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気候変動を知る +2℃の世界を見ないで済むために、私たちが使えるCO2残量は?~カーボンバジェット~

私自身を含めて2000年代のころの社会の雰囲気を振り返ると、”地球温暖化による大規模気候変動は、まだまだ未来のこと”、とやや高をくくっていたように思います。しかし2020年代初めの現在、気候変動は現実の脅威となって私たちの生活を脅かすようになってきました。温暖化防止のための社会変革が急務であることは誰の目にも明らかで、気候変動枠組み条約パリ協定での合意文書「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」に見られるように、我々の目標は「+2℃に温暖化した世界を実現させない」というものでしょう。
 そのためにはどうしなければならないのか。温暖化を止めるためには、まずは人為的な二酸化炭素の排出を実質的にゼロにする、カーボンニュートラルを実現しなければ話が始まりません。

図1 IPCC AR6 WG1 SPM 日本語訳(気象庁)より

図1はIPCC AR6 WG1で示されている図です。ここに示されている二酸化炭素排出シナリオのうち、SSP1-2.6が、+2℃までに温暖化を抑えるシナリオで、2075年ごろにカーボンニュートラルとなり、その後は排出でなく大気中の二酸化炭素の吸収が行われるということが想定されています。そして、SSP1-1.9は、+1.5℃までに温暖化を抑えるシナリオで、2055年ごろにカーボンニュートラル、その後は吸収が行われることになっています。

図2 IPCC AR6 WG1 SPM 日本語訳(気象庁)より

図2がそれぞれのシナリオに沿ってCO2が排出されたときに、地球平均気温がどのように推移するのかを示したものです。SSP1-2.6では、不定性の範囲でみると2℃を上回ってしまっていますが、最良推定値の実線は2℃を下回っています。同様にSSP1-1.9では、最良推定値としては1.5℃までに抑えられていることがわかります。
 気温上昇が2℃を越えないようにするためには、排出する二酸化炭素量を何トンまでに抑えなければならないのかについて、わかりやすく示した図が次のものです。

図3 全国地球温暖化防止活動推進センターのお役立ちツール(IPCC AR6 WG1 SPM)をもとに改変

この図が示すように、温暖化によって上昇する地球平均気温は、排出されるCO2の累積量にほぼ比例するという関係があります。モデルの不確実性を考慮すると、気温上昇が+2℃となる場合の累積排出量の範囲は、3740(3290~4690)GtCO2で、最良推定値である3740GtCO2であったとしても、気温上昇が+2℃以下に抑えられる確率は50%であり、逆に50%の確率で気温上昇は2℃を超えてしまうこともあり得ることになります。同様に、気温上昇が+1.5℃となる場合の累積排出量の範囲は、2690(2890~3290)GtCO2と求められています。
 産業革命以前から、2019年までに全世界で2390GtCO2がすでに排出されているため、2℃あるいは1.5℃の温暖化までに抑えるには、今後排出してよいCO2量は、それぞれ1350(900-2300)GtCO2、500(300-900)GtCO2となります。この、我々に使うことの許されたCO2残余量は、カーボンバジェットと呼ばれています。
 世界全体の2019年におけるCO2排出量は33.5Gtであった(https://www.jccca.org/global-warming/knowleadge04)ことを考えると、2020年以降の我々のカーボンバジェットなど、すぐに使い切ってしまいそうです。温暖化を1.5℃までに抑えるためには、2030年までの期間が勝負であることがわかります。

すみませんこちらは製作途中の図です(そのうち差し替えます)


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