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内なる真の美しさと出会う② ~写真撮影体験談~

『内なる真の美しさと出逢う① ~写真撮影体験談~』のつづきです。

私のためだけの時間を味わう一人旅

撮影会場は沼津のU子さんのご自宅、通称「チバハウス」。

それならば、思い切って、泊まってみたかった伊豆のホテルに前泊しようと思った。大好きな海に面した部屋でゆったりと気分よく過ごして、撮影に臨むことにした。

私のためだけの時間を味わう一人旅。

両親の件で疲れが溜まっていた心身は、海や温泉、瞑想でどんどんゆるんでいった。
その間にも、両親に関する様々な連絡が飛び交うから、意識は未来に飛びがちになる。そのたびに、意識を今ココに戻す。人間だからなかなか難しいが、それでも、実践を重ねてきたおかげでだいぶ「今」にいられるようになってきた。よし、いいぞ。


そんなふうに、せっかくいい感じでリラックスできたのに、撮影が近づくにつれて緊張が高まっていった。まあ、緊張しいの私らしい、いつものパターンだ。アロマや音楽の力を借りつつ、緊張を排除しようとせずに、緊張と共にいることにする。



撮影会場のチバハウスは心地がいい空間だった。

木のぬくもり、窓から差す日の光、窓から見える海や木々の緑、開け放した窓から入るふわりとしたそよ風。こんな家に住みたいとデータをもらった。

自分の発想を超えたアイデアの共同創造

まずは衣装合わせから。

今まで着たことがないような宇宙的な衣装や小物、アクセサリーを身にまとう。そんな私を見ながら、ヘアメイクのTOMOMIさんと写真家のチヱさんが
その場のインスピレーションで撮影イメージを膨らませていく。

「髪を出すとマダム感が出てしまう」

「髪は一つにまとめようか」

スタイリストのYOKOさんが、事前フィッティングで試着したスパンコールのキャミソールを、なんと私の頭に乗せる。

「いやぁ、ウロコ系がめっちゃ似合うわ」と大絶賛の嵐。うーん、果たしてこれは喜んでいいところなのか 笑。

「頭にもう少しボリュームが欲しいね」

「三角帽を作って頭に乗せようか」

お次は、ヘアメイク。

クールで透明感のある美しいメイクが施されて、宇宙存在になったような水の妖精になったような不思議な気分になる。衣装やメイクのパワーをひしひしと感じる。

その間に画用紙を使って工作が始まり、あっという間に三角帽子が作られる。それを頭に乗せて、その上にスパンコールのキャミソールを巻いていく。自分の発想を超えたアイデアを共同創造する場面を目撃して、私も大いに刺激を受けた。

TOMOMIさんのヘアメイクで一番印象的だったのは、メイクのはじめに私の顔を優しく包み込んだ手のぬくもりだった。
ずっと触れてもらいたいと思うくらいとても気持ちよくて、先日、病院で長い時間、車椅子の父と二人で検査待ちをした際、言葉を発することができない父が私の肩にそっと手を置いたときのぬくもりを思い出した。
「大丈夫だよ」「ありがとう」
父の手に込められたメッセージを感じた。

「てとてとてとて」という絵本があって、その最後のページにこんな言葉がある。

「て
てって
すごいなあ。
もしかしたら
ては
こころが
でたり
はいったり
するところ
なのかもしれない。」

手から自分の感情が出て、手から相手の感情が入ってくる。

TOMOMIさんの手からTOMOMIさんの感情が、父の手から父の感情が、私の中に流れ込んできた。

撮影の中で、チヱさんから「ゆきこさんの場合は手を動かすと内面が開きやすい」という話があり、色んな意味で、私にとって「手」は鍵なのかもしれないと思った。

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「撮影」のイメージを覆す奥深いセッション

チヱさんの撮影はまさに体当たりの道場のようで、彼女のディレクションに食らい付いてくのに必死で、余計なことを考えている暇が一切なかった。「無我夢中」という言葉がピッタリの濃縮された時間で、私は自分のためだけの時間を心の底から味わい楽しんだ。そして、私という人間の本質を理解し、愛でる、大きな機会となった。

撮影というものに対するイメージを覆す奥深いセッションだった。

これは撮影後に明かされたことだが、はじめに私を見たチヱさんは、情報量が多すぎて負けていると感じたという。そこで、BGMの音量を下げて、呼吸に意識を向けて目を閉じる。情報量を減らして、内側に意識を向けていく。

自分でも周りの刺激を受けやすいとは感じてたけど、どうやら思った以上に繊細な気質だったみたいだ。目を閉じるとすっと一瞬でゼロ(無)の状態に入り、観音様のような表情をした私が写し出された。


その日は私の誕生日ということで、撮影の中で「生まれる」という体験を味わう。たった一つの細胞として宇宙に漂っていた私は、「ポ」と発するたびに細胞が増えていき大きな宇宙存在に変化していった。

「ポ」しか発することができないポ星人の誕生!笑

そして、撮影は徐々に静から動へ。

チヱさんと「ポ」だけで会話をする演劇的なワークに移行した。あえて制限をかけることで私の喜怒哀楽の感情表現が次第にリズミカルでダイナミックになっていく。

ピアニッシモ
メゾフォルテ
休符
クレッシェンド
デクレッシェンド
スタッカート
テヌート

それはまるで、チヱさんと二人で即興で音楽を奏でているかのようだった。

今、これを書きながら目に浮かんだのは、ブルーノート東京でのジャズピアニスト上原ひろみさんとタップダンサー熊谷和徳さんのライブセッション。阿吽の呼吸で繰り広げられるパフォーマンスは喜びに満ちていて圧巻だった。


どのくらい時間が経ったのだろう。突然、撮影のクライマックスが訪れた。

「今日のゆきこさんの一番の「ポ」を出してください」とチヱさん。

え?!

一番の「ポ」って、どんな「ポ」なの?

一瞬戸惑いながらも、覚悟を決めて自分の中のありったけのエネルギーを外に向かって発した。

思いがけず太くてどっしりとした長い長い「ポ」が出てきて、そのエネルギーの大きさに我ながら驚く。すべてを出し切ったとき、感極まって深いため息と体の震えと涙が内側からあふれ出た。

それまで、自分の内なる無限の力を信じたいのにどこか信じきれない私がいたけど、それが吹き飛ぶような強烈な体験だった。

私が感動に打ち震えていたら、いきなりHappy Birthdayの歌が始まった。サプライズのお祝いだった。

ビックリして、でも、嬉しくて、気がついたら私は子どものようにふぇーんと声を上げて泣いていた。

声を上げて泣くなんていつ以来だろう。

YOKOさんから真紅のダリアの花を一輪手渡されて私は歓喜の渦の中に身を委ねた。

秋分の日に生まれた私への最高のギフト

撮影後は写真のセレクトタイム。

まずはチヱさんと今日の撮影の振り返る。そこで初めて撮影時の意図が明かされて、チヱさんから見えた私の人間像が伝えられる。

写真を通して見えたのは、私の内面の輝きがインパクトのある衣装を超えた瞬間や自意識が入り込む自撮りではとらえ切れなかった何気ない表情だった。

「気品と可愛らしさはゆきこさんが持って生まれたギフトです。どんなに心が掻き乱されてもそれらは失われない。だから安心して自分の内側をどんどん外に出して表現していって下さい」

プリントしてもらう写真データを1枚選ぶ。2枚のうちどちらにするかを迷ったら、チヱさんがそれらの写真をPCの画面上で並べてくれた。

1枚は、目を閉じた瞑想状態の写真。

もう1枚は、両手を広げて感情をあらわにした躍動感あふれる写真。

並べてみたら、2枚一緒に額に入れて飾りたくなった。すると、占星術リーディングをしてくださったU子さんが声を上げた。

「これ、阿吽ですね。阿吽は陰陽でもあるから、陰陽のバランスが調和する秋分の日に生まれたゆきこさんにピッタリな写真!」

何という着地なんだろう。

それは写真家のチヱさんも意図していなかったことだったが、私の新たなスタートを祝福するかのような結末に深い感動を覚えた。



撮影後も幸せな余韻と気づきが続いた。
後日、私が選んだ2枚の写真を思い出していたら、OSHOの「ゾルバザブッダ」という言葉が頭に浮かんだ。

物質的な豊かさを楽しんで情熱的に生きる人間的なゾルバ。
ゼロポイントに繋がって精神的な豊かさの中で生きるブッダ。

そして、その両方を併せ持つゾルバザブッダ。

今回、両親の件でジェットコースターのような高低差の感情を思い切り味わった。どんな現実の中にいても、目を閉じて瞑想すれば、深い安堵感と静けさがある心のhomeに戻れるということを今まで以上に深く体感できた。

この2枚の写真を見るたびに、「ゾルバザブッダの意識で人生を楽しむ」ということをいつでも思い出せると思った。

こうして私は誕生日の日に最高のギフトを受け取った。


後日談

撮影から数週間経ったある日、チヱさんから写真が届いた。チヱさんに「撮影した写真は護符のようなものだからぜひ飾ってください」と言われたのを思い出し、写真を片手に世界堂に向かう。

額装なんて初めての体験で、どんなふうに額縁を選べばいいのか分からなかった私は、店員さんに相談しながら額縁を選び、額装してもらった。

うん、いいね!
額装すると一気に作品感が増す。

帰宅して写真を飾る場所を選ぶ。自分一人の写真を飾るのはいつ以来だろう。いざとなると気恥ずかしさが出てきたけど、エイヤッと飾ってみる。

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写真に気づいた夫が、近くでマジマジと見つめながら言った。

「右の写真は綺麗だけど、物静かな感じがあなたっぽくて想定内。左の写真は、普段見せない表情だから、パッと写真を見せられても誰か分からないかも。でも、こうやって写し出されるということは、出してないだけで本当はあるってことだよね。男の子みたいな雰囲気でいいね」

たしかに、やんちゃな男の子のような表情をした左の写真は、「こんな私もいたんだ!」という驚きがあって、未知の私との遭遇だった。

今朝も、「観音様を拝んでおこう」と言ってふざけて写真に向かって手を合わせていた夫。「ふふふ。ご利益あるよ」と私。

こんな何気ないやりとりが温かくて幸せだなと思う。



(Photo by Chiye Namegai)


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