池辺 靖/Yasushi Ikebe

科学コミュニケータ―

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最近の記事

1世帯当たりの消費エネルギーは1000ワット!そのうち半分が電気です!

エネルギー白書2022の、図【第212-2-7】によると、家庭でのエネルギー消費量は、1965年から1973年では1.7倍に増加、1973年から2020年では1.1倍に増加したことが示されています。 この図だけ見ると最近30年の、家庭部門のエネルギー消費の伸びがとても穏やかだったような印象を受けますが、同じくエネルギー白書2022の図【212-2-2】には、家庭部門エネルギー消費量は、1973年から30年の間にほぼ倍増しており、2011年の東日本大震災後の省エネルギーの傾向

    • こんなに違う?!CO2の季節変化~北半球と南半球

      産業革命前は278ppmであった大気中の二酸化炭素は、今や1.5倍ほどの410ppmを超えていて、右肩上がりの傾向は全く衰える様子はありません。「人為起源の二酸化炭素排出が地球温暖化をもたらしていることは "unequivocal" =疑う余地がない」というのはIPCC第6次報告書の最も大事な結論の一つですから、とにかく化石燃料依存の社会を一刻も早く大転換しなければなりません。  そのためにも、二酸化炭素濃度の値に対して、私たちは敏感にならなければいけないと思います。下の図は

      • 石炭・石油・天然ガス 主役交代の歴史

        現在の私たちの文明は化石燃料によりつくられ、現在も化石燃料によって維持されています。化石燃料の内訳には、石炭・石油・天然ガスがありますが、それぞれどのような勢力を誇って来たのか定量的に調べてみました。  Our World in Data の"How have the world's energy sources changed over the last two centuries?"に、次のような図が掲載されていました。 200年前は伝統的なバイオマス燃料によるものがほ

        • 世界の平均気温/全球平均気温とは?

          Global Average Temperature / Global Mean Surface Temperature / Global Surface Air Temperature / Global Surface Temperature などいろいろな呼び方がありますが、これはいったいどういうパラメータなのか。  普通に”平均”を考えると、(東京の20℃+モントリオール10℃+昭和基地-35℃+・・・・・・・)/観測地点数、みたいな計算式を思い浮かべてしまいますが、そ

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          日本の化石燃料依存度は未だ9割!!(エネルギーを知るシリーズ)

          「脱炭素の実現」は人類にとって最優先で取り組まなければならない目標であるが、世界全体の二酸化炭素排出量は未だ右肩上がりの傾向が続いている。日本では省エネも進み、エネルギー需要のピークは過ぎて、減少傾向に入っているが、脱炭素はどれだけ進んでいるのであろう?   まず、発電部門を見てみよう。図1は、エネルギー白書2022からとってきた発電電力量の推移を示している。2020年度の総発電量は、10008億kWhで、その内訳は水力(7.8%)、石炭(31.0%)、LNG(39.0%)

          日本の化石燃料依存度は未だ9割!!(エネルギーを知るシリーズ)

          気候変動を知る 産業革命以前の二酸化炭素濃度は278ppmだった

          人為的な二酸化炭素の排出によって、地球環境がどのような変化を受けたのか。その変化の基準となるのは、人為的な二酸化炭素排出が本格化する産業革命以前(pre-industrial era)ということになっている。  当時の大気中二酸化炭素濃度はいくらだったのか? 過去の空気のサンプルが今でも手に入るのが、Ice-coreである。Scripps CO2 Programに、Ice-coreで得られた過去のCO2濃度(1959年以前)と、1959年以降はハワイ・マウナロアと南極点の観測

          気候変動を知る 産業革命以前の二酸化炭素濃度は278ppmだった

          気候変動を知る 大気中の二酸化炭素濃度の歴史

          地球の大気中の二酸化炭素濃度が、”かつてないほどに”高くなっていて、それによって引き起こされている地球温暖化が、近年の極端気象現象の増加を招いているとともに、将来的に二酸化炭素濃度はさらに上がり、私たちの子孫は大規模気候変動リスクにみまわれる。これが、現代社会に生きる私たちが、早急に社会変革を起こして、温暖化を食い止めなければならない理由である。  ただ、このような話に対して、「地球の歴史のなかで見れば、今よりも二酸化炭素濃度が高かった時期などいくらでもある。”かつてないほど

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          市販の弁当や冷凍食品の利用が死産リスクを倍増させる~妊婦10万人を対象とした調査から

          人の手によって作り出された様々な化学物質が環境中に広がり、野生生物たちの健康を脅かしているのではないか。いわゆる環境ホルモンと呼ばれる、内分泌攪乱物質に対する警告は、ずいぶん前から存在していました。検出するのが難しい低濃度でも、健康影響がでることが指摘されていました。しかし、おそらく、急性の健康被害ではないことや、研究自体が容易ではないことなどから、大騒ぎとなった一時のブームの時が過ぎ去ると、また社会の関心は薄れてきていました。しかし、プラスチック製品に含まれる、さまざまな添

          市販の弁当や冷凍食品の利用が死産リスクを倍増させる~妊婦10万人を対象とした調査から

          電源構成における再エネ比率 世界と日本

          現在の化石燃料依存の状態から、枯渇しない・二酸化炭素を出さない、すなわちサステナブルなエネルギー源へ、100%移行することを目指して、私たちの社会は急ピッチで進んでいかなければなりません。 発電部門での脱炭素を達成させるためには、再生可能エネルギーを主力電源としてとらえ、電源構成における再エネ比率を着実に高めていくことが求められます。化石燃料による火力発電にくらべて発電コストの高い再生可能エネルギーによる発電割合を増やしつつ、自由競争によるコスト低下をもたらすために、「電力市

          電源構成における再エネ比率 世界と日本

          1次エネルギー供給量 世界と日本

          世界のエネルギー供給量は右肩上がり まず我々が認識しなければならないことは、世界は、まだまだエネルギーを必要としていることです。下図は、世界の一次エネルギー供給量の経年変化を、エネルギー源別の内訳とともに示したものです。これをみると、世界のエネルギー消費量は右肩上がりで、その傾向は全く衰える様子は見られないということです。2020年に大きな落ち込みがみられますが、これはCOVID-19のパンデミックによる影響と考えられます。しかし、はやくも2021年には2019年並みのエネ

          1次エネルギー供給量 世界と日本

          プラごみってホントに多い

          わたしたちは毎日の生活で大量にごみを排出しています。職場にも住居にも、ごみ収集所がありますが、いつもキレイに整頓してくださっている担当の方には本当に感謝です。  日々の生活でホントに多いと実感するのはプラスチック類です。日々の食料品はもっぱらスーパーマーケット。野菜・果物・肉・魚・弁当・惣菜・パン・納豆、何を買ってもプラスチックで包装されています。資源ごみとして分別してから捨てるので、プラスチックの量(軽いですが嵩がすごい)に毎日圧倒されます。  実際、日本の家庭ごみに占める

          プラごみってホントに多い

          今(2020年ごろ)1億5000万トンの海洋プラスチックは、2050年までに80億トンを超えて海の魚の重量と同程度に!

          さまざまな海洋生物が、人類が環境中に放出したプラスチック廃棄物によって苦しめられている。プラごみは、明らかに生態系を破壊しており、その影響は我々人類にとっても目に見える脅威となって、その姿を現しつつある。我々はまずプラスチック廃棄物の排出量をゼロにしなければならない。さらに、これまでに放出して環境中に蓄積されているプラごみを回収無害化あるいは生態系へ影響を及ぼさない場所に完全に隔離する処置が必要である。プラスチックに対して我々が果たさなければならない責任は、化石燃料燃焼によっ

          今(2020年ごろ)1億5000万トンの海洋プラスチックは、2050年までに80億トンを超えて海の魚の重量と同程度に!

          日本人は容器包装プラスチック消費量では世界第2位~ひとりあたり年間32kg

          2010年の統計で、日本は一人当たりのプラスチック廃棄物排出量でみると、0.171[kg/人/日]という数字があった。これは年間にすると62.4[kg/人]である。 2014年の統計だが、容器包装プラスチックの廃棄物量でみてみると、日本では一人当たり32.4kgであり、この値は世界第2位の多さだというレポート、"single-use plastic"がUNEPより出されている。  同じUNEPのレポートを引用しておきながら、すこしずつ違う値で図がつくられているものを以下にい

          日本人は容器包装プラスチック消費量では世界第2位~ひとりあたり年間32kg

          国別のプラスチック廃棄物排出総量ランキング(国全体と国民一人当たりと)

          プラスチック廃棄物は、リサイクル、焼却、埋め立て処理、環境に散逸のいずれかの運命をたどる。リサイクルによって完全に人間社会の中でマテリアルを循環させているもの以外は、大気中のCO2濃度上昇に寄与するか、環境中に分解できない厄介な物質として蓄積されるかする。プラスチック廃棄物の排出量は、将来的にはゼロにしなければならない。  さて、現状で我々はどれほどの量のプラスチックごみを排出しているのか。Our World In Dataというウェブサイトに、[各国から排出されたプラごみ総

          国別のプラスチック廃棄物排出総量ランキング(国全体と国民一人当たりと)

          容器包装プラスチックは、年間生産量の36%、年間廃棄量の47%を占める

          毎年どれくらいの量のプラスチックが生産され、どれくらいの量のプラスチックが廃棄物として排出されているのだろうか? Geyer, Jambeck, Law, Sci. Adv.,2017, 3, e1700782の論文(以下GJL2017)で、用途別の統計データをまとめたものがあるので、そこからみていく。 図1は、世界のプラスチックの生産量の推移を、用途別に見たものである。 図2は、廃棄物として出されたプラスチック(これらはリサイクルされるか、焼却されるか、埋め立て・環境散

          容器包装プラスチックは、年間生産量の36%、年間廃棄量の47%を占める

          毎年800(480-1270)万トンのプラスチックごみが海へ排出されている!

          海洋プラスチック問題は、いま喫緊となっている環境問題の一つだ。 Jambeck et al. 2015, Science, 347, p768は、太平洋、大西洋、インド洋、地中海、黒海に面している国の、海岸線から50km以内に住んでいる人々から排出されるゴミを起源として、毎年何トンのプラスチックが海洋に流れ込んでいるかを2010年の統計データを用いて推定した。 Jambeckらの手法は以下のとおりである。 [1年間に海洋に運ばれるプラスチックごみの量] =[海岸から50㎞範

          毎年800(480-1270)万トンのプラスチックごみが海へ排出されている!