ビジネス上の戦闘力は、累積矢面時間に比例する
広告・広報・マーケティング関連の仕事をしている人は、客先でのミーティングも多いだろう。そのときクライアントの口から「いやぁ、最近売上が厳しくてねぇ…。去年と同じ予算で同じことをやってるんだけど、明らかに成果がでなくなってきているんですよ」なんて言葉が出てくることがある。
そのとき、あなたは何と返すだろうか。
クライアントの課題は、どんどん複雑化・抽象化してきている。「理想はここ、現状はここ、ギャップがこれだから、課題はこれ。予算はいくらで、時間軸はこんな感じだから、解決するための提案持ってきて!」なんて言ってはくれない。
となると、我々の仕事は、クライアントが口にする抽象的かつ曖昧な発言を受け止め、その場で、100往復のキャッチボールをしながら、最後に「あなたと話していて、自分たちの課題が明確になりました! ぜひその課題を解決したいから、具体的な提案を持ってきてください」と言わせてあげることだ。
僕は、この作業を「要求定義」と言っている。
システム開発は、一般的に、要件定義→詳細設計→実装→テスト→ローンチの順番で進む。要求定義とは、要件定義の前に行う工程で、クライアントの希望を聞き、何が優先順位の高い課題なのかを明確にするとっても重要な作業である。
問題は、この要求定義は、クライアントとの100往復を超える動的なキャッチボール(会話)の中で行われていくことだ。
クライアントが「売れなくて困っている」と言ったときに「持ち帰って提案にまとめてきます」「次回までに調べておきます」じゃあダメなのだ。ああでもない、こうでもない、こっちですか、あっちですか、こういうことが考えられる、もしくはこっちかもしれない、こういう打ち手はどうか、もしくはこっちの打ち手という考え方も、というキャッチボールの中で、クライアントの要求は解像度を上げていく。
だから、我々に必須のスキルは、知識だけでは足りない。思慮深く熟考してうんうんうなりながら考え込んでしまっては、会話が成り立たない。知識を持っていることは大前提で、その知識が詰まっている引き出しを瞬時に開けて、動的な会話を紡(つむ)いでいかなければならない。
仕事力=引き出しの量×瞬発力
お手本がいる。千と千尋の神隠しに出てくる、釜爺(かまじい)だ。彼は6本の手を巧みに動かし、マルチタスクをこなす。
重要なのはこのシーンだ。数ある引き出しの中から、顧客が希望する湯をブレンドするための薬草を取り出す。リクエストの札が出てきた瞬間に、この湯はこの薬草とこの薬草のブレンドだな。それはあそこと、あそこの引き出しに入っている、と無意識に腕が伸び、それを取り出す。
まさに仕事力=引き出しの量×瞬発力のお手本だ。
では、我々がビジネス界の釜爺を目指すためには、どうしたら良いのだろうか。
まず本を死ぬほど読んで引き出しを増やす。この方法で、ある程度引き出しの量を増やし、その引き出しの中に必要な知識を入れていくことができる(当然実践で使うことで知識を知恵に変えていかなければならないが、実践の前に知識は多く持っておいたほうが良い)
ブログやnoteを書くと、頭の中が整理されるため、引き出しの中の知識をReadyな状態にしていくことにもつながるからおすすめです。
しかしそれだけでは、待ったなしの現場では戦えない。瞬発力が足りないのだ。この瞬発力を上げる唯一の方法は、累積矢面時間を増やすことである。
矢面(やおもて)時間という言葉は初耳かもしれない。この言葉は、野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタントである鈴木良介氏の言葉である。
野村総研には、その道のプロフェッショナルであるコンサルタントが大量に在籍している。鈴木氏は、そんな魑魅魍魎なプロが跳梁跋扈する世界で、「ビッグデータといえば鈴木」(最近ではIoT×AIといえば鈴木)というポジションを獲得している、気鋭のコンサルタントだ。
鈴木氏は、「戦略的・計画的に自身のキャリアをつくっていくためには、どれだけクライアントとの矢面に立ち、成功と失敗の経験を積んだか。それに尽きる」と説いている。
クライアント先で会議に参加していても、ただ座っているだけでは累積矢面時間は蓄積されていない。宿題をもらって帰社して、会社で提案書や報告書を作成していても、クライアント先でそれをプレゼンしない人間はどこか他人ゴトで仕事をしている。自分がしゃべるわけじゃないからだ。だから、そういう仕事も累積矢面時間には積算されない。
後ろを振り返っても誰もいない、自分がやるんだ、というヒリヒリ感の中で、どれだけ目の前の仕事を自分ゴトとして捉え、取り組むかなのだ。あなたの累積矢面時間はどのくらい貯まっているだろうか。
本を読んで引き出しを増やす。累積矢面時間を増やして瞬発力を上げる。1分1秒でも多く積み上げる。この2つを愚直に繰り返し続ける。
そうすれば、どんどん勝率が上がるはずだ。武運を祈る。
(追記)
この記事が本になりました!
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