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気候変動を知る 大気中の二酸化炭素濃度の歴史

地球の大気中の二酸化炭素濃度が、”かつてないほどに”高くなっていて、それによって引き起こされている地球温暖化が、近年の極端気象現象の増加を招いているとともに、将来的に二酸化炭素濃度はさらに上がり、私たちの子孫は大規模気候変動リスクにみまわれる。これが、現代社会に生きる私たちが、早急に社会変革を起こして、温暖化を食い止めなければならない理由である。
 ただ、このような話に対して、「地球の歴史のなかで見れば、今よりも二酸化炭素濃度が高かった時期などいくらでもある。”かつてないほどに”高いなんていうのは全くの嘘であり、二酸化炭素濃度の上昇が人為起源というのも間違っている。自然変動で説明できる。」と主張することもできるかもしれない。
 ここでは、地球大気の二酸化炭素濃度の歴史を押さえておこう。そして、現在の二酸化炭素濃度の上昇はやはり異常なのだとIPCCが主張していることを知ろう。

現在は地球史の中では最も二酸化炭素濃度の低い時代

図1. 大気中の二酸化炭素濃度の歴史(IPCC AR6, Figure 2.3より)

図1.に示したのは、IPCC第6次報告書WG1の第2章に載っている図である。地球大気の二酸化炭素濃度の歴史が、4.5億年前から示してある。真ん中のグラフは5800万年前から、下のグラフは350万年前から現在までの濃度変化である。これらのグラフを見ると、少なくとも5000万年前ごろから現在までの大きな傾向として濃度は一貫して下がってきており、現在がもっとも濃度の低い時代であることがわかる。

最近の200万年では最も二酸化炭素濃度が高く、最近の80万年では最も濃度上昇の速度が速い

地球史の中でも、もっと最近のところだけを見てみよう。図2もIPCC第6次報告書WG1からとってきた図である。80万年前からの氷期間氷期の周期変化と、紀元1年から2000年の地球大気の二酸化炭素濃度変化を示してあるが、200年前からの濃度の急上昇ぶりには、目を見張るものがある。

IPCC AR6 WG1 Figure 2.4より

2019年時点で、濃度は410ppmに達しているが、かつて地球の大気が同程度の二酸化炭素濃度を持っていた時代を見つけるためには、少なくとも今から200万年前にまでさかのぼらなければならない(図3/IPCC AR6 TC 2.2)。


図3. IPCC AR6 WG1 Figure TC.9より

またIPCCによると、現状の特異性は、二酸化炭素濃度の上昇スピードからも見て取れるという。

図4. IPCC AR6 WG1 Figure 2.10

図4は、放射強制力の歴史を示している。右下のグラフは、人為起源の放射強制力の変化率を30年ごとに平均値を求めてプロットした図である。0.5 [W/m2/decade]ということは、10年ごとに0.5W/m2の放射強制力の上昇があり、温暖化がどんどん進んでいる状況を表している。
 そしてIPCC AR6 WG1 TC2.2(p69)によると、
1850年以降に観測された二酸化炭素濃度の上昇スピードは、100年間での上昇率で見た場合、すくなくとも過去80万年では見られなかった大きさである。
としている。また、これは(low confidence)という注釈付きだが、
・過去5600万年の間で、最も温暖化スピードが高かった時期でも、今(1900-2019)のスピードのせいぜい4分の1のスピードだった。
と記述されている。
 地球史的に見ても、我々人類は、地球温暖化に対して危機感を持たなければならない。そのポイントは、変化の速度の速さである。


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