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楽弓の貴重な材料

楽弓に使用される材料は多くが希少かつ貴重な材料で製作されていて、楽弓はまるで宝飾品のようです。

みなさんがこれを聞いてすぐに思いつくのが金属部分ではないでしょうか。

安価な楽弓は金属部分を銀色のニッケル合金で作られていますが、個人製作家の作ったものや高級品、骨董価値の高い楽弓などには、銀色の金属は文字通り「銀」が、金色の金属は文字通り「金」が使用されています。

これらの金属が希少価値が高く、宝飾品に使用されていることは今更ながら説明する必要はないでしょう。

しかし、金や銀は価格が高いだけで現在は安定的に流通されていますから、お金さえ払えれば入手は難しくありません。

ところが、楽弓製作の世界では製作するための材料が「高価」というだけではなく、それ以外の理由でどんどん手に入れにくくなってきています。

スティックの材料

去年ブラジルで森林火災が話題になりましたね。

【解説】 アマゾンの森林火災、どれくらいひどいのか

私はそのニュースを聞いた時に心配になったことがあります。

それは「フェルナンブーコは大丈夫なのだろうか」ということ。

楽弓の歴史について過去の投稿で見てきましたが、その中でスティックには「フェルナンブーコ」という素材を使用する様になったことをお話しました。

弓名称

そして、現在でも「フェルナンブーコ」という、原産地がブラジルの木材を使用して楽弓は製作されているからです。

ところでそのフェルナンブーコという木はどんなものなのでしょうか?

Wikipediaには以下のように記述されています。

ブラジルボク(伯剌西爾木、学名Caesalpinia echinata)はマメ科ジャケツイバラ亜科の常緑高木。別名をフェルナンブコ、ペルナンブコ、ペルナンブーコ(Pernambuco)、パウ・ブラジル。以前は染料に用いられた。材が硬いため、現在もヴァイオリン属の楽器の弓材として用いられる。原産地は南アメリカブラジル東部。1540年にポルトガル人によってはじめて報告された。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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ブラジルボク:ブラジル エスピリトサント州ヴィトーリアにて

ここで

「ちょっと待って、ブラジルボクってブラジルウッドのこと?それって安価な楽弓に使用されているフェルナンブーコの下位互換の違う木じゃあなかったっけ?」

と思った人もいるかもしれません。

それも当然のことで、実は日本ではフェルナンブーコとブラジルウッドは違う木としてカタログの原材料に記載されていることが多いのです。

しかし、本来ブラジルウッドとフェルナンブーコは同じものを指した名称です。

さらに、日本で楽弓の原材料として「ブラジルウッド」と言っているものはブラジルウッドではなくマサランデュバ(アマゾンジャラ、マニルカラとも)というブラジルウッドとは全く別の木です

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Manilkara bidentata

フェルナンブーコという呼び方は、フェルナンブーコ地方で採れる品質が良いブラジルウッドのことを「フェルナンブーコ」と呼んでいたことに由来します。

特に、フェルナンブーコ地方(州)はブラジルで最初の経済の中心地であり、ブラジルウッドの輸出が初めに行われた場所でもあるので、その商品が地名で呼ばれるようになったのは自然なことでしょう。

ちなみに「フェルナンブーコ(ペルナンブコ)」という地名の由来は現地語やポルトガル語を語源とするいくつもの説があってはっきりしません。

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ペルナンブーコ州

ちょっとややこしくなったのでまとめると、こういうことになります。

日本の楽弓カタログに見られる素材名称 → 正式名称

フェルナンブーコ → 学名Caesalpinia echinata:一般的にブラジルウッドと呼ばれる木
ブラジルウッド  → 学名Manilkara bidentata:一般的にマサランデュバと呼ばれる木

ちなみに、そのブラジルウッドの「ブラジル」とは

ヨーロッパで染料として用いられたインド原産のスオウのポルトガル名による。外見と用途が似ていたため、ポルトガル人によって本種もブラジルと呼ばれるようになった。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

もともとブラジルウッドはヨーロッパに赤い染料として輸入されていたことを「楽弓の完成形へ」の回でお話ししました。 その輸入を初めて行ったのがポルトガル人で、彼らが「パウ・ブラジル(赤い木)」と呼んでいたのでブラジルウッドと呼ばれるようになりました。

ここで気が付いた方もいると思いますが「ブラジルという国(または地方)で採れる木だからブラジルウッド」なのではなく、この「ブラジルウッドが採れる国だから国名に「ブラジル」と付けた」のです。

(1822年にブラジル帝国として独立し、1889年の共和革命以降はブラジル合衆国を国名としていたが、1967年に現在のブラジル連邦共和国に改称)

フェルナンブーコは、過去に染料として使用されていましたが、現在の需要は楽弓が最も多く、他にはピストルやライフルの銃床の材料としても人気があるそうです。

さて、そのフェルナンブーコは過度の伐採によって絶滅が危ぶまれている種でもあります。

ブラジルボクは過度の伐採により絶滅の恐れがあるため、IUCNに絶滅危惧種として登録されている。また2007年6月にハーグで開かれたワシントン条約締約国会議において、ブラジルボクは同条約附属書に記載された。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

わかりにくい言い回しですが、つまりは国際自然保護連合(IUCN)という国際団体に絶滅危惧種EN(7つあるランクの真ん中、下図参照)であると指定され、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引における条約(ワシントン条約)締約国会議で「フェルナンブーコの輸出入には輸出国の政府が発行する許可書が必要とする」と決められ(同条約附属書に記載され)ました。

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IUCNレッドリストカテゴリー

そして、その輸出国であるブラジル連邦共和国はフェルナンブーコの原木などの輸出には許可書を発行しない方針ですので、木材はブラジルからの輸出が事実上禁止されています。

ですが、いまだに日本のメーカーでも新作の楽弓をフェルナンブーコで製作しています。

それはブラジルが輸出を制限する前に多めに輸入したものを使い続けているからです。

これは、ブラジル以外の国にいるメーカー全てに言えることで、逆を言えば、ブラジル国内なら新しいフェルナンブーコの原木を手に入れることは可能だったりします。

そして、楽弓に加工されたものは輸出規制の対象になっていません。

今積極的に日本へも販売が行われているL’archet Brasilなどのブラジルのメーカーが作った楽弓がいろんなお店で買うことが出来るようになっています。

(L’archet Brasilの会社はアメリカにありますが、ブラジル国内で生産しています)

なんだか骨抜きな気もしますが、それでも過度の伐採に歯止めはかかっています。

そして、守るだけではなく増やす活動(植林活動)も行われています。

2000年、ブラジルボクの生態系保全を目的に研究や啓蒙活動を行う団体IPCI(International Pernambuco Conservation Initiative)が米国で設立され、2002年にドイツ、カナダでも設立された。2004年からはブラジル政府機関の協力の下、PPB(Programa Pau-Brasil)として植林活動を本格的に始動している。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

さて、ブラジルの熱帯雨林で起こった大規模火災ですが、一番大きな規模の場所はブラジルの西側・ボリビアとの国境側なので、フェルナンブーコ原産地とは離れています。しかし、小規模ながら東海岸側でも発生していますので、せっかく植林したものが火災にあっている可能性も否定できません。

熱帯雨林は7~10月の乾季に森林火災が起きやすく、落雷などで自然発生する場合もありますが、森林を焼いて家畜の放牧地や畑を作るため人為的に起こされている部分もあるそうです。ここまで大規模になったのは人間の手が大きく関与しているのではないかという報道も多いです。

世界の関心がここまで大きくなったので、ブラジル政府も放って置けなくなっているようですね。我々が出来ることはブラジル政府の動向を見極めて、SNSなどで呼びかけるくらいしか出来ませんが、それが大きな力になっていることも確かです。

象牙

おそらく入手が困難になった材料で一番有名なのは、楽弓の先に付いている白い部分「チップ」に使用されている「象牙」でしょう。

1989年の絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(通称:ワシントン条約)によって、象牙製品なども含め国際取引は原則禁止とされており、日本を除くほとんどの国々では国内取引も禁止されている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウィキペディアではこの様になっていますが、後半の「日本を除く」とわざわざ書いてあるところが気になりますね。

ちなみに象牙があるアフリカゾウのIUCNレッドリストカテゴリーはVU(VULNERABLE:傷つきやすい)に分類されています。

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サバンナゾウ Loxodonta africana africana
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

この象牙の取引に対する世界の考え方は、原産国・消費国それぞれで取引の禁止か許可かで様々な立場があります。

なぜそのようになっているかというと、原産地アフリカの南部ではゾウの生息管理がしっかり出来ており、逆に生息数の増加によって獣害も発生するほどになっていますが、北部~中央アフリカでは管理が行き届いておらず、生息数は減少し続けているという地域差があるからです。

特に管理が行き届いていない地域では密猟が横行しており、密猟者は紛争地域から武器を手に入れて武装もしているために、軍が介入しないと取り締まれないといった難しい状況です。

そして、消費国である日本では象牙は厳格な管理の元に持続可能な資源であるという立場です。

環境省のサイトには以下のように記載されています。

1999年と2009年には、生息が安定し絶滅のおそれの少ない個体群と位置づけられている南部アフリカ諸国のアフリカゾウのうち、自然死した個体などから集められた象牙が、条約の締約国の会議における決定に基づき、厳正な管理の下で日本に輸入されました。これらの象牙については、速やかに種の保存法に基づく登録等の手続きが行われ、国内における取引も厳格に管理されています。
出典:環境省/象牙等はルールを守って取引しましょう!

消費国であるEUや日本などは国際的商業取引が禁止になる前に持ち込まれた象牙についてのみ、国内に限って取引を許可しています。しかし、密輸によって持ち込まれた象牙を「取引禁止前に持ち込まれたアンティーク」として取引するという抜け道が問題になっています。

そのため、日本の環境省では国内の象牙管理のために「象牙在庫把握キャンペーン」と銘打って全形を保持した象牙製品(象牙そのままを壁飾りなどにしているものや象牙の形を残したまま浮彫などを施した美術品等)の登録を進めており、登録されていない象牙を譲渡したり販売したりした者には『種の保存法』によって「5年以下の懲役または500万円以下の罰金、もしくは両方」という罰則を科しています。

ただし、全形を保持したものに限っていますので、きちんとした管理と言えるかは疑問であると環境保護団体や動物愛護団体から声が上がっています。

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全形象牙。ほぼ全ての国で取引が禁止されているが、日本では自宅の押し入れや床の間から出てきた「押し入れ象牙」「床の間象牙」などの名目で流通しており、新作の根付や印鑑など幅広く活用されている
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

このように各国の足並みは揃わない状況ではありますが、世界的に見るとだんだん厳しく取り締まっていく方向に進んでいます。

環境省でも令和元年7月1日から、全形を保持した象牙の登録審査を第三者の証言とそれを裏付ける書類がないと登録出来なくなるなど、より厳格化しています。

また、日本は国内だけの取引でも世界最大の市場だそうですが、最も多いのはやはり印鑑です。これから脱印鑑が進む方向ですから、象牙の需要は減るでしょう。そうすると、日本でも象牙の取り扱い制限が厳しくなる可能性が高いのではないでしょうか。

また、イギリスはEU離脱に伴って象牙製品全般の持ち込み、持ち出しについて厳格にしていくと発表しています。

海外へ(特にイギリスへ)象牙のチップが付いている楽弓を持ち出す可能性がある方は気を付けてください。

(詳しくは日本弦楽器製作者協会の注意喚起をご確認ください)

以上のように象牙は取り扱いがとても難しくなってきました。

そのため、今では楽弓のチップ用に代替品が多く作られるようになっています。

特に最も材質が近いとされる製品がシベリアの凍土から発掘された「マンモスの牙」です。

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これは当然アフリカゾウに近い種の牙ですから材質が近いですし、すでに絶滅している種であり、死亡している個体でもあるので、種の絶滅を防ぐための取り組みであるワシントン条約には抵触しません。

ただし、逆に近い材料であるがゆえに、取引が禁止されている国へ持ち込みあるいは持ち出しするときにあらぬ疑いを受ける可能性もある材料です。 そのため、新作に使用するのをためらうメーカーもあります。

次に近いものとして「牛骨」があります。

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牛は肉牛としても生産されていますから、牛骨は大量に手に入れやすく見た目も似ています。

しかし、象牙よりは固く粘りがないので、加工が難しくなります。

それから、安価な楽弓に良く使用されるのが合成繊維でできた「イミテーション」と呼ばれるものです。

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昔はやわらかいプラスチックで作られたチップが安価なものには使用されていましたが、最近では繊維状にムラを持たせた材質で、より近い見た目と硬さを実現した材料です。

それぞれの写真で見ても違いが全然わかりませんが、手に取って見ると質感などでわかります。

このように、象牙は規制が強くなってきているので、楽弓のチップは代替品へ置き換わってきています。

その他には銀などの金属でチップを作っている楽弓もあります。

有名なのはヒル商会が販売していた楽弓ですね。

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銀で出来たチップの楽弓
出典:BOWS FOR MUSICAL INSTRUMENTS of the Violin Family

ただし、銀で出来たチップはその他のものよりも重いので、製作段階で楽弓のバランスを考えて作られています。 修理で他のチップに交換したり、逆に他のチップだった楽弓に銀のチップを付けると楽弓のバランスがおかしくなってしまいますので注意が必要です。

象牙は倫理的な問題もあってなかなか難しい状況となっています。

しかし、楽弓には象牙以外にも問題となっている材料があります。

楽弓は材料のほとんどが貴重な材料で出来ていると言っていいのですが、そうでもなさそうなものもいくつかあります。

楽弓に使用される持続可能な資源

現在販売されている一般的な新作楽弓で使用されている材料を見てみましょう。

スティック → フェルナンブーコ
チップ → 牛骨
金具 → 銀(半月リング・アンダースライド・スライドライナー)・鋼(雄ねじ)・真鍮(雌ネジ)
フロッグ → 黒檀
スライド → 真珠貝 (スライドとはフロッグの下にある毛を隠している部分)
毛 → 馬毛
ラッピング → 銀線・革(カンガルー・牛等)
ボタン → 黒檀・銀・真珠貝

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この中で貴重ではない材料は「牛骨」「鋼・真鍮」「革」「馬毛」「真珠貝」です。

牛骨牛革は肉牛を酪農で生産してたくさん育てているので絶滅の危険はありませんし、たくさん手に入れられます。

真鍮も産出の多い金属です。

馬毛は日本ではあまり一般的ではありませんが、海外では馬肉は普通にスーパーなどで牛と並んで販売しているほど一般的な食材であり、牛と同等です。特に楽弓の馬毛に適していると言われるペルシュロンという品種は馬肉としても育てられ、葦毛(白馬)の多い品種です。

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ペルシュロン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

の内のカンガルーは1970年代に一時絶滅危惧種と指定されましたが、1995年にはリストから外されました。個体数の増えすぎによる農作物への獣害などが問題となり、オーストラリア当局は、カンガルーの間引き駆除は必要であるとして年間の駆除割当数を設定して狩猟を許可しています。

オーストラリア政府によると、国内のカンガルー生息数は2017年の調査でおよそ5000万頭となっていて、こういったことを根拠に駆除されたカンガルーの肉や皮革が輸出されています。

カンガルーの革は柔らかくてしなやかなうえに丈夫なので、主な利用はサッカーのスパイクシューズなどのスポーツ用品やバッグなどですが、楽器では楽弓以外には三味線などにも利用されています。

三味線は動物愛護団体から犬猫の革を使用することは道徳的ではないとの指摘もあり、カンガルー革の使用が増えているそうです。皮肉なことに、これを訴えている動物愛護団体の中にはオーストラリアの団体も少なくないそうです。

真珠貝も養殖が盛んですので、手に入れるのは難しくありません。真珠を生産するために養殖していますが、真珠を取り出した後の貝殻はボタンやネクタイピンなどの装身具にも使用されています。

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養殖のアコヤガイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

黒檀

でも「黒檀」はそこまで入手が難しい材料のような気がしませんよね。

東急ハ◯ズなどのDIYストアで簡単に購入可能です。

そして、特にバイオリン以外の楽器全体でも、黒檀は多く使用されています。

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黒檀
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

例えば、ピアノの黒鍵、ギターの指板、クラリネットなどの木管楽器の管などです。

ちなみにバイオリン本体では指板やペグ・テールピース・顎当てなどにも使用されています。

今では木管楽器用にはグラナディラなど、代替材料になっている楽器も多いですが、バイオリンは未だ黒檀を使用し続けています。

Wikipediaにはこう書いてあります。

コクタン(漢字表記:黒檀、英名:Ebony、エボニー)は、カキノキ科カキノキ属の熱帯性常緑高木の数種の総称。 インドやスリランカなどの南アジアからアフリカに広く分布している。 木材は古代から世界各国で家具や、弦楽器などに使用され、セイロン・エボニーは唐木のひとつで、代表的な銘木である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

黒檀は一つの種を指した名称ではなく、カキノキ属の硬く重量がある黒色の木材を総称して「黒檀」と呼んでいます。

・Diospyros ebenum  通称、セイロン・エボニー、本黒檀
・Diospyros celebica  通称、マカッサル・エボニー、縞黒檀
・Diospyros malabarica  通称、ブラック・アンド・ホワイト・エボニー、斑入黒檀
・Diospyros mun 通称、ムン・エボニー、青黒檀
・Diospyros crassiflora 通称、アフリカン・エボニー

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マカッサル・エボニー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

さて、そんな黒檀ですが、IUCNレッドリストで2018年7月にVU(Vulnerable:傷つけられやすい)に分類され、絶滅危惧種にカテゴリーされました。

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IUCNの原産地表記がカメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ、ガボン民主共和国、ナイジェリアとなっていますから、アフリカンエボニーが適用されているようです。

Wikipediaにもこのように記載されています。

マダガスカルでは欧米やアジアで銘木と言われる近縁種の樹木が多く生育していることから、近年木材産業が非常に盛んになっている。 特にアフリカン・エボニーは古くから高級家具や楽器で愛用されているエボニーの近縁種であるため、現地の物価としては非常に高値で取引され、原産国の武装ギャングによって、私有地や国立公園の産業用でない樹木が強奪されることがしばしある。 現在、治安の安定化とギャングの資金源を断つために、ワシントン条約の附属書Ⅱに登録されており、加盟国内から輸入する際には生産者の販売証明書類の提出を求められている。
2012年には、アメリカのギターメーカーであるギブソン社が、現地の木材販売業者から証明書類を取得せずにマダガスカル・エボニーを輸入したとして30万ドルの罰金を司法当局から命じられている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

すでにワシントン条約でも規制され、実際に楽器メーカーが取り締まりによる罰則を受けています。

このように、楽器の材料・特に楽弓の材料を巡っては、年々規制が厳しくなってきています。10年前は黒檀がワシントン条約に抵触するとは思われていませんでしたが、もうそうはいっていられなくなってきました。

そして、代替材料として注目されたグラナディラ(アフリカン・ブラックウッド)も現在ワシントン条約附属書Ⅱの適用対象になってしまいました。

このように見てくると、特にアフリカが原産となっている材料の多くが絶滅の危機に瀕していて、これにはアフリカ諸国で問題となっている武装ギャングが大きく関与しているようです。

ただ、この問題は紛争や貧困、西洋的モラルの押し付けなど、多くの複雑な問題をはらんでいますので、簡単には解決できません。

我々消費側の者としては、これ以上少なくならないように植林や保護といった活動に参加することや、情報収集と発信を心がけて、少しづつでも改善されていくことを期待していきたいと思います。

また、グラナディラのように代替したために絶滅に瀕するといったことのないように、きちんと持続可能な代替材料を見つけたり、生み出した上で、積極的に切り替えていくことも必要でしょう。

出展・参考文献
BBC NEWS JAPAN
L’archet Brasil
Wikipedia
 ブラジルボク
 Manilkara bidentata
 Pernambuco(州)
 ブラジル
 象牙
 アフリカゾウ
 ペルシュロン
 アコヤガイ
 コクタン
 カキノキ属
 アフリカン・ブラックウッド
環境省/象牙等はルールを守って取引しましょう!
日本弦楽器製作者協会/弦楽器演奏者等の英国に渡航する際の注意喚起!
DICTUM
W. Lewis; Library ed edition:
 JOSEPH RODA: BOWS FOR MUSICAL INSTRUMENTS of the Violin Family
ナショナルジオグラフィック 年間140万頭、豪のカンガルー猟は是か非かTHE IUCN RED LIST OF THREATENED SPECIES 

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