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[2023.10.15]密室づくりが仕事のぼくは、Taylor Swiftに夢中になるにもほどがある


Taylor Swift THE ERAS TOURのとてもとても長い、ネタバレしかない感想。長すぎるから短くまとめると、この作品でしか味わえない体験で溢れているから一曲でも知ってるなら映画館(なるべくいい音の)に行った方が良い!5回目観たい!

「LOVER」 ERA

「LOVER」ERA
Miss Americana & The Heartbreak Prince
Cruel Summer
The Man
You Need to Calm Down
Lover


イントロに乗せてふわふわと風にそよぐ、特大のパラグライダーみたいな翼をたずさえたダンサーが四方からセンターステージに集まり、その羽を真ん中に集める。
わかってる。誰が見たってわかる。その中にいるんでしょ。わかってんの。わかってんのに、シルバーとブルーとピンクのビーズが敷き詰められたゴージャスなレオタードを纏ったTaylorが、翼の中から出てきた瞬間、ひゃん!ってなっちゃう。4回観て4回ともなっちゃう。
その圧倒的な存在感は、スーパーボウルの伝説のMichael Jacksonを彷彿とさせて、登場した一瞬で心を鷲掴みにされる。

Miss Americanaのサビから繋がるアレンジでCruel Sunmerが始まる。リリース当時、LOVERの中ではシングルのME!とかYou Need to Calm Downより全然いいじゃん!と思っていたCruel Summerだが、いろんな記事読む限り、多くのファンがそう思っていて、Taylor自身も一番お気に入りと言っているよう。
これが、ERAS TOURの実質オープニング曲に起用され、今年、リリースから4年越しのBillboard1位。昔の曲が流行ったらちゃんとチャート上位に来るようになったのはストリーミング時代の良いところだと思う。
基本的には夏の失恋、というか、あなたのことひきずっちゃって酷い夏。って曲だけど、今、夏の気候が本当に酷くなったというのも、流行った一因じゃないだろうか。
MariahのAll I Want For Christmas Is Youみたいに、夏になるたびにこの曲が流行って、これ以上夏を酷くしないよう、気持ちよい程度に暑い夏を取り戻そうという気持ちを煽る曲になるといいなと思う。何万人の監修の中、センターステージのお立ち台を踏みしめてひとりで歌うTaylor。かっこよい。
このあとMCが入るんだけど、このライブ、基本的にTaylorがしゃべってる間にセットチェンジとかダンサーやコーラスの衣装チェンジしてるんじゃなかろうか。少なくとも映像で観る限りは完全にそう。こんなにメインアクトが繋いで、ダンサーの衣装が変わるライブは初めて観た。

上腕二頭筋にキスをする、いかにも有害な男らしさ的なポーズをTaylorが決めると、いつの間にかオフィスデスクのたくさんある3階建のセットとスーツ姿のダンサーが現れ、Taylorもレオタードと同じ色のキラキラジャケットを羽織る。
付き合う人数が多いとか、年下と付き合うとか、仕事で大成功を収めるとか、大金を稼ぐとか、男なら喝采を浴びるような場面で、女だと激しく批判されるという内容の曲。
BOSS然としたTaylorが優秀に仕事をしてそうな女性社員と、バカ丸出し男性社員の間を行脚しながらダンスを披露。映画BARBIEのテーマにいちばん近いステージ。楽しい。この曲ですでに女性ダンサー全員のファンになり、この曲だけ男性ダンサー、特にいちばんガタイの良いトキシックマスキュリニティの権化みたいなダンサーはめちゃくちゃ嫌いになる。つまりそのくらい演技が上手いし、ダンサー全員の表情がしっかり映されている。

4曲目、オフィスだった3階建の建物が一瞬でピンク主体のカラフルな見た目に変わり始まった、ロックアレンジのYou Need to Calm Down。かっこいい。もはや今聴いたら好きな曲でしかないから、このライブ映像観る前、どうしてこの曲好きじゃなかったのか思い出せない。
SNSで女性や少数者の悪口を撒き散らす人たちへ、ツイートする前に落ち着きな?と諭すような歌詞。お前らが大声で悪態ついて追いやったからってゲイの数は減らないよ?最高。
安室奈美恵のDO ME MOREの最後の方みたいなズンタカズンタカしたリズムのアレンジの演奏に乗せて、ダンスしながら全員でセンターまでウォーキング。超かっこよい。安室奈美恵のライブ思い出した。

5曲目、3曲続いたアップテンポの特大ポップの後、ギターを弾きながらのLover。
クリスマスの飾り付けを1月までしてたっていいんだ。私達の家のルールは私達が決める。て歌い出しがすごい好き。Take me homeのところで大歓声が起きてたけど、Take you homeって歌ってたのかな。いい曲。ライブで合唱したい。

「Fearless」ERA

「Fearless」ERA
Fearless
You Belong With Me
Love Story

金色に近い火花がライブ会場の特大スクリーンを埋め尽くす。映像なのか本当の火なのかCGなのかそのすべてなのかよくわからないけど、とにかくこのライブ、各ERAの切り替えの時の演出だけでも見応えがすごい。
火花が燃え尽きてFearlessのロゴが現れると、Taylorも金色の超ミニスカートドレスで登場。
Loverの時とは違う銀ピカのギターを携えている。
このERAはこれまで自分が全く聴いて来なかった3曲が披露されたのだが、初回新宿TOHOのクィア達の盛り上がりが尋常じゃなく3曲とも完コピくらいで熱唱していて、人気ある曲なんだなと認識。それもそのはずYou Belong With Meはビルボード50週ランクインしていて、Taylorの数あるヒット曲の中でもいまだに2番目に売れた曲、Love Storyも4番目(どちらも最新の集計だとAnti-Heroに抜かれてるかも)
アルバムとしても260週以上ランクインで1000万枚以上売れてTaylorのアルバムで一番売れている(こちらも1989に間も無く抜かれそう)

そもそもカントリーを聴く習慣がないので、何をもってカントリーというジャンル分けになるのかが、歌詞以外の面ではあまりわからないのだが、のっぺりしてるなと思ってた曲調は、確かにめちゃくちゃ合唱向き。
バンドメンバー一人一人に焦点を当てたステージングも、このERAはバンドサウンドを堪能するターンなのだなと納得。Taylor自身もギター弾きながらクルクル回るところがめちゃくちゃかわいい。THE ERAS TOURが始まってすぐセトリを調べて作ったプレイリストでも、どうしても飛ばしがちだった3曲だったけど、3回目観る頃にはすっかり歌えるくらい好きになった。

「evermore」ERA

「evermore」ERA
willow
marjorie
champagne problem
tolerate It

大好きなevermoreだが、地味すぎて、いかんせん他のアルバムに比べてスタジアムでのライブには向かないだろうから、数曲ピアノ弾き語りとかで小休憩タイムになるのかなと思ったら全く違った。
スクリーンに深い森が現れevermoreの文字が浮かび上がると、そこから黒いマントを羽織って、すいかほどの大きさのオレンジ色の玉を持ったダンサー達が登場。
その先頭に、オレンジのカントリー風ドレスを着て、やはりマントを羽織ったTaylor。ERAが変わるたびマイクも世界観に沿って変わる。今度はウッド調。
マントを翻しながら、オレンジの玉を回したり投げたりしながら、呪術的なダンスを繰り広げて前進して来る。何これかっこいい。アジア系の長髪の男性ダンサーがこのパートのダンスにめちゃくちゃマッチしていて目を引く。
お客様の想像を超えるのがサービス業で成功するコツのひとつというけれど、このライブ、美術も衣装も演奏もダンスも全て想像以上。特にこのevermoreと、のちに登場するfolklore ERAの演出は想像の遥か遙か上だった。

Champagne Problemでは全体が苔むしたグランドピアノを弾き語り。マイクまで蔦が生えてる。
大好きな曲だけど、シャンペインって歌われるとついスーパーノバって口ずさんでしまう。が、それも2回目鑑賞まで。3回目からはプロブレムがしっくり来るようになり、自分の中でTaylorがOASISを超えた瞬間だった。

ちあきなおみの「ねえ、あんた」を彷彿とさせる「尽くしすぎる女とそれに嫌気のさす男、最終的にキレる女」という、一昔前のテーマの演歌tolerate Itでは、卓上のグラスやバラを弾き飛ばし、テーブルに仁王立ちで熱唱。完全に演歌の世界。やっぱりこれ、ねえ、あんたのオマージュなんじゃないだろうか。改めてちあきなおみ観たら、一昔前のストーリーを歌ってるって言ってるし、女が絵が得意なのも一緒だった。
ただし、ちあきなおみのパフォーマンスは小道具は畳一枚、男役もなし、情感の移り変わりも異常。Taylorも演歌みたいな歌詞多いし、このテイストでやって行くならこのくらいになってね、と思って調べてみたら…ちあきなおみこの時まだ30歳にもなってないぽい。どうなってんだちあきなおみ。
そしてevermoreの中でも地味すぎて印象に残ってなかったtolerate Itを寸劇に仕立てて好きな曲に変えてくれるTaylorと、ダンサーの、うんざりなんだよ、の演技がすごかった。


ちなみにevermore ERA、森の入り口から曲が進むごとに奥に分け行って、大木の麓に苔むしたピアノがあって、その奥のドアに入ると最後のテーブルのある部屋があって、部屋から雪の降り出した森が見えるというストーリーに見えた。すごい。

「Reputation」ERA

「Reputation」ERA
. . .Ready For It?
Delicate
Don’t Blame Me
Look What You Made Me Do

タイムマシンがあったら初回鑑賞前に戻って、ポップ路線のアルバムの中ではもっとも好きじゃないアルバムだから正直トイレタイムだな、なんて思ってた自分を、持ち得るあらゆるスキルを用いて嘲り笑ってマウントを取りたい。
まずなんと言っても、このERAが始まる時にステージ全体をとぐろを巻いてうごめく黒い大蛇。何あれ?映画用?現場で見たらどうなってんの?
あの蛇見たくて4回も観たと言っても過言ではない。
で、黒い特大大蛇の隙間から現れた、赤と黒のスパンコールに片足出しレオタードのTaylorのかっこよさ!圧倒的!マイクまで蛇がついている!衣装もこのERAがダントツで好き。
で、始まった. . .Ready For It?。全然好きじゃない!テラスハウスなんでこの曲テーマソングに選んだんだ。ハードすぎて全然番組の趣旨にあってないじゃないか!と思っていたが、初めて歌詞読んだらめちゃくちゃテラスハウス向きだった、ごめんなさい。
イヤフォンで聴いてたら耳壊れそうな低音で始まるこの曲始め、Lady GAGAとか、Katy PerryのDark Horseみたいなダークなエレクトロポップが多くて、別にそんなのはTaylor Swiftに求めてないよと当時は思っていたアルバムだが、特効、衣装、ダンス、歌、演奏、特にドラム、in the middle of the nightのところのシャウト、全てが異常にかっこよくて、この曲が大好きになった。

続くのは元々好きなDelicate。Taylorが踏みつけるたびにステージにヒビが入ってく。最前の人はステージ見上げるからわからなくて、遠い席だからこそ楽しめる演出になっていてすごい。そしてヒビ入れる時の表情のキメ方も最高。私の評判は地に落ちた。って曲だったんだな。

続いて全然知らなかったDon’t Blame Me。ゴスペル風のコーラスのロックナンバー。めちゃくちゃ好き。光の柱に囲まれたセンターステージで、このライブ中もっともこぶしを効かせたDIVA風歌唱する様は往年のロックスターのよう。

そのまま完璧な曲繋ぎで、やはりロックアレンジのLook What You Made Me Doがスタート。やはり全然好きな曲じゃなかったけど、電話ボックスサイズの透明な箱に閉じ込められたダンサーやコーラスと、ガラス越しに掛け合いをする演出がとんでもなくかっこいい。特に青いドレスのコーラスの人とのシーンは最高だった。苦悩の表情を浮かべる箱入りダンサーたちは会場の特大スクリーンにも次々に流れていく。やはりこんなにバックを固めるメンバーを前面に押し出しているライブを観たことはない。

というわけで、全然好きじゃなかったReputation ERAがこのライブで最も好きなパートになった。そして改めてアルバムReputation聴いてみたらGetaway CarとかGorgeousとかDressとか好きな曲たくさんできたし、知らなかっただけでそもそもこのアルバムもJack Antonoff参加してた。
あと世間からの評判をめちゃくちゃ気にしながら、それでも自分は自分のままで行くという歌詞のテーマ、既視感あるなと思ったら、めちゃくちゃ浜崎あゆみじゃん。大スターになってからの浜崎あゆみの苦悩の歌詞、DutyとかSurrealにとても似ている。と思って何十年かぶりにアルバムDuty聴いてみたら、全体的に曲のトーンまで近い気がした。あとDutyめちゃくちゃ名盤だった。

「Speak Now」ERA

「Speak Now 」ERA
Enchanted

ラベンダー色のお花畑が会場中に広がり、
やはりラベンダー色の、やはり浜崎あゆみが紅白で着るやつくらい裾がひらひらしたドレスで登場。
すそをひらひらさせながら歌い、ダンサーがその周りをくるくるする。乃木坂46のシンクロニシティみたい。前のパートがハードな曲続きだったので、爽やかでとても良い。

「RED」ERA

「RED」ERA
Red
22
We Are Never Ever Getting Back Together
I Knew You Were Trouble
All Too Well(10minute Version)


会場の客席から無数の赤い風船が空に舞い上がり(CG?何?)、風船の向こう側にREDのロゴ。
これも映画のみの演出なのかわからないけどとにかくかっこいい。

ダンサーたちが、人体が切断されるけど切られた人はバラバラになったまま笑ってる手品、で使うみたいな箱を運んで来て、「A lot going on At  the moment 」とキラキラの文字がプリントされた白TシャツにショートパンツのTaylorが登場。
赤いコスチュームのダンサーたちに、大量の赤い紙吹雪と、徹底的にREDなコンセプト。そしてここまでの流れで最もハッピーなフィーリング。
ここからの2曲、REDと22はほとんど聴いたことなかった曲だが、キャッチーな曲調と始終おどけるダンサーと笑顔を炸裂させるTaylorに、どんどん気持ちが高揚して行く。楽しすぎる。

REDは、宇多田ヒカルのCOLORSの恋愛限定版みたいな歌詞だった。実は2000年台前半の日本の曲好きだったりするんだろうか。
そして全然知らなかったけど、22のMVで
「Not A lot going on At  the moment」と書いたTシャツを着ていて、今回のライブでNotが取れてるんだな。こちらも2000年台前半で言えば安室奈美恵GIRL TALKとおなじ、女だけでパーティー!という歌詞とMV。
We're happy free confused and lonely at the same time.
It's miserable and magical oh yeah
ってめちゃくちゃいい歌詞だな。
あと全編通してお客さんの盛り上がりをピンポイントで抜くのもめちゃくちゃ上手くて、22の時のYou don’t know bout meの時の、映されたお客さんの中でいちばんごついスキンヘッドの、Taylor Swiftあんまり聴かなそうに見える人の盛り上がりが最高にかわいくて最高。
この2曲は、一発でわかる曲の良さに加え、歌詞の良さを知った2回目の鑑賞からは、半泣きで合唱。ダンサーとスキップしながらセンターステージまで来て、そこにいたこどものお客さんにハットをかぶせ、その子のために数秒ダンス。ここでもうノックアウト。落涙。もはや宗教。

さらにそこに、We Are Never Ever Getting Back Togetherの、あの、ドゥルルルンというイントロのギターの音色。号泣。4回全部泣いた。何泣きなのか説明できないんだけど強いて言えば心酔泣き。もう入信してるから。ここまでの3曲のダンスというか寸劇というか、とにかくずっと信じられないくらいハッピー。
3曲のメガポップ連打で完全に陶酔し切ったところに、これでもかとI knew You Were Trouble。
シャウトが最高。多幸死しそう。

ふう、やっと次のERAか、と思いきや、赤と黒のビーズで彩られたゴージャスなガウンを羽織って登場。マイクスタンドもギターもこの曲専用のしつらえ。で、All Too Wellの10分バージョン。歌詞はほぼ山崎まさよしome more time one more chance。いやいい曲だけど10分もいらんだろ!ってずっと思ってたけど、4回で計40分もこの曲を聴いても全く飽きなかった。ひたすら素敵なメロディを浴び続けられるのと、ガウンから左だけ生足を覗かせてギターを弾く立ち姿のあまりのかっこよさに、40分の間、一秒も飽きることなかった。I knew You Were Troubleで締めて、All Too Wellでアンコールで終わり、で良いくらい最高のパートだった。

こんなに盛り上がってまだなんのERA残ってるんだよ。これ以上もう無理だろという疑念を掻き消すように、観客に配られているペンライトが白い光を放ちながら一斉にふわふわと宙に舞った。きれい。意味がわからない。もはや、こわい。

「folklore」ERA

「folklore」ERA
the1
betty
the last great american dynasty
august
illicit affairs
my tears ricochet

舞う光の向こうにfolkloreの文字。あまりの満足度と濃密さに、いちばん好きなアルバムを忘れていた。と、反省する間もなく、ステージ上にはいつの間にか3階建の苔むした屋根を持つキャビンが建て込まれている。きれい。意味がわからない。こわい。
そのキャビンを、白いシンプルな、袖がちょっとだけ魅せられて風に広がっているドレスを纏ったTaylorが、the1を歌いながら登っていき、最終的には屋根に寝そべって歌う。グラミー賞で観たやつだ!と興奮する。この3年、山の中で繰り返し聴いた曲が、こんなに素敵なシチュエーションで演奏されるのを目の当たりにできるなんて。とうっとりしていると、

2階に降りて来てヒッピー風のフラワー柄ギターを抱えBetty。いつの間にかキャビン前のアプローチ階段にコーラスとバンドが集まって、コーチェラの宇多田ヒカルAutomaticスタイルで、みんなで階段に座ってアコースティックセット、ときおりドレスの袖部分をふわっとさせるのがかわいい。

巨大スクリーンを蒸気機関車が横切ると、
the last great american dynasty。
にわかファンの自分が、Taylor Swiftの中でいちばん好きなアルバムfolkloreの中でもダントツに好きな曲。
evermore ERAの時のような、地味な休憩タイムになっちゃうんだろうなという心配はライブ全体の流れで払拭されていたし、folklore最初の2曲の演出も最高に素敵だったのだが、この曲は本当に素晴らしかった。
西部開拓時代を思わせる色とりどりのドレスと、タキシード姿のダンサーたちが登場。
主役は青いドレスの女性ダンサーで、おそらくこの人が歌詞に出て来るレベッカ役。
この曲の間、カメラはほとんど引いて全体を写すか、ダンサーのアップで、素晴らしい社交ダンスと、レベッカの悪い噂をする街の人たち、それに負けじと生きていくレベッカの表情が堪能できる。序盤、Taylorは伴奏の一部に徹しているが、やがて階段を上がって来て振り向いたレベッカと目を合わせ、2人一緒に前を向く。その瞬間に込められた「私は私のままで立ってるよ、君は君のままでいてね」という浜崎あゆみSurrealイズムのこもった想いと眼差しが美しすぎて息を呑む。レベッカが振り向くシーンで毎回泣いてしまう。
もちろんもともとこの曲が大好きなこともあるが、数多くハイライトのあるこのライブのなかでも、最も叙情的で美しいパート。
これがReputationとかREDと同じライブで味わえるなんて、本当に贅沢すぎる。

そのまま名曲august。今回ちゃんと歌詞の和訳まで読んだけど、Bettyで歌われている一夏の出来事を、Betty側からの視点の曲なのかもしれない。とにかく演奏とメロディが素敵。
続くillicit affairsでは、ステージ全体を渦巻く波の上で、禁じられた恋について、子供扱いするなと激しく歌う、まさに中森明菜禁区的な世界観。今回のライブ映像でTaylor Swiftのことを歌詞までより深く聴くようになり、めちゃくちゃ演歌の世界観と、リベラルな世界観とを行き来している人なんだと認識。
さらに続くのがmy tears ricochet。あなたのせいで死んだのにあなたは生きていて、私の葬式で、生きていてほしかった、なんて悲しいふりをする。と歌う、もはや天城越え超えの呪物。そして黒いローブを纏ったダンサーと無表情のままゆっくり行進し、涙のあとを指で描く振り付けは欅坂46そのもの。中森明菜からの平手友梨奈。好きなものだらけ。最高。
大好きなfolklore ERA。正直いまの今までこんなにドロドロした世界観だなんて、つゆも知らずにコロナ禍の清涼剤として聴いていたけれど、このステージと、演歌みたいな歌詞、それぞれの曲が繋がっていく物語を知れてますます好きになったし、この意味のある曲順を理解してからステージを観ると、ますます惹きつけられる。

「1989」ERA

「1989」ERA
Style
Blank Space
Shake It Off
Bad Blood


ピンクのキラキラミニスカートにブルーのマイクのTaylorと、真似したい!と思えるモダンな白黒スタイリングのダンサーが対照的でかっこいい1989ERA。
メガヒットメガポップ連発の普通のライブで言ったらアンコールはコンセプト関係なくバカ騒ぎしようぜ!みたいなパート。

Style、ほとんど聴いたことなかった曲だけどイントロからずっと続くかっこいいリフに乗せて登場するTaylorとダンサーが超かっこいい。誰でも真似できるステップでダンサーたちと最高にハッピーなダンス。最高。
私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない!を逆説的に歌った曲なのかな。どっちにしても、別れる別れないやっぱり別れるいや別れない。みたいな、こういう人たちいるよなあ、で、Taylorってそういう人なんだなというのがよくわかる歌詞。

そしてついに登場。Blank Space。大好きすぎる。軌道が光る自転車に乗ったダンサーの真ん中で歌うTaylor。そのまわりにはいろんな衣装でまったく同じ振り付けをするたくさんのTaylor。Perfumeみたい。
そして大サビで光るゴルフクラブが渡され、MV同様、車を壊しまくるTaylorとダンサー。歌詞はもちろん演歌。「私は白昼夢のふりをした悪夢である。」の一節なんて、もはやチェンソーマンの世界。恋愛の悪魔。最高。

で、Shake It Off。
誰と付き合うかと全部追いかけられて、尻軽だとか頭空っぽだとか、誰がなんと言おうと私は私だ私を生きていくソング。最高。 

で、Bad Blood。Katy Perryとの不仲について歌った曲らしくて、そんなワイドショー感満載の曲に大好きなKendrick Lamarが参加してるのが許せなくてすごく好きじゃなかったけど、こぶしを効かせた歌唱が最高にかっこよい。大円団。大満足。大興奮。拍手喝采。大最高。

「Surprise Song」

「Surprise Song」
Our Song
You’re On Your Own,Kid


ギターで1曲、オルガン風ピアノで1曲、日替わりで弾き語りするコーナー。ダンスも弾き語りも存分に楽しめる藤井風風スタイル。
深い赤のプリーツドレスでセンターステージに登場。真ん中で割れて脚が出るタイプ。かわいい。
各地のセットリストを見返して気づいたのだが、この2曲がセットで歌われた日はなかった。
つまりこの映像、繋がりバッチリすぎて気づけなかったが、何日も撮ってベストな部分を切り貼りしている?それをまるで一回のライブのように持続する高揚感を醸し出している?すごすぎだろ。と思う。
ニューアルバム以外の曲は一度披露したらやらない仕組みらしい。日本は絶対New Romanticだろと思ってたけどもうLAでやってた。ピアノ弾き語りNew Romantic聴いてみたい。
You’re On Your Own,Kidは、Midnightsでいちばん好きな曲だったので聴けてうれしい。
恋愛依存的な歌詞は、演歌としては楽しめるけれど、共感には程遠く。だがたまにある、自分は自分ソングも秀逸な歌詞だからすごい。恋愛に寄りかかる歌、自立した女性の歌、どちらもあるからこそ、女性としてかっこよく生きていく姿勢が引き立つ、それがTaylor Swiftなのだな、と、思ってすぐ気づいたが、Beyoncéもそうだもんな。

なんて考えてるとまたステージ全体が波にのまれ、その波に赤いドレスのまま、頭から飛び込むTaylor。飛び込んだTaylorがメインステージに向かって泳いでいく。
メインステージにはラベンダー色の煙がモクモクしていて、気づくと中空にいるTaylor。空にかかる梯子を登り、ラベンダー色の雲の上へと消えていく。

「Midnights」ERA

「Midnights」ERA
Lavender Haze
Anti-Hero
Midnight Rain
Vigilante Shit
Bejeweled
Mastermind
Karma

梯子付きのラベンダーの雲(固め)を押しながら続々とダンサーが現れ、メインステージの遥か上、ラベンダーの雲(霧状)に隠れたはずのTaylorが、ラベンダー色のスパンコールワンピースミニに、ラベンダー色のフサフサガウンを羽織って堂々と登場。

Lavender Hazeは、人と深く愛し合って、愛に包まれている状態の50年代の造語なんだって。
誰と付き合った別れた、をいちいち追跡され詮索される日常からラベンダーヘイズに隠れて愛する人とだけ過ごす空間、日常を作るよって言う歌。良い。固い雲付き梯子を使ったダンスも楽しい。

Anti-Heroでは、特大スクリーンに特大Taylorゴジラがビルを薙ぎ倒す様子が写される。ライブ会場で見たらすごい迫力ありそう。
ポップな曲調からは考えられないくらい内省的な歌詞。キャッチーなメロディーに、スターになってしまったことについての内省的な歌詞を乗せるのは、やっぱり浜崎あゆみを彷彿させる。自分もよく、考えすぎで生きづらそうと言われることがあるが、この曲のTaylorもまさにそんな感じ。まさかTaylor Swiftに生きづらさで共感するだなんて思いもしなかった。

Midnight Rainでは傘を使った美しいダンス。そして傘に隠れてまた衣装チェンジ。TaylorもBeyoncéも、これらの美しい衣装が、様々なハイブランドのカスタムだと言うことも今年初めて知った。衣装のことを追っていくだけでもすごく楽しい。
そして歌詞のこと調べれば調べるほど、付き合っていた有名人の名前とその相手との写真が出てきて、なんなんだこの人生辛すぎるだろうと言う気持ちと、すごいなこの人とも!と言うゴシップ精神がくすぐられるのとでどんどんTaylor自身への興味が湧いてくる。

Vigilante Shitでは椅子を使ったセクシーなダンスを披露。歌詞は梶芽衣子「恨み節」以上の世界観。
Bejeweledではキラキラの宝石をバックにダンサーたちとダンス。この2曲が特にダンサーのジェンダーによる役割を気にしない演出になっていて、男性も女性も同じヒール、衣装、振り付け。それがきちんと美しくてかっこいい。Midonight Rainからの3曲は、正直地味で難解な曲調なこともあり、1回目観た時は、もう疲れたなと言う気持ちも出てき始めていたのだが、パフォーマンスのあまりのかっこよさに見惚れてしまう。

Mastermindでまたダンサー着替え。しかもダンサーは全ての曲で各々違う服着てるから、ダンサーコーラスだけでも何百もの衣装がある。異常。
チェスボードみたいに白黒のステージを日体大の団体行動みたいに移動するダンサーと、その真ん中でMastermindとしてそれを指揮するTaylorという演出は、またしてもめちゃくちゃ欅坂っぽくて大好き!

そして最後はKarma。
‘Cause karma is the thunder
Rattlin’ your ground
Karma’s on your scent like a bounty hunter
And karma’s gonna track you down
Step by step, from town to town
怖すぎ。いい曲。カルマは私のボーイフレンドっていう思考回路、なんとなく藤井風風。
4回ともこの曲の時点ではもうTaylorのカルマの一部と化して、一緒に頂上に連れて行かれてるためあまり記憶がない。

と言うわけで、Taylor Swift THE ERAS TOURのとてもとても長い、ネタバレしかない感想をようやく書き終えて、自分でも読み返す気にならないくら長すぎるから短くまとめると、この作品でしか味わえない体験で溢れていて、中森明菜で平手友梨奈で浜崎あゆみで宇多田ヒカルで安室奈美恵でちあきなおみで石川さゆりで梶芽衣子で藤井風なのがTaylor Swiftだった。こんなにも好きなものが詰め込まれた人、そりゃ夢中にならないわけがない。

結果、やっぱり映画館だけじゃなくて、ライブが観たい!どんなに遠い席でも絶対に楽しめるこのライブを、会場でしか味わえない興奮を感じたい!5回目は、東京ドームで観たい、聴きたい、歌いたい!
って思ったから、チケットがなかなか取れないような大型のライブをハイクオリティの映像作品にして映画館で放映するのは大成功だと思う。12月にはBeyoncéが控えている!文化として根付いてほしい!何回でも観に行きます。


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