少なくする
(2)プログラムタイトルは簡潔かつキャッチーな言葉で練りこまれている
(3)キーポイントは大原則1つ+ルール3~5つ程度に絞り込まれており、簡潔かつキャッチーな言葉で練りこまれている
(4)学びの内容や難易度は段階的に学習する構造になっている
(5)行動変容を起こすインパクトがある仕掛けが1つ以上ある
(6)職場における具体的な「HOW」が言語化されている
(7)受講生の使いやすさに最大限配慮された教材になっている
(8)定義、言語、表現の一貫性が保たれている
(9)アルーレッド系統の配色で統一されており色数は最低限に抑えている
(10)マスターファイルのページ数は1日あたり120ページ以下である

④【先進性】:最新の研究成果を踏まえている
・世界中で研究されている最もよい方法を選択している
・ワールドワイドに展開が可能である

⑤【低コスト】:開発・オペレーションコスト/リスクが低い
・変更、修正、カスタマイズが容易である
・オペレーション時のコスト・リスクが低い


以上「すごい研修開発バイブル」を完結させていただきます。
本稿が教育研修やワークショップ等の企画・開発・運営に関わられる方々に少しでもお役に立つものであれば幸いです。

アルー株式会社 取締役 池田祐輔(創業メンバー)


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本noteでは別途アルーの創業からの歴史をまとめた「スタートアップ企業としての営業組織づくりノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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