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【インタビュー】小さな決断の積み重ねが、望む未来につながっていく ①

2月11日の朝、友人の純子ちゃんから「今日、HTLの卒業式に行きますか?」とLINEが来た。

HTLとはHappy Theory Laboの略。私たちは、”Happyちゃん”こと竹腰紗智さん(人気ブロガー、実業家、意識研究家)が立ち上げた“意識を研究するオンライン講座”に2ヶ月間参加していた。
卒業式では、受講者が2カ月間の研究発表をするだけではなく、希望者が舞台上でファッション、歌、ダンスなど、様々なパフォーマンスを披露することになっていた。
純子ちゃんは、卒業式前日に、急遽、オタクダンス部に参加することを決めた。歌が好きで、今まで様々な舞台で歌を披露してきたことは知っていたが、ダンスを踊るなんて、彼女の中でどのような心境の変化があったのだろう。その展開に好奇心をくすぐられながら、まずはアイドル“純ちゃん”をこの目でしっかり見届けようと思い、会場のある渋谷に向かった。

白いフリルのワンピースに黒いブーツで舞台に登場した純子ちゃんは、スポットライトを浴びて、キラキラと輝くアイドルそのものだった。笑顔でお客さんの声援に応え、次々にダンスのポーズを決めていく姿は3児の母には到底見えなかった。私はアイドル“純ちゃん”にくぎ付けになっていた。

■優さんとの出逢い “自分の存在で魅せる”

その日から6日後、純子ちゃんは事の顛末を清々しい表情で語った。
純子ちゃんは、2ヶ月間HTLに参加し、朝晩とHappyちゃんのインスタライブを聴いていたが、皆が「分かりみがすごい」と盛り上がっている一方で、他の人たちのように腑に落ちる感覚は得られないでいた。ただ、途中からは、分からない部分があったとしても、いつか分かるだろうから、聴いているだけで細胞に染み込んでいることにしようと思った。
内面的な気づきはそれなりにあったが、外側の状況はさほど変化していなかったため、自分自身が変わった実感はなかった。とはいえ、変化は少しずつ自然にしていくものだから、実感はなくとも自分にも何かしらの変化はきっと起こっているのだろうと感じていた。

このまま卒業式を迎えるのかと思っていた矢先、卒業式の4日前に、HTL内のインスタの投稿が目に飛び込んで来た。それはHTLメンバーの優さん(アニメ監督)が踊っている動画だった。キラキラしていて、なんて可愛いんだろうと思った。

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文章を読むと、卒業式のステージで一緒にダンスを踊るメンバーの募集とレッスンの告知だった。”自分の存在で魅せる”という言葉を見た時に、存在で魅せるとはどういうことなのかと興味が湧き、この人の話を聞いてみたいと強く思った。

「上手いとか下手とかではなくて、自分の存在で魅せるというやり方をすると、すごく簡単に踊ることができると書いてあった。私は歌が好きで、夢が叶って色々な舞台にも立ったんだけど、あるときから、自分の未熟さばかりに目が行くようになって。もっとこういう声で歌いたい、こういう表現をしたいのに私のテクニックではできないって。それに、人と比べて自分は全然ダメと思ってしまい、舞台に立てば立つほど苦しかった」

“歌を歌いたい、舞台に立ってみたい”という願いを見つけてからは、不思議なことにそのチャンスが次々にやってきて、舞台に立つことができた。はじめはただ楽しくて、夢が叶って嬉しいという感覚だった。
苦しくなったきっかけは、2017年に参加したHappyちゃん主催の“シンデレラプロジェクト”というイベントだった。

「イベントでは、ミュージカルをやったの。ボーカルが3,4人いて、みんなはオーディションを合格して参加していたのに、私はたまたまオーディションを受けずに別ルートから入ることができた。ラッキーだったんだけど、でも急にこんな形で入ってしまって申し訳ないという気持ちと、周りのメンバーはダンスや歌が上手なのに、それに比べて私は全然ダメと思ってしまって、この場に合わない感じがしてすごく居心地が悪かった。練習中も自分の軸から外れていることは分かったんだけど、どうやって戻ったらいいか分からなくて、結局、辛い気持ちのまま本番を迎えてしまった」

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素晴らしい舞台に立てたのに自分を表現できないままに終わったしまったという思いがあり、それをずっと引きずっていた。
歌だけでなく、ブログの発信もできなくなった。自分を表現することで人にどう思われるのかが怖くなった。人の目が気になって苦しかった。もっと堂々と自分のままでいる、それを表現して楽しむ自分でありたいと思っていたが、なかなかその状態には戻れなかった。
瞑想を通じて意識的に深い呼吸を実践したHTLの60日間で、人と比較して自分を否定する声が徐々に小さくなり、本来の自分が戻ってきた感覚はあったが、まだ“発信する、舞台に出る”という感じではなかった。

告知文をきちんと読んでいなかった純子ちゃんは、そのレッスンが舞台に立つためのものだというのを理解しておらず、とにかくこの人のダンスレッスンを受けてみたいという思いで卒業式前日にレッスンに行くことにした。
その日は2回目のレッスンで、「今日は本番の立ち位置を決めますから」といきなり言われた。
「今日はレッスンだけ参加しようと思って来たので、舞台には立たないです」と伝えると、優さんや他の参加者たちに「一緒に舞台に立とう」と背中を押された。

表現をしたいのに、それができなくて苦しんでいるのは自分でも分かっていた。それを超えたいという思いがずっとあり、今がそのときかもしれないと直感的に思った。
すると、舞台に立つことを躊躇しながらも、本当はやりたいと思っていた自分に気づいた。出ると決めるとスイッチが切り替わった。
「もういい加減ウジウジしているのはやめなよ。本当はずっとやりたかったんだから、もうそのときでしょ」という自分の声を聴いて、この舞台を楽しむと決めた。それは2017年のイベントではできなかったことだった。
舞台に出ると決めると、優さんも他のメンバーも心から喜んでくれた。

前回は歌って踊るミュージカルの舞台だったのだが、ダンスに苦手意識があり、「全然みんなと合ってない」「また振りを間違えた」と自分をマイナスしてばかりいた。鏡で自分を見ることが苦痛だった。今回はダンスの出来ではなく、“自分でいること”を意識した。今までは周りばかり見ていて、自分のことを全く見ていなかったことに気づいた。鏡の中の自分だけを見て踊るようにしたら、「私、頑張っているじゃん。可愛いよ」と自然に思えた。

優さんは“自分の存在で魅せる”ということをこう説明した。

「私たちは空に輝く星そのもので、その名のとおり“スター”なの。そもそも輝いている状態が普通なので、自分の中心に光をイメージしてみて。筋力ではなく“存在の輝き”で踊ると、羽が生えたように体が軽くなって楽に踊れる」

卒業式の日、イベントの最初に皆で瞑想をしているときに、「頑張ってきたね」と自分に声をかけていた。2017年の舞台だけではなく、色々なことで自分を減点していたが、挑戦したからこそ減点や後悔が生まれたのだと気づいた。すると、過去の自分に対して「チャレンジしてくれてありがとう」と感謝が湧いた。あのとき挑戦してくれたから、今の自分に繋がった。今日はただ楽しもうと思った。

本番前は皆、緊張していた。すると、優さんは、
「まずは深呼吸することが大事。それから、自分の中心に光が灯っていることを思い出す。そうすると頭にばかり上っていた意識が、自然とハートに降りてくる。これが、頭がクリアで、ハートが輝いている状態。ここから自由に自分を表現するんです」
と言った。そのイメージで、皆で深呼吸して落ち着いた。
そして、舞台に立つ前に、終わったときにどんな気持ちでいたいかを設定した。“楽しかった、やってよかった”という気持ちを設定したら、本当に設定した通りの感情を味わえた。それは、自分のダンスの出来とは一切関係なかった。

「優ちゃんが、こういうイメージで踊ってねと、事前にアイドルの舞台の映像を送ってくれた。それを観て、ドームのような大きい会場で、ペンライトを振っているお客さんの前で自分が踊っているイメージを持とうと思った。過去に出た舞台では、私なんかが舞台に立っちゃってすみませんという意識がどこかにあった。なりたくないイメージを頭の中で膨らませていた」

会場にいる人たち全員が自分のファンだと思って舞台に上がると、あたたかい声援と拍手で迎えられ、アイドルとしての自分の世界が広がった。純子ちゃんはスポットライトを浴びながら、ナルシストを発動し、「みんな私たちのためにありがとう♡」という気持ちで手を振った。

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舞台に立って、踊って、ただただ楽しかった。やってよかったと思った。
「踊ろうよ」と言ってくれたメンバーに、踊ると決めた時に「おめでとう」と言ってくれた優さんに、ありがとうの気持ちでいっぱいだった。
もともとダンスに苦手意識があった上に、前日の数時間で振りを覚えた。その振りを完璧に踊ることを目的にしていたら、とても苦しかっただろう。今回、ダンスだけではなく、それ以外でも自分のことを減点していたのが全部塗り替わったような気がした。以前よりも自分のことを好きになっていた。

■私はいつだって夫に応援されていた

3年ほど前から、Happyちゃんのイベントや歌の舞台に参加するため、よく3人の子どもたちを預けて出かけていた。家で歌の練習をしていても、夫は「ああ、またやっているよ」と自分のことを冷ややかに見ていると思い込んでいた。しかし、歌や自分がやりたいことに向き合っていくうちに、夫との関係も改善していった。本番前に歌の練習をしていると、夫は感想を言ってくれるようになった。

「ここは、もっとこうだといいんじゃない?」
「思っているよりずっといい感じだよ」

ダンスレッスンを受ける前の時点では、HTLの卒業式は行かないと決めていて、夫には卒業式があることすら言っていなかった。スケジュールが過密で疲れていたことと、家族との時間を優先したい気持ちがあった。ドイツ移住に向けての準備作業も一緒にやることになっていた。
卒業式に行くと決めたものの、夫にそのことを話すのは少し怖かった。意を決して、「明日、アイドルの衣装を着てHappyちゃんの舞台で踊ることになった」と伝えると、「ドイツへの引っ越しも控えているから、明日は一緒にその準備をやろうと思っていたのに」と言われた。それでも卒業式に行くことを選択した。

翌朝、夫は車で駅まで送ってくれた。以前であれば、この状況を応援されていないと受け止めていたが、今は「駅まで送ってくれたし、文句も言われなかった」と思った。
卒業式が終わり、駅まで車で迎えに来てくれた夫に「こんなふうにアイドルやったんだ」と写真と動画を見せた。

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ダンスのフォーメーションが決まっていたが、はじめの立ち位置の時点で、自分がかなり前に出てしまっていることに気がついた。ダンスが始まったら元の位置に戻ろうと思っていたが、音楽がかかって踊り出した途端にダンスに夢中になり、すっかり忘れてそのまま踊り続けた。
その動画を観た夫に、「フォーメーションはどうなっているの?」と聞かれて、「私、本当は前から3番目だった」と言うと、「これ、ほぼ一番前に出て来てるね」と爆笑された。
しかも、振りを間違えていて、タイミングも周りとずれていた。一人だけターンの方向も違った。周りの反応などお構いなしに前に出て踊る妻の姿に、夫は大笑いした。
純子ちゃんは、夫のその反応が素直に嬉しかった。自分だけが楽しくやっていて、それを夫婦で共有できないのが寂しいとずっと思っていたが、それは勝手な思い違いだった。二人で動画を観ながら爆笑したことは今も純子ちゃんの心を温め続けている。


■オタクダンス部に参加して生まれた新たな望み

この体験をしたことで、さらに望みが湧いた。
再び発信を始めたいと思った。SNSで文章を書きたい気持ちもあるが、それは話すための手段として書くのであって、やっぱり話したいと思った。
以前は、ブログやFacebookで集客をして、夢を叶える方法のコンサルティングをしたり、セミナーを開催していたのだが、やればやるほど苦しくなっていった。人目が気になり、言いたいことが言えなくなった。また、人に伝える、教えるためにはすごい人でないといけないと思うと、人前に立てなくなってしまった。しかし、ずっと抑えていた発信欲求をそろそろ解放したいと思った。

「もともと話し好きという自覚はあるんだけど、普段、人と会話をしていても、私ばかり話すのは悪い、相手に聞かれてもいないのに話すのはやめた方がいい、といつも自分を抑えていた。それに、本当はズバッと言いたいのに言えなかった。だから、これを機に、遠慮せずに思う存分話すことを自分に許可したい」

また、歌を表現するための体の動かし方を知るためにダンスを習いたいと思っていたが、今回、歌だけでなくダンスも好きになった。ダンスの練習をしているときに、この楽しい感じは何かと同じだと思って記憶をたどると、テレビアニメ「プリキュア」のエンディングを観ながら、娘たちの前でよく踊っていたと思い出した。小さいときはアイドルに憧れた。だから、Happyちゃんのように歌ったり踊ったりしたいと思った。自分の魅力を最大限に引き出すオリジナル曲を作ってもらって歌いたいと夢は広がる。

舞台にもまた立ちたいと感じている。舞台用の華やかな衣装を着て目立つことが好きな純子ちゃんは、アニメファンが多いドイツに移住した際には、ドイツの人たちと一緒にコスプレを楽しみたいと思っている。アニメ監督の優さんをドイツに呼びたいという願いも生まれた。

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小さな決断の積み重ねが、望む未来につづいていく② へつづく

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