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(23)管理者をなるべく兼任させない(レーター期)

スタートアップ「レーター期」の4番目の記事です。
※レーター期:一般的には「事業が安定し継続成長が実現しIPOが視野に入る段階」を意味します。

今回の記事は、課題(23)「管理者をなるべく兼任させない」です。

課題23管理者をなるべく兼任させない


①兼務の拡大

2013年頃、アルー株式会社ではマネジメントポジションの兼務が拡大していました。

組織が成長・拡大をすると、それに伴い管理者のアサインが必要になります。しかしながら管理者としてアサインできる人は不足しがちというのが、スタートアップベンチャーでは良く発生します。
組織の拡大に、人の成長が追い付いていないという状況ですね。

管理職経験がある人材が多数いる大企業と異なり、スタートアップベンチャーは経験者が少なく、この管理者不足をどのように対処するのかは大きな課題になります。

組織の拡大のパターンとしては、
(1)同一部門内で同じ役割の部署が増える
例:営業部が複数になる。営業部の中の課が増える
このパターンは、同じ役割を持った部が分化する形です。組織の中で大きな部門でよく発生します。人数が多い部門での出来事ですので、業務経験者・管理職経験者も比較的多い状況です。

(2)新しい機能が分化して部署が増える
例:営業部の中に、営業企画に特化したスタッフ部署を作る等
このパターンは、新たに作られる組織が「新しい機能」を持っていることが多くあります。そのため、業務の経験者・管理職経験者の人数が限られる場合は多くあります。このケースでは、新規業務を企画・デザインすることができる人材(スタートアップの場合は、経営陣など上位役職者)が担うことが多くなるかと考えます。


さて、当時の私は4つの部署の管理職を兼務していました。
●商品開発部(新規商品・サービスの開発)
●講師採用育成グループ(外部パートナー講師の新規採用・育成、社内講師の育成)
●マーケティンググループ(販売促進・プロモーション・コーポレートWEBサイト等)
●ソリューション部(顧客向けにカスタマイズ開発を行う)


元々2011年頃から、グローバル人材育成サービス開発に力を注ぐため、商品開発部を担当していました。その後マーケティンググループを担っていたマネジャーの方のご退職に伴いグループを引き継ぐことになりました。
ソリューション部や講師採用育成グループに関しては、組織編成検討上、新商品開発と顧客向けカスタマイズ開発、そして顧客に価値を届ける講師についてを同時に見ることで、顧客ニーズを反映したサービス作りに役立つということで、兼務をすることになっていきました。


この4つの機能の中で、ソリューション部に関しては、当社の教育研修事業において営業部とならぶコア機能です。そのため配属社員数も多く、ベテラン社員の方も他グループと比較して多くいらっしゃいました。

当時、私は部長という位置づけで、部内には2人のマネジャーの方がいらっしゃいました。日々の現場マネジメントはこのお二人にお任せすることができていました。

一方で、商品開発部、講師採用育成グループ、マーケティンググループについては、少人数組織であり私が直接現場マネジメントを担当する形でした。


②兼務による疲弊

4つの部署を兼務することになり、当時の私は、意欲はあったものの、能力不足と業務過多で疲弊しきっていました。

一つ一つの仕事に時間が使えないため、企画の練り込みが不十分になったり、メンバーの方とのコミュニケーション時間も不足します。時間が不足するので、突発対応系の仕事が発生した際には、メンバーに仕事を依頼する時間も惜しく、自分で手を動かし更に時間が不足するという悪循環が発生していました。組織の戦略ゴール実現のために管理ができているとは全く言えない状況になってしまいました。

また仕事のコミュニケーションだけでなく、職場の人間関係を構築するコミュニケーションも当時の私は十分に取れませんでした。

元々、マネジメント経験もないまま当社の創業に参画した私は、管理能力も不足していました。メンバーの状況が見れないため、その方々一人一人にマッチした業務アサインや、仕事の依頼の仕方・管理方法が取れず、戦略ゴール達成のための「指示命令型」のマネジメントをしていたことが、今から振り返ると分かります。

指示命令型のマネジメントは、緊急時にはよいかもしれませんが、組織のサステイナブルな運営やメンバーの意欲や能力を引き出すことには向かない手法です。

私自身の余裕の無さと、未熟なマネジメントスタイルにより、メンバーの方との衝突も多く発生してしまいました。
当時、御在籍をされていらっしゃった方々には、多くのご迷惑をおかけして申し訳なく考えております。

4部署兼務は、2013年初~2014年3月末頃まで続けました。

最終的には、不十分な業務成果しか出せず、メンバーの方のマネジメント体制をよりよくするために、兼務を解消することになりました。
私自身は、当時疲弊の極みであったこともあり、当社の企業研修サービスとは別の取り組みをしたいという意向を代表の落合さんに相談し、新規事業開発の専任になることになりました。(~2015年末まで)


③兼務の是非

さて、上記のように私自身にとっては4部署の兼務はキャパシティオーバーでした。
その後現在に至るまで再度複数部署の兼務をしたことはありますが、一人の人間が、業務・コミュニケーションの質を落とさずにマネジメントができる幅というものは限界が存在すると考えています。
(もっと優秀な方であれば、マネジメントできる範囲も広くなるでしょう)

組織の成長に伴い、部署が増えること自体は、必要なことであり喜ばしいことかと考えます。部署が増えれば、管理する役割は必要になります。管理者ポジションが増えることは、組織メンバーにとって、マネジメント業務を経験するチャンスが増えます。
スタートアップベンチャーにおいてはマネジメントが十分にできる経験者・能力者が少なく、ポジションとのギャップが発生するため、その対処法が問題となるのです。


(1)増えたマネジメントポジションを「兼務」で解決する
これは失敗を避けたい場合に取られる手段です。
マネジメントポジションに対し「向いていない人」をアサインすると、多くの問題が発生します。
・業務能力が不足していると戦略目標を達成するための企画推進ができない
・ヒューマンマネジメント力が不足しているとメンバーとの問題が発生する
こうした問題を回避するために「一定できる人」をアサインする手法です。
デメリットとしては
・(既に述べた通り)兼務によりキャパシティが不足してしまう
・マネジメントポジションに対して意欲がある人がなかなか登用されない
ということがあります。


(2)マネジメント未経験者でも積極登用する
部署の役割のゴールを達成するためには、専任でのマネジメントアサインが原則望ましいと考えています。しかしながら人が不足するため、チャレンジでの登用となってしまいます。
このデメリットとしては
・管理者に向いていない人をアサインするとメンバーが不幸になる
ことに尽きます。
この時に重要なのは、向かない人はアサインしないことが大切なのですが、「上昇志向・マネジメント志向が強い方」はアサインがされないと組織を見限るリスクがあります。


兼務なのか未経験者積極登用なのかは、どちらをとってもデメリットが生じるリスクがあります。一概の正解はなく、会社の状況に合わせて一定のリスクをとって意思決定をして行くことが必要です。

現実的には、
・「同一部門内で同じ役割の部署が増える場合」においては、未経験者を積極的に登用していき、マネジメント経験を積んでいただく
・「新しい機能が分化して部署が増える場合」においては、企画能力があり、マネジメント経験が豊富な人材を短期的に兼務でアサインし、後継者を育成する、または外部採用をする

という組み合わせを行いながら、中長期的にマネジメント人材を組織に増やしていくのがよいのではないでしょうか。


④両国合宿と複数部長体制の発足

2014年中頃、当社経営陣で合宿を行いました。
両国にある「第一ホテル両国」に2日間籠り、普段は業務や短期課題に追われてあまり話ができない中長期の議論をいたしました。
(※画像のホテル)

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この両国合宿には、経営陣のみでなく、外部のファシリテーターとしてS講師にご参加をいただきました。S講師は「腹を割って話す場」を作ることがとても上手な方です。いつもの経営陣だけだと、話せないことや普段の議論の流れになってしまうところを、S講師に上手く介入いただき、本音で質の高い議論ができるようなご支援をいただきました。

2日間の合宿の中では様々な議論を行いましたが、合宿の一つの大きな成果として、部長クラスの登用を促進し、複数部長体制を構築するという結論を得ました。

大きな狙いは以下の2点でした。
・部長レベルの役割を担える優秀な方に機会を作ること
・間接マネジメントを促進し、経営陣がより生産性向上や付加価値の高い仕事に時間を振り向けること

その後、2015年より、この両国合宿で検討した複数部長体制に組織を移行しました。

営業部(HRコンサルティング部)は3人の方に、新しく部長の役割を担っていただきました。

●HRC1部部長:斎藤俊輔さん
2005年アルー中途入社。最初期メンバーのお一人。HRC1部長の後、人事を担当され、再度営業部長としてご活躍中

●HRC2部部長:東ゆかりさん
2010年アルー中途入社。営業のプロフェッショナル。入社後一貫して営業部門で大型顧客を担当されています。現在もアルー営業部長の一人。

●HRC3部部長:Sさん(~2018年ご退職)
2012年末アルー中途入社。別の記事でご紹介をした「営業生産性の限界突破」をした方です。熱いコミュニケーションでメンバーのモチベーションを高める素敵な方です。


また、ソリューション部(HRソリューション部)にも部長を担っていただく方をアサインしました。

●HRソリューション部部長:中村俊介さん
2006年アルー中途入社。企業研修サービス・人材育成に関して幅広い知識経験をお持ちのプロフェッショナルです。現在は、アルーエグゼクティブコンサルタントとして、アルーのブランド発信やエヴァンジェリストとしてご活躍されています。


本記事のまとめ

◆組織が成長・拡大をすると、管理者のアサインが必要になるが、スタートアップベンチャーでは管理者としてアサインできる人が不足しがち
◆組織の拡大のパターン
(1)同一部門内で同じ役割の部署が増える
(2)新しい機能が分化して部署が増える
◆中長期的なマネジメント人材育成により解決をして行く
・「同一部門内で同じ役割の部署が増える場合」においては、未経験者を積極的に登用していき、マネジメント経験を積ませる
・「新しい機能が分化して部署が増える場合」においては、企画能力があり、マネジメント経験が豊富な人材を短期的に兼務でアサインし、後継者を育成する、または外部採用をする


次回の記事は・・・・

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