16:(言いたいこと言いたい! けど…)難題!「共感問題」私の割り切りライン
今回も、出版社の編集者さんがよく仰る3つの頻出「アドバイス」対策の続きです。
1.自分を客観視せよ
2.独自の視点を持て
3.共感を得られるように描け
この三か条について、詳しくはこちらをお読みください。
14:「自分を客観視せよ!独自の視点を持て!共感を得よ!」三大頻出アドバイス、その正体と対処法
前回までのおさらい
1.自分を客観視せよ(誰が見ても面白くて)
対策:自分が描いたものを他人が描いたという設定で見直す
見直し方は、こちらをご覧ください。
13: ネームの見直し、どこをどう直す? 具体的なチェックポイントを洗い出しました
2.独自の視点を持て(個性的で)
対策:対策は要りません。独自の視点は全員必ず持ってます。
「その人らしさ」について、詳しくはこちらをご覧ください。
15:もし「独自の視点」を「持て」と言われても、全員がもともと必ず持ってますから心配しないでください
今回の内容
3.共感を得られるように描け(人気が出るやつ描いて)
今回はこれ ↑ です。最難関の、一番ややこしいところです。
以下、'19年6月発売の拙著『読まれるコミックエッセイの描き方[2]作品の周辺のこと』より、該当箇所をまるっと載せます。
自分の感じたことや考えたことを描きましょう
「共感を得られるように」描いて共感を得ることは、私は難しいと思います。
人に好かれようとして人の顔色ばかり伺っている人のことを、心から好きになることは難しいのではないでしょうか? その人の本音が見えないと、なんとなく不安になりませんか?
「何を描いたら共感されるかな?」と考えながら描くのは苦しいことだし、こちらが無理をしていることは、読み手にもそのまま伝わってしまうと思います。
描き手にできるのは、できる範囲で気配りをしながら、自分の気持ちを正直に描くことです。
とはいえこの「気配り」がすごく、難しいです。できる人はすっと自然にできるのかもしれませんが、私にはすごく難しいです。いらんことを言って余計な揉め事を引き起こしてしまうのは避けたいけど、言いたいことは言いたい……。
ずーっとあれこれ考えて、自分なりの、描く描かないの割り切りラインを少しずつ決めてきました。今回は、そのラインについて書いていきます。
これが正解ということではなくて、「私はこう考えています」ということです。お読みになって、「私はそうは思わない」という場合も当然あると思います。いずれにしても、なんらかのご参考になりましたら幸いです。
「自慢・愚痴・悪口」は、聞かされたくないから描かない
タイトルに沿った内容にする
読み手が自分を重ねて読めるぐらい丁寧に描く
無闇に悪口を言わない
「『辛口』の方が面白い」という呪縛
自虐が美徳という大間違い
「人は異質なものにお金を払う」は本当か?
実体験を描くコミックエッセイに付いて回る悩みあれこれ
私の個人的な考えを書きます。ご参考になりましたら幸いです。
家族のことを描いてもいいのかどうか
匿名か実名か
ペンネームについて
話を盛るか盛らないか
「こんな話描いて意味あるのかな…」と思ってしまう時は
こんなの読みたいかな? 意味あるのかな? と思ってしまって何も描けない気がする時もあるかもしれません。
コミックエッセイは基本的には自分の体験談です。不特定多数に向けて発表するのは、見ず知らずの人を捕まえて自分の話をするのと同じことです。だから、「意味あるのかな?」と思ってしまうのは自然なことだと思います。私は、次のように考えることにしました。(引用したページの都合で編集者さんの話と混ざっていてすみません)
よかった話だけでなく困った話なども、「何があってどんな風に困ったか」が伝わるように描いてあれば、お読みになって「そうそう!」と喜んでくださる方があるかもしれません。解決策があるとさらに喜ばれるかもしれませんが、特にない場合は、無理にでっち上げて付けても説得力が伴わないので、付けなくていいと思います。
「聞いて!わかって!助けて!」と悲鳴を上げて助けを呼びたいような気持ちの時もあるかもしれません。そういう場合も、ただ「助けて!」と描くだけでは、読み手から見て何のことかわかりません。助けて欲しい感情だけがどんなに上手に気持ちを込めて描いてあったとしても、「気の毒だけど、なんだかサッパリわからないしどうも共感できない…」となってしまうと思います。
状況をよく観察して、自分のことを全然知らない人が読んでもわかるように、出来事と気持ちを丁寧に描くのが良いと思います。人にわかるように描こうとする過程で、何が起きているのか、どういうことなのかがわかって、少し前に進めるような場合もあるかもしれません。
お読みになる方にとっても、感情をただぶつけられて意味がわからないような作品よりも、描いた人が描くことによってすっきりしたような作品の方が、読んでよかった感じがするのではと思います。
(※私は、実用の分野のコミックエッセイの描き手です。「芸術」の場合はどうなのかは、全くわかりませんすみません)
悪口を言われてまで作品を発表する意味があるのか
今回の話、めっちゃややこしかったですよね。最後までお読みくださってありがとうございます。
長々と書いてきましたが、次回が最終回です。次は仕上げについて。
お読みくださってありがとうございます!