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イタリア人とうどん県民の意外な共通点


生を受けてから香川県で28年間過ごし、
イタリアに住んで7年9ヶ月が過ぎた。

香川とイタリアのみで暮らしてきた中で、
じわりじわりと感じている、
「ある共通点」について掘り下げていく。
自分でも最後にどう結論が出るのか分からない。


【イタリア】
さて、美食に溢れる国イタリア。
世界五大料理に君臨するほど、親しまれている料理。
ピザやスバゲッティ、カルパッチョ、ティラミスの旨さは、
誰もが知っていると言っても過言ではない。

食にうるさいイタリア人が、強いこだわりを持つものの一つに
「コーヒー」が挙げられる。

両手で隠れるほどの小さなカップに、
半分ほど入った濃厚なコーヒーがイタリアの定番
『エスプレッソ』。
家やバール、レストランなどあらゆる場所で飲まれている。

バールで注文する際、
"エスプレッソ" と言うイタリア人は誰一人いない。
シンプルなコーヒーを頼むときは、
「caffè :カッフェ("ェ"にアクセント)」と言う。
挽いた豆をマシンにセットし、圧力をかせて
濃厚なエスプレッソができあがる。
時間にして1分にも満たない。

暮らしの中で、重要度の高いカッフェは、
人それぞれ好みの飲み方がある。
また、飲むタイミングにもよっても変わってくるので、
常連であっても何種類もを嗜んでいるから
覚えるにはキリがないほど。
また、地方によって足すものや調合などあるから、
学ぶ上で飽きることがない世界だ。

バリスタは、コーヒーを淹れる技術力はさることながら、
記憶力や効率も考慮する必要がある。

全員がカッフェだけならシンプルな作業だが、
想像以上に幾通りもの飲み方がある。

カッフェを少し短めに抽出したものを「バッソ/コルト」
逆に少し長めに抽出したものを「カッフェ・ルンゴ」
2杯分のカッフェなら「ドッピオ」
少しだけ泡立てたミルクをいれるなら「マッキアート」
カッフェ1 ラテ2 泡立てたラテ1の割合は「カップチーノ」
カッフェにお酒を足したなら「コッレット」
カッフェに高麗人参のエキスを入れたら「ジンセング」
カフェイン抜きなら「デカブッフェイナート」
これだけでも8種類になる。

カウンターの向こうでは、
カッフェを抽出している間に、ラテを泡立て、
お酒のボトルを準備し、次の豆を挽くき、
お皿とスプーンをカウンターに並べて、順に提供していく。

黙々と作業する姿は無駄な動きなく洗練されている。
賞を獲ったバリスタならば見ているだけでも価値がある。
カップチーノの最後の泡のデザインは息を呑むほどだ。



【香川県】
讃岐人のソールフードといえば
ご存知の通り「うどん」。

イタリアに来る前、
朝ごはんに、昼食に、間食に、夜食にと、
うどんのない生活なんてありえないというほど、
週に2〜3杯は食べていた。
うどんとの距離感は、ごく一般的な方だ。


イタリアに来てからは、
恋しくなって、自分で打つこともある。
今となっては、あまり汚さずにできるようになった。


それぞれに、好きなうどんの食べ方がある。
しかし、これは季節や体調によっても異なるので、
一種類とは限らない。

讃岐人は、「一杯ください」だなんて言わない。
「ひとつ」「ふたつ」と注文する。("ください" も言わない)
これは、玉数のことだ。その前にうどんの種類を足すので、
「かけひとつ」や「かまたまふたつ」となる。
麺ができているなら1分ほどで出てくるが、
茹でているなら10分でも喜んで待つ。


どことなく、こだわり具合が
イタリア人と似ているだろう。




では、カッフェとうどんの種類を並べてみよう。

カッフェは、イリコだしの入ったうどんの基本「かけ」
(発音が似ているようで似ていない。"か"にアクセント)
バッソは、麺に醤油をかけただけの「生醤油: きじょうゆ」
ルンゴは、茹で汁に浸かった麺を、つけ麺で食べる「釜揚げ」
ドッピオは、2杯分の麺の「2玉: ふたたま」
マッキアートは、熱い麺に生卵を入れる「かまたま」
カップチーノは、むりやりたが「ぶっかけ」にして…
この他は、
冷たい麺に熱い出汁をかける「ひやあつ」
その逆の「あつひや」
どちらも熱い「あつあつ」
どちらも冷たい「ひやひや」
水気を切って置いていた麺に、熱い出汁で「そのまま」
具だくさんの「しっぽく」、「ざる」「肉ぶっかけ」…

十人十色具合は、カッフェも、うどんも同じだ。



トッピングに注目してみよう。
  うどんの場合は、天かす、ネギ、生姜、ごま。
  カッフェならば、白糖、黒砂糖、ココア、シナモン

食い合わせはどうだろう。
  うどんは、おでんや天ぷら、おにぎりなどとセットで。
  カッフェは、菓子パンやケーキなどと合わせて飲む。

胃袋が複雑な動きをしてきたが、
だが、何だか共通点が明らかになってきた!




これだけでは終わらない。
食すシーン別はこうだ。


朝に飲むのは、「カップチーノ」
朝に人気は、「かけうどん」

疲労回復に、「ジンセング」
小腹を満たす、「揚げぴっぴ」

食後の一杯、「コッレット」
飲みの〆に、「カレーうどん」

夏に飲むなら、「シェケラート」
暑い日には、「冷やしぶっかけ」

寒くなったら、「チョコラータカルダ」
冬に食べるなら、「しっぽく」

頭痛を治すこともある、「カッフェ」
風邪を引いたら、「少し伸びたかけうどん」

技術の高いバリスタを求めて、「バール巡り」
麺や出汁の食べ比べ、「うどんツアー」


さぁ、これでどうだー!!


「むつごい」という、讃岐弁で脂っこいものを食べたときや、
度を越したときに使う言葉がピッタリハマる。
イタリア語なら「バスタ」。やめて!と言いたい。


イタリア人と香川県民には、
これほどまでに似たこだわりがある。
一歩外へ出れば、愛郷心を隠せず
熱く語りだす点も同じだ。


新型コロナウイルスの影響により、
バールもうどん屋も営業を停止や縮小せざるを得なかった。
この時我々は、どれほどなくてはならない存在か思い知った。
家で自分たちで作るのもいいが、
店で提供されるものには、格段の美味さがある。
だから再び私たちは、それを求めて旅に出る。

明日は、うどんを食べて、食後はカッフェにしよう。

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